ラオスの旅2
ラオスの古都ルアンパバーンは、70以上もの仏教寺院を擁する「祈りの街」でもあります。この街では、メコン川とナム・カーン川が合流するあたりが細長い半島のような地形となっていて、主要な寺院の多くはその一帯に集まっています。
中でも、ルアンパバーンの象徴とも呼ばれる寺院が、このワット・シェントーン。16世紀、ラーンサーン王国のセーターティラート王がルアンパバーンからビエンチャンへの遷都を行った際、ルアンパバーンに王家の菩提寺として建立したのが、この寺院でした。ここにはかつてビエンチャンとルアンパバーンとの間で塩の交易を行って財を成した商人の家があり、王は彼の業績を称えて、ワット・シェントーンをこの場所に建てたとも伝えられています。湾曲した屋根が幾重にも折り重なる建物の形状は、ルアンパバーン様式と呼ばれています。
ワット・シェントーンの本堂の裏側の壁面にあるのは、1960年代に制作されたモザイク画「マイ・トーン」(金の木)。以前この寺院の境内にあったと伝えられる巨木と仏教説話をモチーフにした絵柄が描かれています。
本堂の壁面に唐突に備え付けられている、ゾウの頭部。毎年4月中旬頃に行われるビーマイ・ラーオ(ラオスの正月)の水かけ祭りの時には、このゾウの鼻から流れ出てくる水を求めて、大勢の人々が集まってくるのだとか。
ワット・シェントーンの境内にある小さなお堂、レッド・チャペルの中には、16世紀にセーターティラート王によってもたらされたと伝えられる寝仏が祀られています。
ワット・シェントーンにほど近い場所にあるいくつかの寺院の中でも特に目立っているのが、このワット・セーン。18世紀頃に建立された後、20世紀に幾度か改修が施され、今のような姿になったそうです。この寺院のあるサッカリン通りのあたりは、早朝の時間帯に大勢の僧侶たちが托鉢の列を作ることで知られています。
18世紀から19世紀にかけて建立され、その後も改修が続けられてきた寺院、ワット・マイ。ルアンパバーン様式の複雑な構成の屋根が見事です。ルアンパバーン国立博物館(かつての王宮の建物を博物館にしたもの)の隣にあります。
70を超える寺院があるルアンパバーンでは、オレンジ色の袈裟をまとった僧侶の姿をあちこちで見かけます。その存在は、遠い昔から街の中に当たり前のように溶け込んでいたのでしょう。
夕刻、たまたま通りがかった小さな寺院の中で行われていた勤行の様子を見学させてもらいました。堂内に朗々と響く、読経の声。ルアンパバーンが本当の意味での「祈りの街」であることを、あらためて実感しました。
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夕方6時頃にタイで撮影した写真だけで構成した写真展「Thailand 6 P.M.」が、東京・三鷹で現在開催中です。会期は5月27日(日)まで。ご興味をお持ちいただける方は、ぜひよろしくお願いします。
山本高樹 写真展「Thailand 6 P.M.」
太陽が西に傾き、昼間のうだるような暑さが消えて、暮れ色の空に夜のとばりが下りてくる頃。タイの街は、その素顔を僕たちに見せてくれる。ささやかな電球の灯りの下で交わされる笑顔と、にぎわいと、ちょっぴりの寂しさと。写真家・山本高樹が5度にわたる取材で撮影した作品を展示する写真展。
会期 2018年3月20日(火)〜5月27日(日)
会場 リトルスターレストラン
東京都三鷹市下連雀3-33-6 三京ユニオンビル3F
TEL 0422-45-3331 http://www.little-star.ws/
時間 12:00〜14:30、18:00〜23:00
定休 月曜日(臨時休業や貸切の日もあるため、同店のサイトをご確認ください)
料金 無料(会場が飲食店なので、オーダーをお願い致します)
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◎文/写真=山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)『ラダック ザンスカール スピティ 北インドのリトル・チベット[増補改訂版]』ほか多数。
http://ymtk.jp/ladakh/