『ドキュメント生還2 長期遭難からの脱出』
見えてくる遭難者の共通点、生死を分けるものとは……
羽根田治著
山と溪谷社
¥1,760
いよいよ夏山シーズンが本格化してきた。昨年の山岳遭難発生数は3,126件(警察庁「令和5年における山岳遭難の概況等」より)で、過去約10年の推移は残念ながら増加傾向にある。
本書は、救助されるまで13日間、8日間、7日間、6日間という4事例の長期に亘る遭難ドキュメント。
本書の大半を占める大峰山弥山の遭難13日間は、当事者が遭難中に書き綴った手記をもとに構成される。一か所に留まり救助を待つ決心をしつつも、救助ヘリが自分を見つけてくれないことへの苛立ちなど感情のままに書いた文面は、じつに生々しい。
だが、未来の自分の姿を想像していたことや沢水が採れたこと、生還につながった理由はいくつもあるようだ。その反面、遭難の引き金ともいえる下山を急ぐ気持ちは、誰しもに起こり得る。バスの時間に間に合わせようと急ぎ足で山を下った経験がある人は多いのではないだろうか。
警察庁の統計を見ると遭難で最も多いのは「道迷い」。次いで「滑落」「転倒」と続く。これらは本書で紹介されている事例からも偶発的に起きていることがわかる。
長年山岳遭難を取材・検証している著者は、「助かるか、助からないかは“運”なのだと思う」と。だからこそ遭難しないためには? 生還者からの学びは大きい。
『ヒトとカラスの知恵比べ
生理・生態から考えたカラス対策マニュアル』
隣人を知ろう
餌は目で見て探していた!
塚原直樹著
化学同人
¥2、090
身近にいながらも知らないことが多いカラス。ゴミを漁ったりして、世間一般の印象はいいとはいえない。本書は、20年以上カラスを研究する著者による忌避・対策方法の数々。カラスの行動パターンや生態から最善の方法を考える。
著者曰く、「これを置けばカラスは来ない!」というものは存在しない。最初は効果があっても時間が経つと慣れて効果が薄くなるのがほとんど。コストをかけずとも忌避効果が長く期待できる方法を著者が伝授する。カラスは目で餌を探している事実も知れば対処法が変わる。そして、我々人間の生活が彼らの生態に大いに影響していることも受け止めたい。
※構成/須藤ナオミ(BOOK)
(BE-PAL 2024年8月号より)