
はい、冒頭の写真のとおり「ヨーロピアンアルプス」に登ってきました、パオパオパオ~。…ん、だれですか? 「ウソつけ。写真の背景、山の大自然じゃなくて白バックじゃねえか」とか「アルプス行ったらくたびれたオヤジじゃなくて風景の写真見せろや」とか鋭い指摘をグサグサしてくるのは。私は今、「黒ひげ危機一髪」の気分ですよ。
だ~け~どっ。私はウソをついているわけじゃありません。スタジオで撮影したわけでもありません。単に「大人の事情」があるだけです。
【オーストリア・ザルツブルクとその周辺旅vol.6】前回の爽快マシンにつづく「まさかの」シリーズです!
というわけでザルツブルク滞在も3日目の最終日を迎えました。日付でいうと6月12日です。
この日の予定は午後3時頃のバスに乗ってバート・イッシュルという保養地に移動して海外メディアツアーの一行に合流することになっていました。で、それまでの間に「ヨーロピアンアルプス登頂の日」と前々から決めていました。なんたってヨーロピアンアルプスのすぐそばまで来ているんですから。登らないという選択肢は山好きにはないでしょう!
計画していたのは「ウンタースベルクバーン(Untersbergbahn)」というロープウェイに乗って標高1776メートルの山頂駅まで行き、そこから2ヵ所の難所も含めた4時間の周遊コースです。
もちろんよっぽど天候が悪ければ諦めるとつもりでした。そしてじつは朝から雨。涙
でも「ザルツブルク地方の雨は10時くらいにやみそう」という天気予報をネットで発見。これは「よっぽど天候が悪ければ」という条件にはあてはまらないと私の「ポジティブ脳」、別名「能天気ちゃん」が判断し、暢気に出発しました。
ザルツブルク市の中心部からバスに揺られること約30分。「Grodig Untersbergbahn」というロープウェイ乗り場(山麓駅)に到着です。
あっ、ここで一つ「豆知識」を入れておきましょうかね。海外では「ロープウェイ」も「ケーブルカー」と呼ぶことが多いです。
…とまあ、ここまで余計な豆知識までぶっこみながら頑なに画像の掲載を拒んできたのには理由があります。

真ん中の建物がロープウェイの山麓駅。は~い、山は完全無欠にガスっています。
待合室もガラガラでした。

乗車したのは私も含めて4人のみです。

ロープウェイからのふもとの景色。
はい、山側ではなくふもと側の写真をお見せしたのには理由があります。もうおわかりですね。はい、ガスガスだからです。でも山の天気は変わりやすいしね~。
相変わらず私の頭の中の「能天気ちゃん」は陽気に「アルペン踊り」を舞っています。…けど「アルペン踊り」ってなに? どなたかご存じの方、教えてください。いずれにせよ急峻の上にある小槍で踊るのは…よい子のみなさんはマネしないでね。
相変わらず現実逃避街道を爆走しながら、山頂駅に到着しました。

展望台から山麓方面。たぶん山麓方面。
完全に暗中模索五里霧中状態ですな。

てか写真じゃ見えにくいかもしれないですがまさかの粉雪。おいっ、今6月中旬だぞっ!

人がいないのをいいことにレミオロメンを絶唱中。はい、やけっぱちです。
あとプリンスの「Sometimes it snows in April」も「April」の部分を「June」に替えて。…サビしか歌えんけど。

予定していた登山ルート方面もご覧のとおり。
思わずレストランでコーヒーでも飲んで帰ろうかと思いました。だけどここで救世主が現れたんです! ご紹介しましょう。同じロープウェイに乗っていたドイツ西部の街から来たというイアンくんという好青年です!
粉雪の中、救世主の登場!

右側がイアンくんです。はい、言われなくてもわかりますね。
彼が「歩く」というので、いっしょに行くことにしました。
イアンくんも私と同様当初は4時間ほどの周遊コースを予定していたとのこと。ただこの天候じゃむずかしいですよね~、とりあえず「スニーカーでも行ける」とされているザルツブルガー・ホッホトローン(Salzburger Hochthron。標高1853メートル)まで行ってみましょうか~ということになりました。

看板にあった地図。雪が積もっていたのでどけたのがお分かりいただけるかと思います。
地図の右側の矢印が現在地。とりあえず左端の十字架を目指します。

オーストリアの登山標識。白地に黄色が映えますね。
はい、やけっぱちです。で~も。歩き始めてすぐに小さな雪渓が見えました。

お決まりのパターンですけど一応。「雪渓かな、雪渓かな」。
…あっ、若い人、言わない? ちなみに歌舞伎狂言「楼門五三桐 (さんもんごさんのきり) 」で大盗賊石川五右衛門が口にする「絶景かな、絶景かな」が元ネタです。
とにかく雪渓が見えて、少しテンションが上がってきました。このあたりは標高1800メートルくらい。それでも6月に雪渓が残っているということはやはり日本よりも寒いのでしょうね。

「きれいな尾根筋(なんだろうな~、晴れていたら)」という感じの道が続きます。

またまた小さな雪渓。
だけど雪渓は青空の下で見るのがきれいなんでしょうね、きっと。

このあたりまでは「スニーカーでも可」とされている道。
イアンくんの前を行くのはロープウェイに同乗していた香港人のカップルで、スニーカー履きです。
スタートから15分ほどでザルツブルガー・ホッホトローン山頂に到着。

この十字架が名物。

「晴れていたらこんな見晴らしですよ~」という写真が載る案内板の背景は見事な白バック。
いざ、アルプスの風隙へ
ここでイアンくんと作戦会議。「周遊ルートはやっぱり無理ですよね」「うん。まあ、それは諦めるしかないよね」「だけどミッタグスシャルテ(Mittagsscharte)ってとこまではルート案内によると〈登山初心者でも可〉なんですよ」「じゃあ…行ってみる?」
たぶん一人なら「やめておくか。外国だし」と引き返したと思うのですが、同行者がいると気が大きくなります。それが気のゆるみにつながらないように注意!

というわけでスタート。小さな雪渓はあちらこちらに。

山道自体はさっきより少し見えるようになってきました。
さて今向かっている「ミッタグスシャルテ(Mittagsscharte)」。イアンくんが解説してくれたところによると「ミッタグ」はドイツ語で「正午」のこと、「シャルテ」は「英語でなんていうのかわからないけど、山と山とに挟まれて急な谷になっているところ」とのこと。
たぶん「V字谷」みたいなところだろうと推測したのですが、山から降りて調べたら日本語では「風隙(ふうげき)」と呼ぶようで、それは「水流のない谷間」という意味らしいです。
たぶん一人で歩いていたら「ミッタグスシャルテ」はただの地名だったのですが、ドイツ語話者であるイアンくんがいっしょだったので知識も増えたし、目的地の風景も想像できました。

あまりの寒さに咲くのを躊躇しているように見えるリンドウの花。

谷に向かってぐいぐい高度を下げていきます。

オーストリアの国旗と日の丸?
そんなこんなで「ミッタグスシャルテ」にほぼ到着。「ほぼ」というのは谷底まで降りる途中でちょっとしたスペースがあったので、そこで「おやつ休憩」をとることにしたのです。歩き始めてここまで1時間くらいです。

休憩した場所から見た「ミッタグスシャルテ」。確かに「V字になっている水のない谷」ですね。
10分くらい休んでから「一応谷底まで行ってみよう」と決めました。

晴れていたら絶対にいい風景。

谷底まで来たけど霧で景色は見られず。
すぐに引き返すことにしました。
来たときと同じルートなので省略しますが、この谷底からののぼりが結構きつかったです。

ようやく十字架のあるザルツブルガー・ホッホトローン山頂に。

晴れていたらきっと絶景なんでしょうね。

未練がましく全方位の写真を撮りましたよ。

ガスってなかったらどんな山並みなんでしょうね。
二つの十字架を背負って
そしてロープウェイの山頂駅方面に向かったのですが、最後に道を逸れてガイァーエック山頂(Geiereck Peak)へ。ここはロープウェイの駅から3分くらいで道も整備されているので、普通の観光客も来ることができます。

ここも十字架が有名。

さっきは木ですがこちらは鉄骨。

相変わらず視界はほぼゼロ。
ちなみにオーストリア政府観光局の方から借りたこのあたりの写真がこちら。

最高に気持ちよさそうじゃないですか~。左のほうにロープウェイも見えますね。©Tourismus Salzburg GmbH
景色が撮れないので、自撮りしてみました。

てなわけで冒頭の写真も「白バック」状態だったのはこういうわけがあるのですよ。
ちなみに小見出しの「二つの十字架を背負って」というのは、「二か所で十字架を背景に撮影した」という意味です。はい、完全に人騒がせですな。
そして山頂駅に到着。ロープウェイの出発まで時間があったし小腹も空いたので、チーズと野菜を団子にしたものが入ったコンソメスープを注文しました。「カスプレスクネーデル」というこのあたりの代表的な郷土料理だとか。

冷え切った体に染みわたります。そして妙においしかった。
てなわけで予定していた「4時間周遊コース」は無理でしたが、それなりに「山歩き」は楽しめました。でも天気が悪かったし、知らない場所だったし、なんといっても外国で英語の表示もないので一人だったら絶対に諦めていたところ。ドイツ語ができる相棒がいてくれて感謝。

「旅は道連れ」と言いますが、山行こそ道連れが重要ですな。ありがとう、イアン!
いつかまた天気のいい日に来たいな。いや、来よう。絶対に来る!
【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら!
ザルツブルク市観光局
オーストリア政府観光局
