ケニア・タンザニアを人力車で駆け抜ける!ガンプ鈴木さんの冒険の目的とは?
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    2024.08.11

    ケニア・タンザニアを人力車で駆け抜ける!ガンプ鈴木さんの冒険の目的とは?

    ケニア・タンザニアを人力車で駆け抜ける!ガンプ鈴木さんの冒険の目的とは?
    2024年7月1日、ガンプ鈴木さんが人力車でアフリカ縦断をスタートした。ケニアを走破し、タンザニアを走るガンプさんに改めて人力車にまつわる話をインタビューした。人力車で世界を走ることになった原点や、アフリカを走ることで見つけたさらなる目標についても伺った。

    出発の日はケニアのテレビ番組に出演

    ケニアのテレビ局のスタジオ

    ケニアのテレビスタジオで取材を受ける4人。左から、ハルノスケさん、ガンプさん、関大基さん、パトさん。

    2024年7月1日、ガンプさんとカメラクルーたちはケニアのナイロビを出発したが、その前に一向はケニアのテレビ局に出かけた。これはコーディネーターとして彼らに同行しているケニア人のレギーさんが知人を通じて繋いでくれたため。

    ケニアの番組司会者を前に、ガンプさんは英語で臆せず話を繰り広げた。これまでの旅のこと、アメリカ横断ドキュメンタリー映画『Just For Fun一期一会。人生を走る男の物語。』を作ったこと。そしていよいよ、アフリカ縦断が始まること。司会者も驚きながら興味深そうに質問していた。

    司会者とガンプさん

    ケニアのテレビ司会者とリラックスして話すガンプさん。

    ガンプさんと司会者が「OK」のポーズをしているが(写真)、これには理由があった。

    ガンプさんは旅と並行して、アパレルブランド「Just For Fun」を経営しているが、そのシリーズなかに「オッケニア(OKENIYA)」という商品がある。なんと、この司会者の名前が「OKENYA」さんで、ほぼ読み方が同じだったことに一同は驚き、なにかの縁を感じたと話す。この収録の直後からアフリカ縦断が始まるので、彼らにとって幸先のいい出来事だった。

    収録の映像を観て、なぜガンプさんは異国のテレビ局で緊張をみせず話せるのかと疑問に思い、質問してみた。

    「居酒屋で働いた経験と人力車のおかげですね」

    人力車の俥夫として働く前は、京都にあるカウンター席のみの小さな居酒屋で5年ほど働いたという。ガンプさんは料理が苦手だったので、店長からは「お客さんと話すことを頑張れ」と言われた。そして5年間それだけを続けたと話してくれた。

    また、浅草で人力車を引いていたときには、お客さんの満足度を上げるために多くの工夫をしたという。名所の説明以外に、お客さんに質問したり、ときには自分の旅経験を話してたくさんコミュニケーションを取るように心がけた。社会の勉強のような堅い説明に終わらないよう努めたという。人力車に乗る目的で浅草に来る人は1日のうち1〜2組ほどという厳しい現実。そのため、道ゆく人へ全力でプレゼンをしていた。だから、乗ってくれた人には、なんとしてでも楽しんで帰ってもらいたいという思いが強かったそうだ。

    この2つの経験があり、人と話す力が備わったという。

    ノリで始めた人力車旅

    地元の人が人力車をひく

    地元の人が人力車をひいてくれることも多い。一緒に楽しむガンプさん。

    「世界中に人力車を持って行ったら、なんかおもしろいことが起きるような気がして。正直『ノリ』で人力車旅を始めたんです」

    2016年当時、世界一周をしている人は少なからずいたが、彼らとはなにか違う形の旅をしてみたくて、思いついたのが人力車を持っていくというスタイルだった。

    ただ「ノリ」とは軽く聞こえるが、実際に人力車を海外に運ぶということに、ハードルは感じなかったのだろうか?

    「輸送のハードルとかは感じなかったと思います。それより、現地で人力車を見た人が、珍しいものが来たと集まって声もかけてくれて。僕がその場に興味があれば、車よりも寄り道しやすいし。人力車でよかったと思いましたよ」

    人力車を通して、沢山の人と話し、新しい経験ができることが楽しかった。それがまた次の旅へのモチベーションとなっている。

    本田圭佑さんの専属ドライバー!?

    2018年、オーストラリア1,000kmの旅の途中、メルボルンにサッカー選手の本田圭佑さんがいると聞いた。当時、本田選手はメルボルン・ビクトリーに所属していた。ガンプさんは小学3年生から大学生までサッカーに熱中し、プロを目指してブラジルに渡った経験もあるという無類のサッカー好きだ。サッカー界のレジェンド本田さんがいるならということで、突撃アポなしで練習場に向かった。そして練習場で見つけたご本人に「本田さん!」と叫ぶと、気さくに近づいて来て人力車へ乗ってくれた。これはガンプさんにとって最も忘れられない瞬間になったという。

    「『自宅へ送っていきましょうか?』って聞いたら断られましたけど(笑)」

    こう明るく語るガンプさんは、夢が叶った少年のように興奮気味に話してくれた。

    カヤン族と人力車

    タイでカヤン族の女性を人力車に乗せる。

    また2017年には、タイ北部のフィブケン村に宿泊し、カヤン族(通称首長族)と過ごした。学校や村で住民と交流して、人力車へも乗ってくれたことが印象深いと話した。

    「日本文化を伝えるという感覚より、人力車に乗ったらみんな笑顔になってくれることがうれしかったです。それは、見たことのない乗り物、日本の文化だからおもしろいんだなと思うようになりました」

    人力車を通じて、旅先で現地の人と話すきっかけになり、乗ってもらうことで笑顔になる。そして会話が弾めばお互いを深く知ることができる。ガンプさんにとって人力車は最強のコミュニケーションツールである。また「日本文化を伝える」という意識より、人力車で走るとみんなが「日本文化に興味を抱いてくれる」ので、結果的に文化交流もできていると話してくれた。

    日本からケニアまで人力車をどう運ぶ?

    人力車が入った木箱

    日本から空輸して届いた人力車。

    話をアフリカ縦断に戻そう。

    今回のアフリカへの出発から、遡ること2か月前の4月後半に人力車が先に日本を飛び立った。

    実はガンプさんは2023年10月、下見のためケニアを訪れていた。人力車を安全に輸送してくれる運送会社を探し、運よく日本人が駐在している会社に出会うことができ、今回依頼したのだ。

    ひとつ残念なことは、旅の開始日までに船で輸送できる枠がなく、空輸になったこと。空輸は船輸送よりも高く、往復の輸送金額はなんと140万円にのぼった。

    「輸送費は今までの旅のなかで一番高く、痛かったですが、とにかく無事に届いてくれ、という気持ちでした。ケニアに到着してからも、デモの影響で1~2週間のチェックがあって、本当に受け取れるか最後までヒヤヒヤしました」

    人力車を空輸した時の様子

    木箱が開けらる緊張の瞬間。

    ついにマイ人力車とご対面!

    TikTokの動画内で、興奮気味にレギーさんへ「バラバラで信じられないかもしれないけど、これが人力車!」と話しているガンプさんはとてもうれしそう。見覚えのあるシールなどが貼ってある、正真正銘自分の人力車がケニアまで来ていることに感動したという。

    木箱を開けてなかを確認するガンプさん

    木箱の中身を確認。人力車は分解してパーツごとに分けられて運ばれてきた。

    ひとつずつ木箱の中身を確認していくガンプさんたちは真剣そのもの。

    「これがなかったら、旅ができませんからね、そりゃ!」

    人力車をくみたてるために移動

    みんなで宿泊している場所へ慎重に移動。総重量100kgもあるので、運ぶのは男性3人がかりだ。

    ところでこの人力車はガンプさんの所有なのか、年代や値段なども疑問がわいたので質問した。

    「この人力車は僕のですよ。5年ほど前に先輩から中古で買いました。20年くらい経つ古いものです」

    ガンプさんはこの人力車もあわせて計4台を所有している。残りは浅草の会社に貸したり、東京のARUKU CAFEで展示されているという。本来1台150万円前後の値段だが、まとめて買うなど安価で持てるよう工夫したそうだ。

    組み立て前

    これから組み立てが始まる。パーツが揃っているか不安が残るガンプさん。

    バラバラのまま、一旦宿泊している場所に丁寧に運び込む。

    人力車組み立て

    人力車の組み立ては慣れたもの。

    組み立ては1時間ほどで終わる。

    今回の輸送で、人力車の木製の柄が少し折れていたが、テープで補強してことなきを得た。アフリカ縦断前に日本縦断をしていたときのダメージが大きかったようだ。

    しかし、これで旅の相棒の準備も完了した。

    旅人だけに「足袋!?」を履いて旅をしたかった

    ガンプさんの足袋

    靴下と足袋を履くのがガンプさんの走るスタイル。

    今回ガンプさんのスーツケースの半分を占める持ち物が足袋だったという。その数、なんと8足。約7か月間の旅なので、おおよそ1か月に1度履き替えるようだ。1日の走行距離は平均40km。かかと部分にエアが入っているが、使用しているうちにそのエアが抜けてくる。「エアタビ」という俥夫が履く浅草にも売っている一般的なものだが、ガンプさんはなかに特注のインソールを入れて、走りやすいようにカスタマイズしている。

    なぜスニーカーで走らないのか質問すると、「ダジャレですね。『旅人が旅で足袋を履く』って言いたかったんです(笑)」。

    意外な答えに驚いた。もちろん、俥夫スタイルとしても足袋は欠かせないものだという。

    SNSに寄せられた意外なコメントの数々

    ガンプさんはこれまでの旅を、YouTube、TikTok、Instagramで発信し続けている。ありのままの出来事を視聴者に観てもらうことで「こんなヤバいやつがいる!」と笑顔になってもらえていると感じている。

    またガンプさんの姿を見て、コメント欄には沢山の反応が寄せられた。

    「どんなトラブルが起きても僕は走り続けてるので、その姿を見て、悩んでいる人、苦しんでいる人、病気の人、ときには命を本当に絶とうと考えている人から連絡があるんです。動画内では常に『人生楽しんだ方がいいですよ』『Just for fun』と言い続けているので、それを受けて元気をもらったというメッセージがきます。みなさんのあと押しになれたらいいなと」

    最初は逆境にある人のコメントが来ることを予想すらしていなかったが、この反響は今やガンプさんの走る源にもなっている。

    笑顔のガンプさん

    いつもポジティブな気持ちを心がけるガンプ鈴木さん。

    アフリカを走ってみえた現実。そしてなにを思ったか?

    2022年のアメリカ横断で「Just For Fun」というスローガンを見つけたガンプさん。これはドキュメンタリー映画のタイトルにもなった。

    「日本帰国後に、布教活動のように『Just For Fun』を唱えてきました。『みんな人生を楽しいものにしよう』と日本縦断をしながら伝え続けました」

    しかしアフリカ縦断では、なにか違うテーマを持った方が新しい視点で物事がみえるのではないか、と考え始めたという。

    「今までは『僕』が走ることで人を元気づけるスタイルだったけれど、結局人って自分で動かないと始まらないし、それぞれが行動を起こせるきっかけを作りたかったんです」

    そう語りながら、次のフェーズとして、みんなの行動を起こすきっかけのひとつ「Run For Fun」というテーマを打ち立てた。ガンプさんが走るように、みんなも地球のどこかで走ろうという内容だ。

    しかし、まだ出発段階でこの活動に関しての詳細は決められていなかった。理由のひとつは、実際にアフリカを走りながら考えたいと思っていたからだ。

    ケニアのナイロビを出発して11日、タンザニアを走行しているガンプさんにあるアイデアが湧き上がってきた。

    「ケニア、タンザニアを走ってみて、とくに子どもたちが声をかけてくれるんです。でもそのほとんどが、『食べ物ください』とか『お金ください』なんですよね。そんなときは走るペースも崩れるんでバンバンダッシュして逃げて行くんですけど」

    ガンプさんはアフリカの地を走る体験を語ってくれた。人力車の珍しさもあるが、物乞いで人が集まってくる現実を毎日のように経験した。その都度足を止めるわけにいかず、走って通り過ぎることも多かった。しかし、アフリカの人との交流も望んでいるはずなのに、このままでいいのかと自問自答した。

    「なんか自分が逃げている気がして、ずっとモヤモヤしてました。それで最近走りながら思いついたんです。毎週土曜日15時のおやつの時間に、日本のみんなにも走ってもらって、一回100円の寄付をいただくことを。『Run For Fun』のイベントのひとつとして毎週開催して、集まったお金でクッキーを配ってはどうかと」

    日本の皆さんには単に自分の健康のために走るより、自分の走りがアフリカの子供たちのおやつになれば、分かりやすい寄付となって賛同を得やすいのではないかと考えた。こうして「Run For Snack」という新しいイベントが生まれた。

    タンザニアの子供たち

    タンザニアの子供たちと交流中のガンプさん。

    次回は毎週土曜日に開催されている「Run For Snack」について詳しくお届けします。

    ガンプ鈴木さんの関連リンク

    写真提供:Just For Fun
         同行カメラマン=ハルノスケ、関大基、パト

    私が書きました!
    インタビューライター兼ツアーガイド
    マエノメリ史織
    京都在住。休みになればどこかへ出かけ、新しいモノ、ヒトとの出会いを楽しんでいます。国内外問わず、子どもと自然の中へ出かけることが好きなので、家族とお出かけに良さそうな場所をお届けしたいと思います。 https://note.com/maenomerishiori

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