ブナ材の燻煙麦芽を使用したラオホビールが登場
煙で燻した麦芽で造るビールは「ラオホビール」と呼ばれる。ラオホとはドイツ語で煙のこと。歴史は古く、ドイツのバイエルン州の北部バンベルグ地方で15世紀ごろに生まれたという説がある。麦芽の乾燥に煙を用いるのが特徴だが、何を材料に燻煙するかで麦芽の風味にバリエーションが生まれる。
ラオホビールは日本ではあまり見られないスタイルだ。定番化しているクラフトビールブルワリーはいくつかあるが、大手ビールメーカーから発売されることは珍しい。
ヱビスブランドから発売される「燻」(いぶし)は、ブナ材で燻した麦芽を一部使用、酵母は「ヱビスビール」のヱビス酵母を使用。高温短時間仕込みで醸造している。
このビールの元になったのは、東京・恵比寿に今年4月にオープンしたYEBISU BREWERY TOKYOで提供されていたビール「煙々」(えんえん)だ。やはり燻煙した麦芽を使ったエールビールで、連日売り切れになるほどの人気を博した。それがこの秋、酵母をエール酵母からヱビス酵母に変えるなどの調整をほどこし、缶製品になって発売されるに至った。ヱビスブランド初のラオホスタイルだ。
YEBISU BREWERY TOKYOのヘッドブリュワーであるChief Experience Brewerの有友亮太さんは、昨今のクラフトビール人気に伴い、「ホップが注目されがちですが、使用する麦芽によってさまざまな表情を見せてくれる。ぜひ麦芽の表情を楽しんでいただきたい」と話す。
焚き火が似合うスモーキーな一杯
燻煙麦芽を使用した「燻」の風味は、ほのかにスモーキー。香りにも味にもはっきりした個性があり、かつスッキリした喉ごしも味わえる。
ビールだけでゆるゆる飲むのも楽しいが、これは料理といっしょに楽しめそうなビールでもある。料理とのマリアージュは、ビールの素材や色みに近いものを選ぶのが基本。Chief Experience Brewerの有友さんは、「肉料理や煮込み料理などと合わせると、うまみ、コクが広がる」と話す。たしかに「燻」の色はやや赤みがかって、お肉の色とも醤油の色とも近い!
そして当然ながら、燻製料理との相性のよさは抜群。ベーコンやソーセージをはじめ、燻煙したチーズ、燻煙した卵などがバッチリ合いそうだ。アウトドアで燻製料理を楽しみたい人にはイチオシである。ミックスナッツやポテトチップスなどのスナックも、ちょっと燻してみるとおいしい。焚き火といっしょにほんのりスモーキーな秋を楽しんでほしい。発売の9月10日が楽しみだ。
取材・文/佐藤恵菜