BOOK 01
怪物はいかにして生まれたか。その事実も我々は知るべき
『OSO18を追え "怪物ヒグマ"との闘い560日』
藤本 靖著
文藝春秋
¥1,870
2019年から4年の間に66頭もの牛を襲ったヒグマがいた。最初に被害があった北海道・標茶町オソツベツの地名と、現場に残された足跡が18㎝だったことから付けられたコードネームは「OSO(オソ)18」。
本書は連続する被害を食い止めるべく、捕獲と駆除に挑んだOSO 18特別対策班のリーダーの手記だ。
ヒグマは成獣雄の場合、体重は約100㎏から大きいと400㎏に及ぶ個体もいる。しかし、意外なことにそんな巨体でありながら、彼らが本来主として食べているのは草木類や木の実など植物性のもの。山野に食べ物がなくなる時季に家畜を襲うこともあるというが、積極的に連続して襲撃するOSO 18のようなケースは前代未聞なのだ。なぜ、それほどまでに肉食に執着しているのか? そして、容易には姿を見せずに襲われていく牛たち。まさに「怪物」と呼ぶに相応しい存在だ。ベテランのヒグマハンターを対策班のメンバーに揃えつつも、なかなか追い詰めることができない。だが、ついにあと一歩というところまで迫るのだった。
結果的に思いもよらない形で幕切れとなる一連の捕獲劇。OSO 18がいかにして怪物になったのか……。我々人間が大きく関わっているという著者の考察も真摯に受け止めておきたい。
BOOK 02
こんにゃくでカエル? 本物を触って遊ぼう!
『大人も子どもも楽しい あたらしい 自然あそび』
奥山英治著
山と溪谷社
¥1,980
日焼け止めクリームでモンシロチョウ、こんにゃくでカエル釣り、ハマダンゴムシと迷路遊び。生き物の習性をうまく利用して捕まえて遊ぶ本書。春夏秋冬、季節ごとに捕まえられる生き物や植物の遊び方を伝授する。捕虫網の使い方や川での生き物の捕まえ方など基本的なハウツーも網羅。カタツムリはカッターの刃の上を歩けるのか? といった、「これをやったらどうなるの?」という好奇心もどんどんやってみる。さらに、ザリガニのエビチリやサルナシのジャムなど、自然そのものを食べてみるレシピもあり。五感をフル稼働させて楽しむ自然遊びの知恵とコツが満載だ。
BOOK 03
自分でも作ってみたい自給自足のヒントが!
『北の国から家族4人で幸せ自給生活』
三栗祐己、三栗沙恵著
農文協
¥1,980
自然災害を機に暮らしのあり方を見つめ直す人は多い。本書の著者も東日本大震災を経験し、電力会社を退職。その後、家族4人でタイのパーマカルチャー・ファームの滞在経験を経て、自給する生活を求め北海道に移住した。本書は北海道での自給暮らしの始まりから一部始終を著わしたもの。住まい、エネルギー、水、食、衣、さらには現金も必要だ。全てを真似できるわけではないが、暮らしに取り入れてみたい方法や考え方も。何事も楽しみながら実践する著者ファミリーがいい!
BOOK 04
ほとんどは感情の幻だ。リアルを求め奥深くへ
『バリ山行』
松永K三蔵著
講談社
¥1,760
本書でいうバリとはバリエーションのこと。整備された登山道ではなく、より困難なルートを指す。主人公の波多は、会社仲間との六甲登山をきっかけに山登りを楽しむようになる。ある日、社員の妻鹿も毎週山通いするほど熱心に山を嗜んでいることを知る。しかも彼がやっていたのはバリ。自分をバリに連れていってほしいと妻鹿に頼み込むのだった。社内の人員整理渦中にあっても我関せず、バリで本物の生を味わう妻鹿の姿が、波多の心を徐々に揺さぶっていく。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2024年10月号より)