足立区・島根鷲神社で古くから親しまれるお囃子と富士山【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.96】
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    2024.11.06

    足立区・島根鷲神社で古くから親しまれるお囃子と富士山【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.96】

    足立区・島根鷲神社で古くから親しまれるお囃子と富士山【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.96】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.96は、足立区の島根富士です。

    第96座目「島根富士

    今回の登山口は、東武伊勢崎線西新井駅東口です

    東武伊勢崎線西新井駅東口登山口。

    今回の登山口(最寄り駅)は、東武伊勢崎線西新井駅。初めての降車です。そもそもほとんど縁のない東武伊勢崎線に乗ってやってきました。西新井駅に降りて東口に出ると、どことなく地方都市の駅前のような風情。個人的には好感が持てます。

    点在する歴史的スポットをたどり…

    本日の目的地は、島根鷲神社(しまねわしじんじゃ)。まずは、駅前の細い路地を通り、王子金町市川線を西方向に歩いていきます。交通量も多く、お店もまばらな感じです。

    地図を見ると竹ノ塚センター通りと表示があり、緑色の敷地があったので、公園か何かがあるかもと期待して歩いていきました。すると…。

    手前は草刈りが終わっていましたが、奥は草むらが続いています。

    竹ノ塚センター通りの間に敷地があったのですが、緑道のように整備されているわけではなく、草が生えているだけでした。近隣の方にとっては貴重な緑なのかもしれませんが、通りすがりの者には特に目を引くものもありません。足早に竹ノ塚センター通りを北上していきます。

    すると、とある敷地の一角にお地蔵さんがありました。中は良く見えなかったのですが、何か抱いているようにも見えます。ひょっとして子安地蔵でしょうか。私有地にあるのですが、歩道に面しています。もしかしたら、もともと集落にあったお地蔵さんなのかもしれません。

    子安地蔵でしょうか?

    少し歩くと、立派な松が見えてきました。地元嶋根村の旧家桐田家です。こちらの玄関先には遠くから見ても直ぐに分かるほどの黒松があり、足立区の保存樹となっています。

    樹齢300年の黒松と桐田家。

    また、旧家桐田家は一見普通の大きな民家のような構えですが、こちらのお宅には将軍の鹿狩りの際に、村の御用勢子人足が使用した旗が保存されているそうです。勢子(せこ)とは、狩猟者が獲物を狙いやすいように野生動物を一定の場所に追い込んだりする役割を担う人のこと。旗は、勢子がどの村の人々かわかるようにするための目印として使用されていたそうです。

    1849年(嘉永2年)、12代将軍徳川家慶(いえよし)は小金牧(千葉県北西部に広がる牧場)で大規模な鹿 狩りを行います。その規模は最大級のもので、近郷農村から動員された人数は5万人以上といいます。当時の幕府の力が絶大だったことがわかりますね。

    旧家桐田家の裏の方には、大きなお寺もありました。日蓮宗、天下長久山国土安穏寺(こくどあんのんじ)です。

    創建は1410年(応永17年)、開基は千葉太郎満胤(室町時代の武将、千葉氏14代当主)だそうです。当初は長久山妙覚寺とされていて、江戸時代に将軍徳川秀忠および家光がこの地区を巡遊する際の調理場となりました。その際に八世日芸聖人が大宇都宮釣天井予言を話して難を逃れたことから1624年(寛永元年)、現寺号国土安穏寺を賜って徳川家祈願所位牌安置所となりました。これより寺は、葵紋(あおいもん)の使用を許可されたそうです。

    立派な門構えの国土安穏寺。

    国土安穏寺の向かいには、蕎麦屋「上州屋」と、竹ノ塚センター通り沿いに立ち食いそば・うどん「 たまも」がありました。上州屋さんは白く色が抜けるほどの使い込まれた暖簾が掛けられていて、地元の方に人気のお蕎麦屋さん。平打麺に近いソバは食感もよく美味しいそうです。

    いかにもお蕎麦屋さんらしい佇まいの上州屋。

    一方、立ち食いそば・うどん「 たまも」も駐車場が満車になるほどの人気ぶりです。こちらもローカルの立ち食い系のそば・うどん屋さんで、立ち食いといいつつ、ちゃんと椅子に座って食べるお店です。リーズナブルで美味しいと評判のお店で、なんと「カルシュウムそば」なるものがあるそうです。

    立ち食いそば・うどん「 たまも」。

    竹ノ塚センター通りを進み、マミーマート足立島根店の裏から路地に入ります。しばらく住宅街を進むと、今回の目的地島根鷲神社の立派な入り口が見えてきます。

    目的地の神社&富士塚へ

    島根鷲神社

    島根鷲神社は、1318年(文保二年)に再興されたとする古い神社です。その昔、この地は古代の海岸線とされるところで、ここの入り江の景勝地から神々が上陸したと伝えられているとか。日本武尊(やまとたける)が東征の際、それらの神々を敬意をはらい、この地をまつったそうです。このようなことから浮島明神・大鷲尊と言われています。再興された鎌倉時代以降は鷲大明神と名乗りました。

    島根鷲神社。

    神社の奥の目につかない場所にあった石像。

    また、島根村は徳川将軍家の鷹狩場であったことから、歴代将軍の参拝があったそうです。8代将軍吉宗は、島根鷲神社にあった寺子屋で、手習い教本に幕府の諸法度集が用いられているのを見て、祠官に褒美をあたえたとか。現在の社殿は1956年(昭和31年)に建てられたそうです。

    島根ばやし

    島根ばやしは、神田囃子の流れを汲み、構成は小太鼓1、大太鼓1、鉦1、横笛1で構成される五人囃子です。島根神楽に伴って奏でられる神楽囃子のときには、この構成に大拍子1が加えられます。

    鷲神社の境内には、島根ばやし中興の祖とされる田口峰吉翁(たぐちみねきちおきな)の記念石碑があります。1974年(昭和49年)に島根ばやし連中が結成され、現在、会員が神楽や囃子の伝承に努めています。

    島根神楽

    島根神楽は「神代神楽」といわれ、神話を題材としたものを中心に行われる神楽です。聞き書きで伝わる演目は16ありますが、現在はその中のいくつかを中心に奉納されています。

    1955年(昭和30年)代頃までは神楽を行う集落がいくつかありましたが、現在では、足立区内で神楽を伝承しているのはこの島根だけとなっています。島根神代神楽は、1988年(昭和63年)に足立区無形民俗文化財に指定されました。

    島根歌舞伎などの記念碑。

    島根富士

    本殿左奥に「富士塚」がありました。富士塚が出来たころ、島根の若者たちは「十三夜行」として島根富士講から出発し、村ではその帰着に合わせて牛車に万燈を仕立て、島根ばやしのお囃子入りで村中の人が出迎えたそうです。子供たちには、陽に焼けた業者姿の若者が修行を積んだ聖人に見えたとか。現在の富士塚は1988年に復元されたそうです。

    島根鷲神社の境内にある島根富士。

    島根鷲神社は開運子育ての神様だそうです。もしかして来る途中に見かけた子安地蔵も島根鷲神社に関係あるのかもしれません。何だか伏線回収(?)した気分です。

    次回は足立区の小右衛門富士です。

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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