水に親しむルートを辿り、西之宮稲荷神社にある五反野の富士塚へ【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.95】
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    2024.11.04

    水に親しむルートを辿り、西之宮稲荷神社にある五反野の富士塚へ【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.95】

    水に親しむルートを辿り、西之宮稲荷神社にある五反野の富士塚へ【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.95】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.95は、足立区の五反野富士です。

    第95座目「五反野富士

    今回の登山口は、東武伊勢崎線小菅駅です

    東武伊勢崎線小菅駅登山口。

    今回の登山口(最寄り駅)は、東武伊勢崎線小菅駅。初めて降りましたが、結構こじんまりとした駅です。

    今回も登山口をどこにするかで結構悩みました。綾瀬駅からだと、前回の綾瀬富士と近いルートなので書くことがなくなりそうですし、最寄り駅の五反野からだと、商店街はあるものの、あっという間に着いてしまう距離感。さて、どうするか…と迷って、当日、足立区に向かう電車の中で決め、降り立ったのが小菅駅だったのです。 

    五反野の歴史に触れつつ、親水路ウオーキング

    そうした経緯なので、後から調べて知ったことですが、実は小菅、その昔は「小菅県」の県庁所在地でした。小菅県は、1869年(明治2年)に明治政府によって設置された県。現在の東京都足立区・葛飾区・江戸川区および江東区の旧・城東区にあたる地域、荒川区のごく一部、埼玉県草加市の大部分、千葉県東葛地域を管轄したそうです。

    1869年(明治2年)に小菅県が設置され、県庁が葛飾郡小菅村に置かれたので小菅県という県名が付いたそうで、東京の北東郊外を管轄しました。1871年(明治4年)の廃藩置県を経て、東京府(第1次)および品川県と合併して東京府(第2次)となり現在に至るそうです。といった歴史的経緯を知ると、小菅は要地だったことがわかりますね。

    小菅駅を降りると、すぐに住宅街が広がっていました。記事に書けそうなことがあまりないかも…と思いましたが、グズグズしていても仕方ありません。ひとまず歩き出すことにしました。

    歩き始めると、すぐに水路というか小川というか、水辺がありました。しかも、立派なウッドデッキが水辺沿いに作られています。調べてみると、ここは裏門堰親水水路と呼ばれる水路でした。

    足立区では、「足立区河川・水路総合利用計画(足立水の回廊構想)」があるそうです。都市の環境を創造し、維持していく上で重要な水および空間としての新たな機能とともに、水害の多い密集市街地域にあって、下水道の補完機能及び災害時の防火用水などの機能、さらに身近な自然としての親水的な利用も図れる水辺として位置付けられているそうです。

    その水源は、夏季の水不足や自然の再生を考慮し、自然系(雨水、河川水、農業用水、地下水)を主水源として利用し、河川からの導水では、水路に引き込んだ河川水を浄化し、再び河川に戻して浄化を図っているといいます。

    計画の説明に目を通すと何やら堅苦しい感じですが、気軽に水辺を楽しめるのもこうした行政の取り組みがあるからですね。ともかく、気持ち良く水辺を歩いていきます。

    裏門堰親水水路。

    首を伸ばし切って甲羅干ししている亀を発見。

    それにしても、広大な敷地の横を水路が伸びています。てっきり水道局の敷地かと思っていました。でも、よくよく地図を見ると、そこは東京拘置所だったのです。

    ニュースや新聞で拘置所という言葉は見聞きしますが、どんな施設なのか——。気になって調べてみると、主に未決拘禁者(刑事被告人)・死刑確定者(死刑囚)を収容する法務省管轄の施設になるそうです。日本では被疑者は逮捕後、取り調べが終わるまでは警察の留置場に収容(留置・勾留)されます。その後、検察官の起訴を受け(被疑者から被告人に変わる)、裁判によって刑が確定するまでの間は「拘置所」に収容される(在宅起訴以外)のが一般的な流れなんだそうです。

    日本全国に8カ所あり、そのうちの1つがここ東京拘置所です。そして、東京拘置所の最寄り駅が小菅駅だったのです。

    ちなみに、東京拘置所がある場所は、もともと江戸時代初期は関東郡代伊奈氏の邸宅があったそうです。江戸時代中期になると、将軍家鷹狩り時の休憩所である小菅御殿が設けられ、小菅御殿の名残として、庭に置かれていた石灯籠(葛飾区登録有形文化財)と手水鉢、庭石が拘置所官舎敷地内に移設されています。

    廃藩置県で前述の小菅県が廃止され、東京府に変わると、土地の一部に日本初の煉瓦工場が建設されました。県庁跡に小菅集治監を設置し、1879年(明治12年)、刑務作業としての煉瓦製造が始まります。その後、小菅監獄を経て1922年(大正11年)に小菅刑務所と改称したのが、東京拘置所の前身だそうです。

    水路から親水緑道と続く道のり

    足立区裏門堰親水水路を半分くらい歩くと、左手に五反野親水緑道の入り口が見えてきます。今回はこの五反野親水緑道沿いに進んでいきます。みごとに「足立区河川・水路総合利用計画」の戦略にはまったかのようです。

    五反野浸水緑道。

    裏門堰親水水路から五反野親水緑道に入ると、より水辺がコンパクトで人が触れやすい道のりになっています。途中公園もあり、親水緑道脇の小川には鯉が泳いでいて、なんとも素敵な散歩道です。

    ここからは小川のような水路に変わります。

    公園を過ぎると、東武伊勢崎線の高架橋の脇を五反野親水緑道が通ります。道路沿いを歩いていくと五反野親水緑道の終わりから東武伊勢崎線の高架橋をくぐり、交番の前を通り過ぎると、今回の目的地である西之宮稲荷神社が見えてきます。

    いい感じの水路。都会のオアシスです

    目的地の西之宮稲荷神社に到着

    西之宮稲荷神社

    西之宮稲荷神社の創建は、1574年(天正2年)といわれています。この地域は、河川の氾濫原野だったそうですが、江戸時代の新田開発の際に京極氏弥五郎が開拓。その開拓者の名をとってこの地域は弥五郎新田と呼ばれていました。

    江戸時代後期の弥五郎新田には東の宮・本田の宮・西の宮の三つの稲荷神社と一つの氷川神社があったそうですが、1912年(大正元年)に本田宮があった地が荒川放水路の開削にあたり河川敷として買収されたことがきっかけで、本田の宮の御祭神も西の宮に合祀されることになりました。こうして西之宮稲荷神社は弥五郎新田の総鎮守となります。

    1945年(昭和20年)、第二次世界大戦の最中には、大空襲で西之宮稲荷神社の本殿・神楽殿などが焼失したそうですが、後に再建され、現在の社殿は2000年(平成12年)に建てられたそうです。

    西之宮稲荷神社。

    五反野富士

    1920年(大正9年)富士講の80名の寄付で築造されました。1923年(大正12年)の大地震により裏山の一部が崩壊しましたが、1927年(昭和2年)に修復も兼ねて頂上を増築。その後、上記したように2000年(平成12年)に社殿の改築・境内整備が行われ、それにに伴って向かって社殿の右側に富士塚を移築し、現在に至るそうです。

    五反野富士は、いたるところに実際の富士山の岩が使われています。ただし、残念ながら普段は登ることができません。でも、年に1度、7月1日の開山祭(山開き)の際には登れるそうです。

    普段は入れないように柵で覆われています。

    柵の奥に、ゴツゴツとした富士塚が鎮座しています。

    行き当たりばったりに小菅駅に降り立った今回、いつにも増して目を引くお店などがなく、これでは書くことがなさ過ぎて記事にならないかもと焦りました。でも、目線を変えて見渡すと実は色々と気持ちの良い景色がありました。「足立区河川・水路総合利用計画(足立水の回廊構想)」、すてきな計画です!また歩いてみたいな。

    次回は足立区の島根富士です。

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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