オーストラリア最後の秘境(?)アーネムランドに潜入【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
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    2024.09.19

    オーストラリア最後の秘境(?)アーネムランドに潜入【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

    オーストラリア最後の秘境(?)アーネムランドに潜入【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
    みなさん、「秘境」ってどんなところを指すと思いますか? 辞書では大抵「外部の人たちが足を踏み入れたことがほぼなく、世間一般にはまだ知られていない場所」といった説明がされていますが…これだとハイキングルートがないそこらの「裏山」なんかも「秘境」になっちゃいますよね。

    私が住むオーストラリア内陸部の名もなき牧場地帯(隣の家まで100キロメートルとか。笑)なんかも「秘境」になってしまう。

    というわけで個人的には上記の説明以外の要素も入れるべきである気がします。それは「名前はなんか知っているんだけど、そこに何があるか全然わからない場所」。そして「なんだか知らないけど行ってみたくてウズウズする場所」。

    私にとってのそういう「秘境」の一つが今回紹介する「アーネムランド」です!

    どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。

    【アーネムランド旅vol.1】「壁画」と「自然の迷路」、そして「絶景」の大冒険

    オーストラリアに住んで25年。様々な場所を旅してきました。すべてを踏破したわけではないですし、踏破できるものでもないのですが、「そこには何があるのか? どういう地形なのか?」くらいはたいていわかっているつもりです。

    でもず~っとず~っと「ここには一体何があるのだろう?」と疑問だった場所があるんです。それが「アーネムランド」です。

    説明文ばかりというのもなんなので「アーネムランド」をチラ見せしましょうかね。

    場所は以前【「カカドゥ国立公園」旅】シリーズで紹介した「カカドゥ国立公園」のさらに東。で、カカドゥに訪れるたびに「ここの先にはアーネムランドという場所があるんだよ」ということをガイドたちから聞かされてきました。

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    でも「へえ~。…で、そこに何があるの?」と尋ねると、みんな押し黙る。はい、ガイドでも行ったことがない人が多いのです。

    でも単なる「住所」だけではなく、「アーネムランド」という「そのあたり全体を表すエリア名」はある。「アマゾン」とか「ヒマラヤ山地」みたいなものですね。ということは「注目すべき何か」があるはず。…とずっと気になっていたのです。

    でも日本語で書かれたガイドはほとんどない。ネットで検索してみてもオーストラリア政府観光局またはノーザンテリトリー(北部準州)政府観光局の英語紹介文を日本語に翻訳したものはヒットするのですが、メディアの記事はほぼ見当たりません。そんなまさに「秘境中の秘境」です。

    ちなみに「カカドゥ国立公園」は四国より少し広いくらいですが、「アーネムランド」はその4.5倍。9万平方キロメートルというから北海道よりも少し広いくらいです。でも人口はわずかに約1万6000人。このうち約1万2000人が先住民族であるアボリジナルピープル(「アボリジニ」という呼称は差別的と感じる人がいて使われなくなっています)とトレス海峡諸島人です。

    つまり「ほとんど人がいない場所」で、かつ「先住民以外はほとんどいない場所」です。

    能書きはこのくらいにして、いざ「アーネムランド」へ。今回の旅も以前紹介した【「カカドゥ国立公園」旅】シリーズの続きで、世界各国のメディア関係者(と言っても4人。笑)との合同プレスツアーです。

    ワニがウヨウヨの川を渡る

    このアーネムランドに入るにはカカドゥ国立公園の東の端の街ジャビルーから車で北東に向かうのが一般的。途中「ケイヒルズクロッシング」という場所で川を横切ります。

    その手前にあったのが「ワニ注意」の看板。

    「泳いじゃダメ」はわかるけど…「歩いちゃダメ」ってなによ? 橋、渡れないじゃん!

    ふと「この橋、渡るべからず」の立て看板に対して「端を歩けばいいんでしょ」と闊歩した一休さんのトンチを思い出していたら…。

    まさかの橋そのものがない! 笑

    はい、つまり「橋」ではなく、「堰」の上を車で渡るのです。まあ確かにここを歩いて渡ったらワニに襲われる可能性もありますわな。

    「ケイヒルズクロッシング」という地名を聞いたとき「なんてケイヒルズブリッジじゃないんだろ?」と疑問に思ったのですが、これが理由でした。

    ま、とにかく。「クルマが流されたらワニの餌じゃん!」とビビりながら橋…じゃなくて堰を渡ります。はい、「川口探検隊」並みにカラダを張っています。…というのはウソで「川口探検隊」並みに安全には充分注意しています。笑

    まあ正式な道で、熟練ガイドがドライバーなので安全なのでしょう。おそらく。

    てなわけでいよいよ「アーネムランド」に潜入

    「ケイヒルズクロッシング」を超えるとアーネムランドです。道の左右は鬱蒼(うっそう)とまでは言えませんが木々に囲まれたジャングル状態。アーネムランドに来る前に予想していた通りの風景です。

    というのはこのあたりは「熱帯」に位置します。熱帯といえばジャングルですよね。ところが。

    なんか「遥かなる大地」と言えるような平原も現れました。

    【「カカドゥ国立公園」旅】シリーズvol.3で紹介したイエローウォーター同様、このあたりは「氾濫原」なのです。

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    こんな小高い丘も。

    鬱蒼としたジャングルもいいですが、あれこれ景色が変わるのも楽しいですよね。

    さて「カカドゥ国立公園」東端の街ジャビルーから約50キロ。1時間ほどで人口約1200人のガンバランヤという村に着きました。「お~い。今日はガンバランヤ~」「ああ。おまえもガンバランヤ~」という頑張る気があるのかないのかわからない掛け声が頭の中で思わずループし始めるくらいのどかな村です。

    「自然の迷路」と「壁画」

    そこから車で5分ほどのところにある「インジャラクヒル(インジャラクの丘)」に向かいます。この丘はアボリジナルたちが描いた壁画で有名。というか普通の「観光ツアー」でアーネムランド内を訪れるのはこの丘くらいまでです。

    岩だらけルートをハイキング。

    ただ最初にお伝えしておきますが自分たちだけで行くのは無理です。ルートマップはありません。岩に打ち込んだ三角の反射板とか、枝に括り付けたピンクの紐のような「目印」もありません。

    そして人がやっと通れるくらいの岩と岩の間をすり抜けたりします。

    本当に「自然にできた迷路」という感じ。

    「どうやって通るんだ?」という箇所もあります。

    ちなみにこのあたりには「ミミ」と称される精霊が棲んでいるという言い伝えがあります。そしてミミに捕らえられると逃げられなくなるとも。

    そういうこともあってガンバランヤに住む先住民アボリジナルピープルのガイドさんに案内をお願いする必要があります。で~も。

    今回案内してくれたショーンさんは10歳くらいのころ興味本位で洞窟に入ったはいいが、ミミに捕らわれて3日ほど出られなくなったことがあるそう。それがどんなに恐ろしかったか、そして一旦洞窟から出られてからはもう二度と捕らえられないように、決して後ろを振り向かずに走って逃げたと臨場感たっぷりに話してくれたのはいいんですが…このハイキングでも妙な気を起こして「興味本位」のほうに走らないことを祈るばかりです。

    さてこの「インジャラクヒル」には見事な「壁画」が残されています。

    壁画の説明をしてくれるガイドのショーンさん。

    アボリジナルピープルはかつて「家屋に定住」はせず、季節ごとに果実や獲物を求めて移住を繰り返してきました。そのときの「仮住まい」になったのがこうした岩が庇状になったところ(木の枝や皮などで「簡易テント」的なものはつくることもあります)。

    で、そこに壁画を残したのです。

    さてさてここで一つ疑問が。数千年前からのものがあるという話は壁画を見るたびによく聞いていて、いつも「よくそんなものが残っているな~」と感心していたのですが、同じくいつもガイドさんと別れてから「いやいやいや。庇状の岩の下なんで雨水で流されることはないにしても、風が吹く場所で野ざらしにされていたら普通は文字通り風化しない?」と疑問が頭によぎっていました。…はい、同じ過ちを繰り返す男です。

    で、今回は珍しくショーンさんの説明中にその疑問が頭に浮かんだので質問してみました。すると「同じ絵を5~10年に一度、上から塗りなおす」とのこと! なるほど定期的に「修復作業」をするわけですな。

    ご存じの動物もモチーフに。

    「動物」だけでなく、「伝説上の人物」なども壁画のモチーフになります。

    「絶景」の見晴らし台へ

    そんなこんなで連れてきてもらったのが自然の見晴らし台。

    岩の下を抜けて到着です。

    その見晴らし台から遠くを眺める一行。

    ここは景色もいいのですが、左右にも上にも岩があって、なんだか大地に抱きしめられている感じがしました。ガイドのショーンさんも「夕方とかにここに来てぼ~っとするのが好き」とのこと。なんだかすごくわかります。

    家の近くにこんな「お気に入りの場所」があったら幸せだろうな。

    さてインジャラクヒルでのハイキングでは守るべきことは3つあると出発前にショーンさんから告げられました。1つめは「写真撮影不可の場所があり、そこに近づいたら事前に伝えるので撮らない」。その理由は「古い死体が置かれている場所があるから」で、岩と岩の間で風化した骸骨(がいこつ)を実際に見せてもらいました。

    マジで「川口探検隊」っぽくなってきたな。けどピカピカに磨かれた白骨ではなかったですが。笑 

    …意味がわからない方は「ゆけ!ゆけ!川口浩!!」で検索してみてください。

    インジャラクヒルで守ることの2つめは「壁画に触らない」。これはわかりますね。

    最後は「トイレに行きたくなったら伝える」。インジャラクヒルは現地のアボリジナルピープルたちの「聖地」なので、大どころか小のほうもしてはいけない場所があるからという理由が一つ。もう一つは勝手に茂みに行ったら、崖になっていたりすることもあって危険だからだそうです。

    私が一つ付け加えるとすると、「ガイドさんからは絶対に離れないこと」。目印になるものがまったくないので、絶対に迷います。

    さて別の見晴らし台へ。冒頭の写真のところです。

    こちらも大パノラマ。

    ところでガイドをしてくれたショーンさんからものすごく興味深い話を聞きました。なんと先日まで10日間の日程で、子どもたちを連れて部族が持つ広大な土地をめぐるキャンプツアーに出かけていたとのこと。どこに何があり、それはどのように使えるのか。そんな「生活の知恵」を教えたのだそうです。

    ちなみに「キャンプ」と言っても我々が使うような「テント」を背負うわけではなく、昔のように岩が庇状にせりでた場所や、それがなければ木の枝と樹皮を即席に組んだテントで雨風や陽ざしをしのぐのだそうです。

    現在も(普段は家屋で住みながらも)そういう伝統を大切にしている人たちがいるとは、本当に驚きでした。ただ私がしきりと感心していると、ショーンさんはニヤリと笑ったので、どこまで本当なのかイマイチ定かではありませんが。笑

    「写真撮っていい?」と訊いたら「カメラ目線」だけでなく「目線外し」のポーズも自然と繰り出すショーンさん。笑

    「岩の間」と「絶景」のハイキング。太古から受けつがれてきた「壁画」。そしてショーンさんの興味深い話。

    「世界遺産」のさらに先に、やはり「秘境」がありました。

    【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら

    オーストラリア政府観光局
    https://www.australia.com/ja-jp

    ノーザンテリトリー政府観光局
    https://northernterritory.com/jp/ja

     

    私が書きました!
    オーストラリア在住ライター
    (海外書き人クラブ)
    柳沢有紀夫
    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係

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