大型バイクに乗り始めて数年。ふと「でけぇ山を走りたい!」と思い立ち、様々なトラブルに見舞われながらも、インドにあるヒマラヤ山脈を走った記録を綴ったこの連載も今回で11回目!
長く続けさせていただいて感謝感激の今回は、ヒマラヤツーリング番外編!ヒマラヤ山脈のゴミ事情についてお話ししたいと思う。
世界一高いゴミ捨て場!?ヒマラヤ山脈のゴミ問題を自分の目で確かめに行ってみた!
インドに旅立つ前『世界で1番高いゴミ捨て場』『雪が溶けたらゴミだらけだった!?』と言われるほど、ヒマラヤ山脈のゴミ問題が深刻化していると噂に聞いた。
日本が誇る富士山も、山の環境を守るために登山者自身が出したゴミは各自で持ち帰るように呼びかけている、と聞いたことがあるが、世界で一番高いヒマラヤ山脈はどうなのか。
今まで芸人の傍ら沢山のアルバイトを経験してきた。遺品整理や清掃のアルバイトなどを経て、マシンガンズ滝沢さん率いる太田プロの「お笑い清掃団」に所属している身としては、テレビなどで見ていた雄大で綺麗なイメージがあるヒマラヤ山脈が『あっちもこっちもゴミだらけ!?』という噂が本当なのか、自分の目で確かめたくなった。
まず私がヒマラヤツーリングを開始したところは、インドの北部ラダック地方にあるLeh(レー)。標高3500mを越える山岳・高原地帯に位置し、色んな国から観光に来る方も多い場所と聞いていた。
到着してすぐ「こんなにも魅力的な観光地にゴミなんて捨ててあるわけ……」と見渡すと、ゴミを発見!右にも!左にも!周りを見渡すと沢山のゴミが捨てられているではありませんかっ!!!
ペットボトルやお菓子の袋。ガムの袋紙やタバコの吸い殻などなど沢山のゴミが捨てられている。特にペットボトルの蓋が大量に捨てられていたのを見た時は『もしやこれは草間彌生さんの作品なのか?』と壮大なドットアートなのかもしれないと……いや、そんな訳がない。これはただのゴミだ。あぁ…噂は本当だったのか…悲しい。
しかも私が最初に大量のゴミを発見した場所はインドのお寺にある駐車場。すぐ近くにゴミ箱が置かれていたのにも関わらず、ちょっとした窪地にゴミが捨てられていたのである。
『why?何故なんだい?』
この時が今までで一番ネイティブな「why」が出せたと思う。これが「世界で一番高いゴミ捨て場」と呼ばれる由縁か。思っていた以上に問題は深刻そうだ。
まず私がヒマラヤのゴミ事情で驚いたことは、ゴミ捨て場がほとんど無い事だった。お寺で見たのが最後と言わんばかりに、ゴミ箱やゴミ捨て場が見当たらない。
そりゃそうだ、ヒマラヤ山脈には家はもちろん!店さえもほとんどない場所。トイレに行きたくても「30キロ先までいったらあるよ!」と言われた時は…嫁入り前なのに〝野ション”を覚悟せざるをえなかった事を今でも覚えている。
そんな『家もねぇ!店もねぇ!トイレなんてあるわけねぇ!』と吉幾三さんもびっくりの大自然に、ゴミ箱なんてあるはずがないのだ。
ゴミが倍々に増えていく…
今回ヒマラヤツーリングは10日間。標高5600m越えの車やバイクで通れる世界で一番高い峠までバイクで走りに行く予定になっていたが、宿泊先やカフェなどの飲食店以外でゴミ箱やゴミ捨て場を見かけることは一度もなかった。
しかも標高が高くなればなるほど体内の水分が蒸発していく。呼吸をするだけでカロリーが消費していくため、頻繁に水分や食べ物を摂取しなくてはならない。そうなるとペットボトルや食べ物の袋などのゴミが出やすい環境になる。
だからこそ「ペットボトル1個ぐらいだったら、まぁいっか!身体もしんどいし!」と空になったペットボトルが邪魔になり、その『まぁいっか!』が連鎖し「私もいっか!」「オレも!」と罪悪感なくゴミを捨てて帰ってる人が多いのではないか…と思った。
「みんなが捨ててるから私は持って帰ろう!」と各々が出したゴミを持ち帰る意識があれば、こうはなっていなかっただろうなと思うと少し悲しくなった。
ただ、ここでびっくりした事がもう一つ。ゴミを「正々堂々と捨てているのか?」といえばそうではないということ。橋の下やデカイ岩の後ろ、なるべく表から見えないところに隠すようにひっそりとゴミが捨てられていたのである。
みんな雄大なヒマラヤ山脈に「ゴミを捨てちゃいけない」と分かった上で、ゴミを捨てているのだ。それが分かった時、これはしっかりと向き合わなきゃいけない問題だなと思った。
今回、私もなるべくゴミを出さないよう心がけてはいたが…それでもゴミが出てしまった時用に、ビニール袋を日本から持参。ツーリング中に出てしまったゴミは、ビニール袋に入れて、宿泊先などゴミ捨て場がある場所まで持って帰り、捨てるようにしていた。
そして、ペットボトルのゴミも出さないようにと常にドリンクバックに中身を移し替え、それを背負いながら行動していた。
しかも今回ヒマラヤツーリングツアーの開催者であるバイクメーカー『ロイヤルエンフィールド』が環境に配慮し「マイボトル」と「マイ箸&マイスプーン」などを事前に配ってくれていたおかげで、極力ゴミを出さずにツーリングする事が出来たのである。
ただ、元々インドに住んでいる方々はどうやって生活のゴミを処分しているのだろうか。「ゴミ箱もゴミ捨て場もないし…」と考えていると「パラリラパラリラ♪」と爆音で音楽を流しながら走るトラックを見かけた。
「え!もしかして、インドの暴走族!?」
と爆音で走るトラックを指差しながら「あれは何?」とインド人に聞くと、ゴミ収集車だということを教えてくれた。
インドでは道路にゴミ置き場がなく…爆音を鳴らしながら走る車の音が聞こえたら急いで外に出て、各自でゴミをゴミ収集車の中に放り込んで捨てるというスーパーストロングスタイル!
そんなストロングスタイルな「ゴミ捨て事情」だからこそ「これくらいなら…」という気持ちでポイ捨てしてしまう人が多いのかもしれない。
少しでもヒマラヤ山脈に恩返しを…でゴミ拾いを決行したのだが
果たして…私達にできる事はないのか。
爆音を鳴らしながら走るゴミ収集車に巡り会えればラッキーだが、それは運任せになってしまう。
微力でもいいからやれる事はないかと考えた結果、ヒマラヤツーリングに参加しているツアーメンバーと「ロイヤルエンフィールド」のインド人スタッフと一緒に、標高5000mでゴミ拾いをする事にした。
ただ、標高の高さと前日高山病になっていた事もあり、少し歩くだけでフラフラ…。「あれれ?さっきよりゴミが増えてる?」と視界が歪むほどに眩暈もしていたが…このままぶっ倒れて、私自身がヒマラヤのゴミになる訳にはいかない!
それに、ヒマラヤツーリングを通して「また絶対にここに来たい!」と思うほど大好きになったいたこの場所が「世界一高いゴミ捨て場」と呼ばれているのは悲しすぎる…。
もう一度気合いを入れ直し『キープヒマラヤクリーン』の言葉を合言葉に、その場にあるゴミを袋いっぱいに拾い上げた頃には体調も少し良くなっていた。そして、山が綺麗になったと同時に私の心も少し綺麗になった気がした。
「小さなことからコツコツと!」
微力でもいいから小さいことからコツコツやれば何かが変わるかもしれない。ヒマラヤ山脈に来て、西川きよしさんが名言がこんなにも沁るとは思いもしなかった。
「ありがとう、西川きよしさん!」「ありがとう、吉本新喜劇!」
次回はゴールまであと僅か!ヒマラヤツーリングの続き!果たして無事走り切る事が出来るのか!?
次回もお楽しみに!