水遊びの延長で楽しむなら、中古タックルで
「釣れたー!」 「釣られちゃった!」
教える人
工藤貴志さん
相模川漁協組合員。友釣りで培った技術をアユイングにも導入。相模川でのアユイング普及を目指し漁期は川に日参する。
教わる人
阿部 静さん
アユが釣れる川まで5分の場所に住みながら、アユを釣るのは今回が初めて。好きな釣りは沢登りと組み合わせるテンカラ。
「アユ釣りは門戸が狭く見えますが、実は簡単に楽しめます!」
アユ釣り初挑戦の阿部さんにそう話すのは、相模川の畔に育って三日と空けずに川に通う、アユ釣り師の工藤貴志さんだ。
この日のために工藤さんはルアーでアユを狙う〝アユイング〟と生きたアユを泳がせる友釣りの道具を用意してくれた。
アユは石についたコケを食う魚で、良い石の周囲にナワバリをつくって侵入者を排除する。友釣りはこの習性を利用し、生きたオトリアユを送り込んでアユを掛ける。アユイングも友釣り同様、ナワバリをもつアユをルアーで誘って掛ける。
まずはアユイングでオトリになるアユを釣り、そのアユで友釣りをする、というのが今日の計画だが、2つの釣種の道具代は、すべて合わせても2万円に届かないという。
「アユ釣りでは1本数十万円の竿も使われますが、水遊びの延長で楽しむなら、中古タックルで十分なんです」
とは工藤さん。世にはアユイング専用の竿もあるが、エギング(イカ釣り)やバス用の柔らかめの竿が転用できるという。
「今日使うアユイングのタックルは合わせて3000円。友釣り用の竿は、手軽なアユ釣りの普及に努める桒原 健さんが子供たちに配っているものです。同程度のクラスの竿は中古なら5000円程度でしょうか。それでは、釣ってみましょう!」
最初に挑戦するのはアユイング。岸からアユ用のルアーを投げて、川底の石を探る。
「川の中にはアユの通り道があるので、できるだけ入らないほうがいい。ほら、来た!」
見れば阿部さんの竿先にプルプルと生命感が表われている。
「本当だー! なんか重くなったな、とは思ったんですけど」
「これは群れで回遊する小型。ルアーと群れをつくろうとしてかかるパターンもあるんです」
キャストを繰り返すうちに型の良い魚が釣れたので、竿を持ち替え友釣りに挑戦。瀬に立ち込んで、白波のなかを泳がせる。
「来た? 来たかも!」
「竿を立ててゆっくり寄せて! 近くまで寄ったら……抜く!」
宙を舞ったのは夏の光に輝く2匹のアユ。オトリを付けてから5分とかからぬ早技だった。
「相模川漁協では18歳以下の遊漁料が無料です。ぜひ、若者や家族連れにも気軽にアユ釣りに親しんでほしいですね!」
中古でも遊ぶには十分!
狙うのはアユ釣りの盛んな川の近くの中古釣具店。川に近いお店は流通量が多い。アユイング用、友釣り用ともに竿は数千円のものから並ぶ。「友釣りにはコイ用ののべ竿を転用できる。アユイングにはティップが柔らかい8〜9フィートのスピニングタックルを。糸やハリなどの仕掛け類は慣れるまではワンセットのものが使いやすいですね」(工藤さん)
そっくりさんでアユをだます!ルアーで誘う「アユイング」
アユは水が入れ替わる平瀬を好む。可能な限り水に入らず、流れを横切る向きで投げたルアーを流れに乗せて底を探る。
アユは石に着くので底を舐めるようにルアーを泳がせる。「水質や天候でルアーへの反応が変わる。色違いで複数用意して」(工藤さん)
最初に釣れたのは小型の群れアユ。「オトリはある程度大きさが必要。元気があるほど、よく誘う」(工藤さん)
オトリを泳がせて2匹目を狙う!習性を利用した「友釣り」に挑戦
アユは瀬のなかの大岩の周囲やちょっとした深みにナワバリを持つ。アユがいそうな場所にオトリを送り込み、アユを誘う。ハリに魚がかかったら、寄せて抜き上げタモで受ける。
オトリにも意思がある点が友釣りの難しさ。アユの気持ちと習性に合わせて、狙う場所へとオトリを操る。
↓
魚が掛かると竿をひったくるような衝撃が走る。アユ用のハリはカエシがなくはずれやすい。慎重に寄せる。
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元気なアユがかかったらオトリを交代!
近くまできたら抜き上げてタモでキャッチ! 今度は釣れたばかりの元気なアユをオトリに。
ちゃんと買おう!入漁券
アユ釣りには遊漁料が必須。日券は1000〜2000円程度で川の近くのコンビニや釣具店で買える。最近はスマホで決済できる漁協もある。
おいしい唐揚げになりました!
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2024年9月号より)