シリーズ第7回では、チェシアハッド・レイク・ユニオン・ループを紹介します。
トレイルからシアトルの魅力を再発見
普通は通らないルートが新鮮
カナダと国境を接するワシントン州。シアトルは緑と水に囲まれ、「エメラルド・シティー」と呼ばれています。中心地からすぐ北に広がる湖、レイク・ユニオンを一周するチェシアハッド・レイク・ユニオン・ループは、35以上の湖畔の公園をつなぐ、まさに「街中」を歩くハイキング・コース!
住宅街からビジネス街、工業地帯、にぎやかなレストラン街を通り抜け、いくつもの橋を渡り、約2時間かけてシアトルの風景を堪能できます。1か所の公園内をハイキングするのとは違い、さまざまな観光名所を別角度から楽しめ、旅行者だけでなく地元民にも意外な驚きがあります。
水辺にまだ知られていない穴場がたくさん
その名の通り、トレイルはループ状で、どこからスタートしてもOK。今回は南東のイーストレイクと呼ばれるエリアを起点に、湖畔をぐるっと時計回りに歩いてみます。
トレイルと言ってもイーストレイクの辺りは普通の道。人気レストランが並ぶ通りへはよく行きますが、裏通りの住宅街にまで足を踏み入れたのは初めてです。湖沿いの道に出ると、リン・ストリート公園、テリー・ペタス公園など、かわいらしい小さな公園が点在していました。そうした展望抜群の公園含め、トレイルは近所に住む人たちのお散歩コースになっているようです。
イーストレイクからフェアビュー・アベニュー・ノース橋を通り、あのアマゾン本社ビルが集まるサウスレイクユニオンへと向かいましょう。この橋はかつて木造で、2021年に改修されたばかり。車道の隣に一段低く歩行者専用道が設けられています。水面により近づけるため、気分爽快!
そして、産業歴史博物館を横目にレイク・ユニオン公園へ。園内のボードウォークやこぢんまりしたビーチでちょっと休憩を。この一帯はアマゾン勤務者とその家族が外国から多く移り住むエリアで、昨今は観光スポットとしても注目されている再開発地区。くつろぐ人々もどことなく多国籍な雰囲気をまといます。
立ち寄りポイントはほかにも
サウスレイクユニオンから、今度はフリーモントを目指します。この地点から、ようやくトレイルらしい遊歩道が続くように。地元のランナーやバイカーの姿もちらほら。
フリーモントに近づくにつれ木陰も増え、青空の下、緑の中を気持ちよくウォーキングができます。直射日光を受けて火照っていた身体もクールダウン。そんな中、あるものに出くわしました。水際に謎の古びた鉄道レール…。これは一体? ヒントはここからフリーモント橋を渡った向こう側にありました。
フリーモントの街は多彩なパブリック・アートで有名。ところどころにメッセージ性があるのかないのか、不思議な物体が置かれているのです。そのひとつが、「インターアーバンを待つ人々」の像。インターアーバンは20世紀初頭に市民の足となってシアトル地域周辺を走っていた鉄道とのことです。
おしゃれでユニークな店が軒を連ねるフリーモントをあとにして、イーストレイクへと戻りましょう。イーストレイク側に渡るユニバーシティー橋手前までは、ひたすら真っ直ぐバーク・ギルマン・トレイルと同じルートをたどります。バーク・ギルマン・トレイルもまた、昔通っていた鉄道跡なのだそう。
トレイルは車道よりちょっと小高くなっていて、ここから湖面の様子がよく見えます。白いクルーザーやボートの類はもちろん、シアトル名物、ボートハウス群も浮かんでいます。トム・ハンクスさん&メグ・ライアンさん主演映画「めぐり逢えたら」にも出てきた湖上の家々です。
さて、ユニバーシティー橋まで来ました。ここを渡れば、ゴールはすぐそこです。と思いきや、その前に目に飛び込んできたのが「Peace(平和)」の文言。等身大の少女の銅像がたっています。
「もしかして、サダコ像?」
広島で被爆後に亡くなった佐々木禎子さんと折り鶴。シアトルでも平和を祈念し、サダコ像が建立されていました。私たち親子が実際に見たのは初めて。ちょうど昨年、息子が学校で原爆について習ったタイミングでした。
思いがけず、シアトルや日本の歴史に触れる機会を得られたウォーキング体験。美しい景色にとどまらず、小さな感動が多々ありました。一周せずとも部分的に歩くだけで、湖の眺めとともにシアトルらしさを感じられますよ。
■チェシアハッド・レイク・ユニオン・ループ
https://www.seattle.gov/parks/allparks/cheshiahud-lake-union-loop
これまでの「シアトルで絶景街ハイク」シリーズはこちら。