一方で、大規模な交通規制・渋滞・駐車場不足などと直面するのも、また花火大会のひとつの顔。先日も宮城県を旅行中、意図せず花火渋滞に入り込み、数時間もロスしてしまったところでした。
キャンピングカーがあれば、快適な参加が可能でしょうか。日本三大花火大会のひとつ、全国花火競技大会「大曲(おおまがり)の花火」にクルマで行ってみました。キャンピングカーでの参加は初めてです。
クルマで行く花火大会の難しさ
有料観覧席だけでも10万人、それ以外の来訪者も合わせると動員数60万人とも70万人とも言われる大曲の花火。規模だけならもっと大きな大会も多くありますが、大仙市の普段の人口が7万4千人ということを考えると、人口を遥かに超える人数が市街地に集中する1日となります。
前日から交通規制が始まり、時間を追うごとに進入不可エリアが拡大。有料・無料の駐車場も多数用意されますが、条件のよいところは当日昼頃から満車となり、どこも有料観覧会場までの数キロメートルは徒歩移動となります。終了後は市外に出ようとするクルマで、翌日の未明まで渋滞が続くといいます。
経済効果がある一方で、オーバーツーリズムの先駆けのような側面もあり、「例年、花火当日は自宅を空けて遠方に避難する」という知人もいるほど。
そんな参加難度高めの花火大会に、キャンピングカーや車中泊仕様車で行くとどうなるか。いろいろなイベントにも応用できそうなメリットを考えてみます。来年以降の参考となるよう、最後に「大曲の花火」固有の情報にも触れます。
メリット① 前泊や早朝からの会場入りが可能
有名観光地や飲食店、限定品の購入など、先着順で利用できるものは総じて「早め行動」が鍵になります。
大曲では実行委員会が管理する駐車場のほか、多くの私設駐車場(民間仮設駐車場)が設けられていました。私有地などが当日の朝から、3000~5000円程度の1日料金で貸し出されているようです。
午前9時頃に到着したところ、まだかなりの空きがあり、複数を比較検討して条件のよいところを選ぶ余裕もありました。慣れない道でも、ほとんど歩行者のいない朝なら運転も安心です。
ベッドごと移動しているキャンピングカーなら、仮に夜中ずっと走ってきても到着してから十分に仮眠ができます。県内のRVパークなどを利用して前泊するのもよさそうです。時間に左右されずいつでも寝られるため、変則的なスケジュールで動くことができるのは大きなメリットと言えそうです。
メリット② 長い待ち時間を乗り切れる
一方、早めに現地入りすることと引き換えに発生するのが、長い長い待ち時間。開会まではおよそ8時間の長丁場でした。しかも花火といえば夏ですから、炎天下の昼の時間をどう過ごすかは難問です。
私のクルマには家庭用エアコンなどがないため、暑さ対策には苦労しました。人出が少ない時間帯は、遮光カーテンで目隠しをしつつスライドドアを全開に。
混雑してきたら、何度かご紹介している「窓を細く開けてベンチレーターを排気にする」方法で風を取り入れました。エアコン搭載のキャンピングカーならきっと完璧ですね。
有り余る待機時間は、モニターでインターネット動画を見たり……
ゲームをしたり昼寝をしたり……
あらかじめ混雑しないエリアで買って冷蔵庫に入れておいた惣菜で昼食にしたり……
なるべく動かずいることで、体力の消耗を抑えることに注力。各種デバイスのおかげで「長い」と感じることもなく意外にスムーズに時間が過ぎました。用意しておいた動画が見きれなかったくらいです。
メリット③ トイレの心配がいらない
長時間の待機が必要なとき、気になるのがトイレです。イベント会場などでは簡単にはクルマを出し入れできませんから、近隣の仮設トイレや公共施設を徒歩で訪ねることになります。
常に最寄りのトイレまでの距離を考慮して駐車場所を選ばなければならず、選択の自由度が減ります。これはトイレのないキャンピングカーに乗っていた頃の車中泊旅でも感じたことでした。しかし車内にトイレがある、もしくは携帯トイレを使える環境にあるならば、この問題が解決します。
私はポータブルトイレを最大限に活用。混雑する仮設トイレに並ぶ必要がなく、また「トイレに行きたくなると困るから、飲み物を控えよう」といったことがなく、体調管理の面でもよかったと思います。小さなお子さんがいる場合などにも、携帯トイレの用意をおすすめしたいです。
メリット④ 荷物を柔軟に用意できる
この日、大曲は小雨がぱらつく天気。有料観覧会場は河川敷ですから、座席が濡れていたり、足元がぬかるんだり……ということが予想されました。夏の終わりの東北地方ゆえ夜には寒いという声も。
「生活の場」であるキャンピングカーには普段からさまざまな日用品を積んでいるので、晴天から雨天まであらゆるケースに対応できるのもよかったです。ぎりぎりまで待って天候を確認してから、必要なものだけリュックに入れて移動。たとえば手に長靴を持って歩き、川原まで行ったら履きかえる、といったことも可能です。
濡れた座席を拭くのに新品のタオルはもったいないな……と思っていたら、調理用にキッチンペーパーを積んでいることを思い出したのもキャンピングカーならでは。
雨から荷物を守るポリ袋、レジャーシート、防寒のための膝掛けフリースなど、車内に常備しているものをセレクトして現地に出かけました。
メリット⑤ 渋滞が解消するまで車内で就寝
以上の結果、存分に花火を楽しめました。混雑対策のためフィナーレを待たずに席を立つ人も多かったですが、「どうせ渋滞するのだからクルマで待とう」と思うと気持ちに余裕が生まれ、最後までゆったり過ごせました。
大曲の花火は夜花火だけでも約3時間、昼花火から見ると5時間近い滞在時間になります。もし途中で限界を感じたら、クルマに戻って休めばいいと思えるのも気がラクです。
全プログラムが終了したのは、予定時刻を少し過ぎた午後10時頃。対岸の花火師さんとライトを振り合う、感動の光景が広がりました。
閉幕とともに数十万人が大移動を始め、市街地には人があふれています。また、市内各所で交通規制が行われており、クルマを自由に出庫できない状態が続きます。すべての渋滞が解消するのは深夜1時とも2時とも。
一刻も早く自宅や宿泊地に着いてシャワーをしたり身体を伸ばしたりしたいのは私も同じで、「ただ待っているよりはいい」とついつい走り出したくなるのですが、ぐっと我慢。いつ動くともわからない車列に加わるのは心身ともに疲弊します。
駐車場利用は翌日まで可能だったため、割り切って明け方まで待機することとします。クルマに戻ったらすぐにラクな服装に着替え。
シャワールームがあれば理想的ですが、ボディシートでもなんとか我慢できるレベルに。髪や頭皮には水の要らないドライシャンプーを使うという手もあります。夜明けとともに帰路につくことで、渋滞とは無縁に走ることができました。
フェスやコンサートなど、大勢が同時刻に一斉に出発するようなイベントでも有効な方法だと考えます。
来年のための「大曲の花火」攻略法
来年の参考のため、最後に「大曲の花火」特有のTipsです。クルマで行くのなら、必勝法は「駐車場を予約する」または「早めに会場入りする」の二択。
大仙市公式サイトでは、6月頃から公設・私設の予約制駐車場の情報を公開しています。予約方法はインターネット予約「軒先パーキング」や往復ハガキ、電話など。リストにない私設駐車場も数多くあり、SNSで予約を受け付ける事業者もいるため、インターネットもチェックです。
もし予約なしなら早めに現地入りし、既述のように昼間の待機時間を攻略することがポイントとなるでしょう。「キャンプギア展開OKの私設駐車場」ではタープなどを張り、車外で過ごすことも可能です。
川に沿って細長く伸びる有料観覧会場のうち、自分の入る「ゲート」と「ロード」を意識して駐車場を選ぶのがおすすめです。反対方向だと徒歩移動が少し大変です。
また、交通規制(通行止め)の開始時間・終了時間・範囲も十分に確認したいです。公式サイト・公式アプリのほか、有料観覧席購入者には印刷版が送付されます。
市内では有料観覧会場を中心に規制範囲が広がっていきます。「規制前に現地入りし、解除後に現地から出る」と決めていれば、会場から徒歩5分といった好立地に駐車場が見つかることもあります。
持ち物はレジャーシート、水分補給の飲み物、虫よけアイテム、防寒具を兼ねたタオル、ゴミ袋、トイレットペーパー(仮設トイレ用)、雨具など。有料観覧会場は約26万平方メートルと広大なため、屋台で飲食物を購入するのは少し大変ですが、おつまみなどを持参するのは楽しそうです。未舗装なので汚れてもいい履き物は必須です。
普段の人口を遥かに超える人出から「都市機能が麻痺する」とも言われる大曲の花火。まったく疲労を溜めずに……とはいきませんが、ポイントを押さえれば、かなり快適に参加できることがわかりました。
今年は曇天に救われましたが、もし晴天なら暑さ対策が最大の課題となります。天候を見ながら来年もぜひ挑戦してみたいです。