シリーズ第6回では、ワシントン・パーク・アーボリータムを紹介します。
無料で四季折々の植物観察を
トレイルを備える園内はウォーキングやハイキングに最適
カナダと国境を接するワシントン州。シアトルは緑と水に囲まれ、「エメラルド・シティー」と呼ばれています。シアトル中心地に程近い高級住宅地に隣接して広がるのは、巨大な植物園。ワシントン大学とシアトル市によって無料で一般公開されており、地元民は園内に張り巡らされたいくつものハイキング・トレイルを日常的に楽しんでいます。
歩きながら多種多様な植物を目にでき、都会にいながら季節の移ろいを肌で感じられるのが◎。特に色とりどりの花が咲き誇る春から初秋にかけての散策は、絶景の中でお花見気分が味わえるとあって老若男女を引き寄せます。秋の紅葉も見事。有料ですが、かつて上皇上皇后両陛下が訪問されたシアトル日本庭園ともつながっています。
さまざまな表情を見せる「アザレアウェイ」
南北に延びる230エーカー(約93ヘクタール)もの広さを持つ園内。ウォーキングには園の中央を縦断するトレイル、アザレアウェイへ向かいましょう。アザレアとはツツジのこと。舗装された道の脇には、ツツジのほか、ハナミズキ、マグノリア、そして桜の木も植わります。1939年に何千株も植樹されて以来、その歴史を受け継いで現在に至ります。
緑を背景に赤、白、黄色、ピンクと色鮮やかな花が咲き乱れ、歩いているだけで花から優しさと元気のエネルギーをもらえる気がします。これまで仲間や家族と何度訪れたことか! 特に母の日の週末は、ツツジが見頃を迎えるとあって、美しさもひとしおです。
個人的には池のほとりの桜に風情を感じてしまいます。この桜を眺めていると日本の花見文化が恋しくなりますが、アメリカでは公共の場でお酒を飲めないのが残念…。夏にはアジサイやバラも堪能できます。訪れるたびに、違う風景に出合える場所です。
花々を通じてコミュニティーとの一体感を
ほぼ平坦な道が続き、地元で親しまれているアザレアウェイのほかにも、いくつかのトレイルが整備され、バラエティー豊かなガーデン間をつなげています。たとえば、ビジターセンターの前を通り、アザレアウェイの外側を囲むループトレイルなど。また、アザレアウェイに沿って階段や坂を進むルックアウトトレイルは、高台からの見晴らしが良く、ガゼボも設けられています。ただし、道は細くアップダウンが激しいので、日陰を選んで進んでも暑い日は汗だくに…。
その他、細かいトレイルに寄り道すれば、さまざまな発見があること間違いなし。トレイルが多すぎて、息子と歩いていて迷子になることもしばしば。
「あれ、元の場所に戻っちゃった!」
「この道はもう通ったよ。あっちの道じゃないの?」
なんてやり取りをいつもしています。
レイク・ワシントンの湖に接する北端にはボート乗り場まであり、周辺の湿地帯ではバードウォッチングも盛ん。こんなにも充実した植物園を裏で支えていくのは並大抵のことではないと、改めてコミュニティーのサポートに感謝の念を覚えます。
地域特有の植物も必見
初夏を彩るのは、シアトル周辺でよく見られるシャクナゲ。アザレアウェイからシャクナゲグレンのトレイルに入ると、シャクナゲのトンネルが出現します。この花を目にすると、今年も夏が来たと感じます。日本の紅葉があるのもココ! 同園は地元の植物だけでなく、海外の植物の紹介にも積極的で、園内にはオーストラリア、ニュージーランド、中国、チリと名の付くガーデンも。
1日中いても回り切れないほどの植物群ですから、季節に合わせてウォーキングコースを選択するのが正解。ウェブサイトやビジターセンターにマップが用意され、無料のガイドツアーも実施中です。子ども向けのプログラムもたくさんあり、野外教育を実施する幼稚園も注目されています。実はうちの子も小さい頃、夏休み教室の常連でした。もちろん、親子で自由に歩き回るだけでも満足できますよ。子どもを先頭に歩かせて、好きな植物を目指してもらいましょう。
■ワシントン・パーク・アーボリータム
2300 Arboretum Drive E, Seattle, WA 98112, USA
https://botanicgardens.uw.edu/washington-park-arboretum/
これまでの「シアトルで絶景街ハイク」シリーズはこちら。