マコモの学名は?
学名:Zizania latifolia
イネ科の多年生水草。日本全国に分布。高さ1〜2m。秋に茎の頂に円錐形の大きな花穂をのばし、上部に淡緑色の雌小穂を、下部に赤紫色の雄小穂をつける。黒穂菌に刺激されて肥大した幼苗を「菰角」(こもづの)といい、長さ30cm、直径3cmほどに肥大した「マコモタケ」(菰筍)とともに食用にする。種子は米よりも古い在来の穀粒で、縄文遺跡から発掘されている。江戸時代にも一部地域で食糧とされていた。葉で筵を編み、ちまきを巻く。
肥大した茎は「菰角」「マコモタケ」と呼ばれ、日本や中国で食用にされる。
マコモはイネ科の多年草で、日本全国の湿地や池、小川などに群生する。1~2mほどの細長い葉をつけて、8~9月ころには目立たない地味な花をつける。
マコモの大きな株の根からは、夏になるとタケノコのような白くて太い若芽が数本のびてくる。この芽は中空で竹のような節がある。私のおふくろは、この時期に来客があるとマコモ入りのお吸い物をよく作ったが、なぜかマコモの若芽を取るのは私の役目だった。
私が育った秋田の村には鹿嶋送りという夏の行事があって、マコモを材料にして50cmほどの人形(鹿嶋様という神様)を作り、川に流して一年の厄払いをする。この神様の腰にはナスを鍔にした刀を差し、頭にはトウモロコシの毛を髪の毛がわりにしてナスのヘタでおさえ、ひげのある強そうな顔の絵を貼るのだが、絵の得意だった私は、近所中の鹿嶋様の顔を描いた。いまはマコモの神様の作り手もいなくなり、この行事もいつの間にか消えてしまった。
友人と釣りに行ったついでに、マコモの若芽を摘んで帰り、久々にお吸い物を作ってみた。その夜、友人から電話があって、
「なんだかさ、とても品のいいお吸い物になったよ…」と。大きな株を引き抜くのはたいへんだが、みなさんもぜひ一度試してみてください。ただし、水のきれいな池や小川に育つマコモを選ぶこと。
マコモの葉は、マットに編んでお盆のお供え物の敷物などに利用するが、とても軽いので、ほかにもいろんな使い方ができる。できれば大きな葉も刈り取って乾かし、マットなどを編んで楽しんでみてください。
株は丈夫で引き抜くのがたいへん。
数本の白い若芽がくっついている。
マコモの芽のお吸い物。
大きな葉は乾かして、マットなどを編んで楽しもう。
おくやまひさし プロフィール
画家・写真家・ナチュラリスト。
1937年、秋田県横手市生まれ。自然や植物に親しむ幼少期を過ごす。写真技術を独学で学んだのち、日本各地で撮影や自然の観察を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く出版。
イラスト・写真・文 おくやまひさし
(BE-PAL 2024年8月号より)