サトイモの学名とは
学名:Colocasia esculenta
サトイモ科の多年草。熱帯アジア原産で、古くに渡来し日本各地で栽培されている。地下に茎を伸ばし、肥大して楕円形で節の多い球茎(いも)となる。1~1.5mの葉柄を直立させ、長さ50㎝ほどのハート形の葉をつける。葉柄は「ズイキ」と称され、食用にされる。高温の年の秋にごくまれに、黄色の苞(仏炎苞)に包まれた花を咲かせる。
親芋のまわりに子芋が、子芋のまわりに孫芋ができて、サトイモは大きなかたまりになる
巨大な大鍋で毎年秋に話題になる山形県の芋煮会の主役がサトイモだ。
サトイモは熱帯アジア原産のサトイモ科の多年草で、畑では巨大な葉の目立つ野菜だ。春に親芋(種芋)を植えて、葉の枯れる秋に収穫されるのだが、子芋や孫芋が育って大きなかたまりになっている。
葉の表面をルーペや顕微鏡でのぞくと、マイクロサイズの球状の突起が葉の表面を覆っていて、水滴をはじいているのがわかる。この仕組みを「ロータス効果」と呼ぶ。サトイモやハスの葉のロータス効果は、傘やヨーグルトのふた、壁面などの撥水技術にも応用されている。
サトイモの葉の表面には、夜露や小雨などで水玉ができることがあり、この水玉で墨をすって字を書くと、字が上手になる……と、おふくろがいっていたが、私の書く字はとても上手とはいえない。
芋をすりつぶして、捻挫やリウマチ、肩こりの薬として利用することもある。ただ、シュウ酸カルシウムを含んでいるため、かゆくなったり、かぶれることもあるので、気をつけよう。
サトイモはミズバショウなどと同じ仲間だから、花を咲かせるのだが、めったに花をつけないため、私ももう40年も前に一度見ただけで、以後は見たことがない。
芋の部分だけでなく、太く長い葉柄を干して煮物などにして食べることができる。これをイモガラとかズイキなどとよぶ。
今回の絵は、8月に掘ったサトイモだが、大きなかたまりに育つことを考えたら、葉が枯れるまで待てばよかった……などと後悔している。軒下にぶら下げた葉柄だけは、じっくり干してから調理してもらおう。
大きなかたまりに育ったサトイモ。
葉の表面にできた水玉。
40年も前に見つけたサトイモの花。
ミズバショウもサトイモの仲間だ。
おくやまひさし プロフィール
画家・写真家・ナチュラリスト。
1937年、秋田県横手市生まれ。自然や植物に親しむ幼少期を過ごす。写真技術を独学で学んだのち、日本各地で撮影や自然の観察を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く出版。
イラスト・写真・文 おくやまひさし
(BE-PAL 2024年9月号より)