松本明子の「アポなし」軽キャン日記 第3回
やればやるほど赤字だけど、儲けるためにやってないから頑張れる
2021年3月15日にオープンしたはいいものの、最初は閑古鳥が鳴くばかり。1週間何の予約も入らず、3月はたったの2件でした……。
その記念すべきお客様第1号は、『DAISUKI!』(私の全盛期のときの日本テレビのバラエティ番組)のときにお世話になった、ヘアメイクさんが紹介してくれたお友達でした。忘れもしない、ブギーライダーのミントグリーン。この色にしておいてよかったー。で、お客様第2号は、ホームページを見てネット予約してくれたご近所の方。こちらもブギーライダーでしたね。
「子供がいるのでチャイルドシートお願いします」っていわれたので、慌ててオートバックスへ買いに行きました。
頼りになるのは知り合い縁者
なんとかレンタカー屋を軌道に乗せるため、パンフレットを配って知り合いの芸人さんたちにお願いして回りました。この時代に手作業ですよっ。
でもそのおかげで、事務所の後輩のイモトアヤコちゃんやロッチの中岡くんが車を見学しに来てくれて、SNSでコメントを上げてくれました。オードリーの春日さんは日本テレビ『東野・岡村の旅猿〜プライベートでごめんなさい…』で、私がレンタカー屋を始めたことを話してくれました。
西村知美ちゃんは家族で、木元ゆうこさんも娘さんと初めて車中泊に挑戦するために借りてくれました。真冬だったんで、電気毛布とバッテリーを持っていくことをオススメしました。
でも、そういう気の利いた物は最初からあったわけじゃないんです。予約時にお客さんに、「冷蔵庫ありますか?」「バッテリーありますか?」って聞かれるたびに、「あります、ありますよー」ってお答えしつつ、お店に買いに走り、どんどん増やしていきました。あ、ちなみに、最初は節約癖を発揮し、ついついリーズナブルなポータブル電源を買ったんですが、すぐにダメになっちゃいまして。いまは、ジャクリの立派なモデルを導入済みです。
そうこうしているうちに、コロナ禍で働き方とか変わってきて、キャンプに注目が集まるようになり、開業から半年経った2021年の9月ごろから徐々に軌道に乗りはじめたんです。ご近所に住む、某有名飲食チェーンの幹部の女性は、半年間毎月借りてくれました。どうやらコロナ禍で、リモートワークに活用していたようです。
SNSで見つけました、といって、キャンピングカー系You Tuber「なんぶチャンネル」さんが、車を見たいとお店に来てくれて、紹介してくれたのもそのころです。意外な用途でも使っていただきまして、『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』の放送作家さんは、浪曲で三味線をひく曲師さんを、三味線と一緒にお運びするのにちょうどいいと借りてくれました。
クラフトビール屋さんが駅前でのイベント出店のために借りに来たり、冬に都内で大雪が降ったときは、スタッドレスタイヤの車が必要だからと、お花屋さんが配達するのに使ってくれたりもしました。ほかにも不動産会社のサラリーマンの方が全国の空き家物件を調査する出張用に利用されたり、パナソニックのカーナビの広告撮影や自主映画の撮影で1〜2週間貸し出したりしたこともあります。
『貴ちゃんねるず』で人気が加速
開業から1周年、’22 年の3月に石橋貴明さんのYouTubeチャンネル『貴ちゃんねるず』、「貴ちゃん人生初のソロキャンプ」で、ディレクターのマッコイ斉藤さんがブギーライダーを選んでくれたのも大きかったです。このときはブラウンのブギーライダー1号。しっかり全身映っています。
6月にレギュラー出演していた日本テレビ『ヒルナンデス!』からもお店にオファーがありましてね。梅沢富美男さんの人生初キャンプ用に、バイきんぐ西村さんがブギーライダーを選んでくれたんです。「私もスケジュール空いてますよー!!」ってすっかり出演する気でいたら、「松本さんはいいです、車だけ貸してください」ってキッパリ断わられました……。
レンタカー事業責任者の廣田さんがロケに同伴していき、番組内で車の説明もしたんですよ(「あれはちょっと緊張しました」と、横から廣田さん)。
テレビ朝日の『芸能人Xの私生活 密着24時』でも、私の副業として紹介していただきました。テーマが、「芸能人Xの副業 過剰サービスで大ピンチの噂」。………。レンタカー代が安すぎるし、無償サービスも多すぎ、「シンプルにアホなんちゃうん」って、見取り図の盛山さんにいわれちゃいました。
レンタカー屋の実情
お店の運営は、30年も私の運転手を務めてくれている廣田営業部長と二人三脚ですが、もちろん、芸能のお仕事がない日は、自分でも電話番をはじめ、車の点検や掃除、お客様の見送りから返却業務までやっています。 月1回、バンライフレンタカーの会議があり、トラブルを報告したりするのですが、そのミーティングにも参加しています。でも、レンタカー屋って儲からない。これがビックリするくらい儲からないっ!
最初、電話の前でず―っと待ってるとき、これ、大丈夫かな、って思ったりもました。
だってね、駐車場代に事務所の家賃、通信費に保険と、1か月でかかる出費が25万〜30万円。やればやるほど赤字。8か月大赤字で、いつ潰れるかわからない状態でした。挙げ句の果てには、テレビ朝日の番組で「儲からないレンタカー屋」として紹介される羽目に。1か月の売り上げがクイズになってて、失礼な、って思いましたけど、まあ、最高で月20万円の売り上げだったから、仕方ないかなと。
でも、儲けるためにやってないんです。原点は自分も楽しめること。気軽に、安く、山遊びやレジャーを楽しむために始めたんです。初志貫徹です!
レンタカー やればやるほど もうからず by松本明子
芸能のお仕事がいつ入るかわからないので、翌日が休みとわかると、急遽ナイトキャンプをするため神奈川・城ヶ島へ。
一番人気のブギーライダー2号を紹介
4台あるレンタカーのうち、ミントグリーンの色がかわいらしいと老若男女問わず人気。
スズキ エブリイがベース。後席を収納すれば大人2人が車中泊できるゆったりした広さ。
ルーフテントの開閉は簡単で、ひとりで可能。
荷室に松本さん手作り収納式テーブルを装備。
屋根上のルーフテント内も2人が就寝可能。
配布しているレンタカー店のパンフレット。
●松本明子さんのレンタカー、オフィスアムズはこちら→https://officeams.com/
※構成/大石裕美 撮影/三浦孝明
(BE-PAL 2024年9月号より)