江戸川区・富士公園にある海抜11m「江戸川富士山」【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.82】
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    2024.09.25

    江戸川区・富士公園にある海抜11m「江戸川富士山」【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.82】

    江戸川区・富士公園にある海抜11m「江戸川富士山」【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.82】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.82は、江戸川区の富士公園にある山です。

    第82座目「江戸川富士

    今回の登山口は、JR葛西臨海公園駅です

    JR葛西臨海公園駅西口登山口。

    今回の登山口(最寄り駅)はJR葛西臨海公園駅。たぶん初めて降りました。

    以前、ある富士塚の場所を確認している途中で見失ってしまったことがありました。そこで、Googleマップで探していたところ、偶然発見したのが、今回の目的地の「山」なのです。

    葛西は東京都心からも近く、千葉の「夢の国」もすぐ隣。まさか、こんなところに山があるとは全く知りませんでした。ということで、JR葛西臨海公園駅に降り立った次第です。

    広い!茫漠たる葛西臨海公園を行く

    葛西臨海公園駅の南側には、当然ですが広大な葛西臨海公園が広がっています。目的地まで最短距離で進み、住宅街を抜けても特に書くネタがなさそうなので、やや遠回りですが葛西臨海公園の中を行くことにします。

    園内は、トレーニングをする人、通学途中と思われるの学生さんなど多くの人で賑わっていました。地図で見て大きな公園だと思ってはいたのですが、実際に歩いてみると相当大きな公園です。丸1日楽しめそうですね。

    だだっ広い葛西臨海公園。

    首都高の東京湾岸道路の上を通る臨海橋を渡ります。道幅のかなり広い臨海橋から何車線もある湾岸道路を眼下に見ると、ここが日本であることを忘れてしまいそうです。螺旋階段をくだり葛西中央通りを北上していきます。

    ただ、ひたすらに歩きます。空は今にも雨が降り出しそうです。今回のルートは結構長そうな道のりなのですが、目的地まで1/3ほどまでの距離を進んでも特に何もないゾーンでした。勝手に期待を裏切られた気分になりましたが、僕はすでに次の手を打っていたのです。

    すでに地図上で葛西臨海公園とは別の公園があることは確認していました。きっと何かあるだろうと期待し、そのまま新左近川親水公園へと歩みを進みめます。

    公園から公園へ数珠つなぎで

    葛西周辺にはたくさんの公園があります。そんないくつかの公園をつないで「江戸川総合レクリエーション公園」と呼んでいるそうです。僕が通るのは、新左近川親水公園・ラグビー場・良いこの広場・南葛西少年野球広場・スポーツ広場・フラワーガーデン、そして今回の目的地である富士公園です。

    僕が選んだルートはまさに江戸川総合レクリエーション公園を通る道のりなのでした。今回、最初に通る新左近川親水公園には、デイキャンプ場(現在改修中)、カヌー場、陸上競技場、葛西ラグビースポーツパークがあります。夕方で、人気(ひとけ)のない公園のカヌーポロ場のそばを進んでいきます。桜の木も多く、春は水面と相まって綺キレイな景色なんだろうなと妄想。そもそも自分が妄想族だったことを思い出します。

    新左近川親水公園のカヌーポロ場。

    かつての葛西の様子を今に伝える水門跡と遺構

    新左近川親水公園のポロ場を歩き終えるころ、「葛西沖と海岸水門」 遺構案内板が見えてきました。

    案内板によると、ここは江戸川の古い支流であった、左近川の河口だったそうです。ここより先は葛西沖と呼ばれる海域で、伊勢湾や有明海と並ぶ全国有数の干潟である三枚洲が広がっていたそうです。この地域は、葛西沖がもたらす海の幸の恩恵も受けていましたが、同時に度重なる水害にも悩まされてきました。 江戸時代から度重なる水害見舞われ、1957年(昭和32年)に葛西海岸堤防が完成。左近川の河口に海岸水門がつくられたそうです。

    以後、長い間多くの人びとの生活を守りましたが、1972年(昭和47年)に始まった夢西沖の土地区画整理事業により、河口部が埋立てられ、水門としての役割を終えたそうです。役割を終えた今、人びとの暮らしや治水の歴史を後世に伝えるため遺構として残し、ここを憩いの場としたそうです。現在の風景からは干潟が広がっていた当時の様子などは全く想像できず、本当だろうかとにわかには信じられません。

    「海岸水門」跡。

    今回の目的地は「富士公園」

    少し道路を歩き、江戸川総合レクリエーション公園を形成する、良いこの広場、南葛西少年野球広場・スポーツ広場(一部は工事中です)と、木陰のある静かな並木通りを進み、今回の目的地である富士公園へと到着したのでした。

    富士公園入口にある噴水。

    フラワーガーデン~富士公園~なぎさ公園の間をパノラマシャトルが走っています。歩くと結構距離のある道のりなので、シャトルバスがあると助かりますね。パノラマシャトルの名前は「はなちゃん」。かわいいですね。乗車していた外国人の方とお互い手を振り合いました。

    富士公園の案内板によると、バーベキュー場だけでなくキャンプ場も記されています。周辺を見渡しましたが、キャンプ客の姿はありません。というか、キャンプ場はどこにあるんだろう?と探しながら歩きますが、特定できませんでした。もし、こんな住宅街に近い公園でキャンプができるなら斬新だなと思いました。

    パノラマシャトルの「はなちゃん」。

    いざ「江戸川富士」へ

    富士公園のバーべキュー場を越えると、右手に小高い丘のような山が見えてきました。山頂まで踏みあとが続いていましたが、正規ルートで行った方がいいかなと思い、山麓をトラバースしていきます。そして、山頂へ向かう階段を登って行きました。

    どこが山頂かは気付きませんでしたが、モニュメントがあったようです。そにモニュメントを越え、景色の開けたベンチのある場所まで行きました。最近、この連載では富士塚の紹介が続いていますが、今回は違います。「富士山」という山が目的地だったのです。

    一度通り過ぎたモニュメントに目を向けると「江戸川富士」とあり、「山の高さ 海抜11m」と明記されていました。この日は残念ながらやや曇っていましたが、山頂は開放的で気持ちの良い場所でした。

    江戸川富士の山頂付近。

    江戸川富士のモニュメント。

    山頂の近くにはベンチもあります。

    こんな都心に近い場所でこんなに素敵な公園があるとは思いませんでした。歩く度(旅)に江戸川区が好きになります。

    しかも、今回歩くまでは葛西が伊勢湾や有明海と並ぶ全国有数の干潟洲のある場所だったとは想像もつきませんでした。山を訪ねてきたら海のことまで勉強でき、とても身になる山行でした。

    次回は葛飾区の上小松富士です。

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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