軽キャンピングカーで、世界半周中の放浪夫婦です。
稚内からサハリン島へ渡り、シベリアの大地を爆走。モンゴルで道草したのち、中央アジアに入りました。南アフリカの喜望峰を目指す、無期限無軌道ドライブです。
ガイドブックにない隠れ家的パワースポットや絶景・奇景を見つけ出しては、「マイ秘境」と呼んで喜んでいます。
入国は、驚くほど簡単
賄賂警察官との闘いに明け暮れたカザフスタンを南下して、キルギスに入ります。
キルギスの入国は、拍子抜けするほど簡単です。入国カードや車の書類はなく、荷物検査がなく、ビザも要りません。
滞在期限は60日。実はキルギスで旅が破綻しかけたのですが、この2ヶ月間で救われました。
強盗はいないけど、名物はカツアゲ警察官
天然資源に恵まれている中央アジアにあって、めぼしい資源のないキルギス。貧乏です。街灯は少なく、夜は真っ暗。道路には大きな穴。住宅街は泥だらけ。真冬なのに、暖房のない宿。
地元民は強盗はいないから安全だと言いますが、名物はカツアゲ警察官。あまり変わらないです。
想定内の大問題が発覚!
キルギス以降はビザの必要な国が続くので、各国のビザ取りに忙しくなります。隣のウズベキスタン、その先のトルクメニスタン。そしてイラン。ルートによっては、ロシアかアゼルバイジャン。
ここで大問題が発覚しました!
パスポートの有効期限が6ヶ月を切ってしまったので(想定内)、イランに入れません(これは想定外)。カザフスタンにも戻れません(これも想定外)。中央アジアから出られなくなったのです(驚いた!)。
急遽、首都ビシュケクの日本大使館で、パスポートの更新を申請します。更新できるかどうかわかりませんよと脅されて、3週間ほど待機です。その間、ビザの申請はできません。
秘密のデリケートゾーンはパワースポット
パスポートを待つ間、琵琶湖の9倍もあるイシククル湖へ。ソ連時代は魚雷の試験場として、外国人は立ち入り禁止だったいわく付きの湖です。隠されていたと思うと、ありがたさが増すデリケートゾーン。天山山脈の神々しい白い峰と相まって、霊剣不明ながらもパワースポットとして外せません。
ピンポンダッシュに泣いた夜
イシククル湖の神秘のパワーを浴びた夜、小さな集落の雑貨屋の店先でキャンピング。夜中、がんがんがんと車を叩く音で目を覚ましました。子どもたちのピンポンダッシュです。何度も何度も叩かれ、
あまりにもしつこいので、「いい加減にせんかいー!(Excuse me!)」ってドアを開けたら、村人に囲まれてました。質問攻めにあうわ、Yukoのカラダを触りだす痴漢がいるわで、緊急脱出です。
村はずれのガソリンスタンドで寝ます(無料)。
秘湯の絶倫なる効能
人里離れた秘境に秘湯があります。アルティン・アラシャン。今にも吹雪そうな雪山の先です。山道を5メートルと進まぬうちに、地元民に止められました。
「車じゃ無理じゃて」
ならば、秘湯を諦め温泉へ。
谷あいのアクス村温泉は、入湯料171円(100ソム)。湯船が3つ並んだだけの、艶気もなにもない個室。お湯は完全入れ替え制。15分以上入浴禁止の張り紙。ナニに効くかはわかりませんが、カラダに良くないほど、絶倫なる効能なのです。3ヶ月ぶりのお風呂に、心身ともに蕩(とろ)けました。
幻に終わったマイ秘境
ひとっ風呂浴びたあとは、マイ秘境を求めてイシククル湖を攻めます。複雑に入り組んだ入り江の奥の奥まで車を走らせましたが、雪の混ざった泥道に悲鳴をあげる車。
「車じゃ無理じゃて」
陽が暮れる前に断念し、リゾートホテルの駐車場に泊まりました。一泊256円(150ソム)。
永遠の愛を誓いたくなる妖精の谷
朽ちた道路標識に、「Fairy Tale Canyon」の文字。「おとぎ話の谷」とはなんぞやと、脇道へそれます。
誰もいない赤土の荒野に薄い轍が伸び、ゲートは放置され、ゴミが散乱。忘れ去られた観光地です。妖精の屍骸でも落ちてやしないかと、道の端までプチ冒険します。
イシククル湖を見下ろして、永遠の愛を誓った風の記念撮影。マイ秘境「夫婦円満編」です。
中央アジアの北朝鮮へ
悩ましい問題がひとつ。ウズベキスタンとイランのビザは手に入れましたが、トルクメニスタンだけ取れません。
大使館は「明日の朝、電話しなさい」と言いますが、電話すると
「昼に電話しなさい」
昼にかけ直すと、「夕方に」
夕方は、誰も出ません。この繰り返しです。すでに60回も電話をして、疲れました。ビザは諦め、ウズベキスタンへ向かいます。中央アジアの北朝鮮と呼ばれる独裁国家ですからね、正直、行きたくないのだけれども。
吹雪で道路が消えた!
山越えは、強烈な吹雪。やがて道路は雪にかき消され、ガードレールも路肩も標識もないので、天上天下唯白一色。
山越えは、強烈な吹雪。やがて道路は雪にかき消され、ガードレールも路肩も標識もないので、天上天下唯白一色。
ある意味、正攻法の悪徳警察官
キルギスの警察官は、田舎へ行くほど不良です。検問で止められ、掘っ建て小屋に連れ込まれます。机がひとつあるだけ。椅子に踏ん反り返った警察官が、ひと言。
「金払え!」
違反したから罰金だとか、そういう冤罪系のExcuseは一切なし。直球勝負。わかりました、受けて立ちましょう。こちらはひと言も言葉がわからない戦法です。何を言われても、「なんのことだかわからないわ」ってなお目目で、「?」と首をかしげます。できるだけ可愛らしく。
「マネープレゼント!」
「プレゼントだよ、プレゼントっ!(怒)」
「プレゼントの意味がわからないのか!(怒怒)」と何度もわめかれましたが、つぶらなお目目「?」。この作戦は地味に効きました。
「もういいよ、この馬鹿!」
追い出されましたから。
ウズベキスタンは右ハンドル禁止!
まもなくウズベキスタンとの国境です。首都タシケントでトルクメニスタンのビザが取れなかったら、カスピ海を渡ってアゼルバイジャンへ渡ることになります。アゼルバイジャンのビザが取れなかったら、中央アジアから脱出できないことになりますが、それよりも心配なのは、ウズベキスタンの最新ニュース。
「右ハンドル車は禁止です」
ああ、胃が痛い。
次回は、中央アジアの北朝鮮ウズベキスタンに潜入します。
【キルギス・ドライブ情報】
ビザ:不要(滞在期限60日)
車の保険:(たぶん)不要
レジストレーションカード(外国人登録証):不要
アウトドアな宿泊先:駐車場(無料)
SIMカード:176円(100ソム)。チャージは882円(500ソム)
道路状況:未舗装が多い
最新国境情報:Web site「The Silk Road Travel Guide」
取得したビザ:ウズベキスタン(30日間/US$15)
イラン(30日間/特急料金130US$)
取得できなかったビザ:トルクメニスタン
警察官:傲慢なカツアゲ系。
石澤義裕・祐子
住みやすい国をリサーチしようという話から2005年から世界一周をスタート。アメリカ、カナダなどをスクーターで旅行し、オーストラリアをキャンピングカーで回ったのをきっかけに2015年の夏から軽キャンピングカーで旅を始めた。