昭和から続くトラックチューブで川下り
かつての檜原村の子供たちの定番夏遊びを再現。大型トラックのタイヤチューブは、大人でも安心の乗り心地だ。ワクワク感と渓谷底からの眺めを堪能。
大きなタイヤチューブを抱えて歩いていると、地元の雑貨屋のおじさんに声をかけられた。
「懐かしいなぁ。俺も50年前はそれに乗ってたよ」
村に1軒あるガレキ工場のトラックがタイヤ交換するたびに、子供たちがチューブをもらいに行っていたのだとか。
「900mぐらい上流まで行ってさ、ここまで流されてくるんだよ。住んでる集落によって川に縄張りがあってさ、この岩は俺のだ、とかいって、飛び込む岩も決まってたよ」
楽しそうに目を細める。ここは都心から約50㎞離れた、都内で唯一の村、檜原村。多摩川最大の支流である秋川が北秋川、南秋川のふたつに分かれ、村内を流れている。
「昔から当たり前に語り継がれてきたことが、いまはできていない。子供だけで川に行かないで、という風潮は仕方ないけど寂しくも感じますね」
とは、2013年に家族で檜原村に移住し、秋川渓谷エリアの魅力を発信している、東京裏山ベースのジンケンさん。そんな子供のころの遊びを、童心に帰って楽しめるようにと、さまざまなツアーを提案している。
「さあ、行ってみましょう!」
チューブを川面に浮かべ、待ってましたとばかりに乗り込む。
「空が高くて気持ちいい~」
川遊び初心者の日花ちゃん、あっという間にリラックス。ちょっとした急流で水しぶきを浴びるのがまた楽しい。
「あの岩から飛び込みましょう」
「え、いけるかな?」
「3、2、1、ドボ~ン! !」
「キャ~!もう一回いきまーす」
「子供のころにこんな原体験をしていると、どこに行っても自然と遊べるんですよ。子供たちにはもちろん経験してほしいですが、大人になってからでも遅くありません」
誰もがはじめから川ガキというわけではない。幼いときから川に親しみ、飛び込んで、潜って、秘密基地を作る。そんな経験を重ねて、安全に遊ぶためのスキルを身につけ、川ガキに育っていくのだ。
遊び疲れたらチェアでひと休み。川の流れに足を投げ出す。たったこれだけで、身近な川がワクワクする遊びの舞台に変わる。
教えてくれた人
東京裏山ベース
ジンケンさん
愛媛の川で育ち、MTB歴は30年以上。2013年に檜原村に移住し、’16年に東京裏山ベースを設立。アウトドア・エコツアーガイドのパイオニア。
教えてもらう人
酒井日花さん
幼少期はガールスカウト、現在はスキューバダイビングが趣味。石集めも好きで、特に珪化木とチャートに目がない。好きな場所は青森の海岸。
秋川渓谷の川スポットをe-バイクで巡る
村のレンタサイクル(e-バイク)を使えば、山道だってラクチン! 川装備のまま川のハシゴを楽しもう。
全身で涼を感じる、清流ドボン!
一度は挑みたい岩からの飛び込み。川に張り出した大岩の下は深場が多く、大人でも安心! 頭までドボンするので、ライフジャケット必須。
チェアリングを兼ねたランチタイム
お気に入りの場所にキャンプチェアを据えてランチタイム。読書するもよし、午睡を貪るのもいい。東京裏山ベースでは、おすすめチェアリングスポットも教えてくれる。
プチ登山を楽しみつつ滝のミストを浴びる
檜原村には南北両秋川に多くの滝がかかっている。今回、林道を登って訪れたのは落差20mの天狗滝。流れが緩やかで滝壺も浅めで、下まで気軽に行けるのがうれしい。下方にある小天狗滝は水流が激しく滝行体験も可能。
東京のリバーフロントを案内する東京裏山ベース
秋川渓谷への入り口となる、清流遊びの体験拠点。レンタサイクルや水辺を楽しむギアを借りられ、シャワールームも完備。カフェでは情報収集も。
住所:東京都あきる野市舘谷219-7
電話:050-1417-6751
営業時間:9:00〜17:00
定休日:火曜
HP:https://ura-yama.com
※構成/大石裕美 撮影/三浦孝明
(BE-PAL 2024年9月号より)