大型バイクに乗り始めて数年。ふと「でけぇ山を走りたい!」と思い立ち、様々なトラブルに見舞われながらもインドにあるヒマラヤ山脈を走った記録を綴ったこの〝爆夢旅“もゴールに近づいてきている…はずなのだが、まだまだ驚きの展開が終わることはない。
あれ、なんで登山してるんだっけ?
何度も高山病になりながらも走り続けたこの10日間。「標高5600m越えの車やバイクで走れる世界で一番標高の高い峠越え」を達成したり…「道なのか池なのか川なのか」道の概念を忘れさせるほどに大きな水たまりや底の見えない川を走行したり…。
「テレビもねぇ!風呂もねぇ!工事現場はツルハシだ!」という場所で、3日間風呂無しの状態で過ごしたり…道中トイレが無さすぎて嫁入り前に〝野ション″を決意したり…と、私の走馬灯は『このヒマラヤツーリング!』と言い切っていいほど色々な経験してきた。
そして今。
私は、標高4500mで登山をしている。
「え?バイクでヒマラヤ山脈を攻めに行ったはずじゃ…」と思ったそこの貴方!
私もそのつもりだったが、数日前に「湖まで15分。一緒に歩こう!」と誘ってきたドクターが「あそこに見える小さい山のてっぺんまで歩いて行こう!」と誘ってきたのである。
その日も朝から11時間バイクで走行。連日の走行の疲れもあり〝あしたのジョー“並みに灰になっていたが、ヒマラヤで色んな経験をしたい!とテンション爆上げ中の私は、二つの意味でハイになっていたので「OK!」と返事をした。
ただここで問題が一つ。前回「湖まで15分!」と言われていたが、結局片道2時間半もかかり…仕舞いには迷子になって現地民に助けていただいた過去がある。
果たして、私はこのドクターを信じていいのだろうか。
「今回は大丈夫?」
『Don’t worry(心配いらないよ)』
「本当に?」
『Trust me(私を信じて)』
近年稀に見るドヤ顔のドクター。心配しかなかった。ただ、幼少期から母親に「ケセラセラ。なるようになるさ」と言われて育った私。ヒマラヤハイになっている事もあり「なるようになるか」とドクターに付いて行くことにした。
歩いても歩いても、山自体に辿り着かないんですけど!
登山を始めて20分。小さく見えていた山までの距離が全く縮まらない。そうか、これが世界のヒマラヤ山脈か。湖の時と同様に「すぐそこ!」に感じていた山は、比較対象が大きいから小さく見えていただけで、すぐに登りきれる距離ではなかった。
ただ、歩き出したら頂上まで登りたいと思うのが人間の性である。
「…安西先生!山登りたいです!」
スラムダンクの三井寿もこの山を見たら、バスケより先に登山をしたくなるだろう(?)。
ドクターを信じて一歩一歩進むこと2時間。あれ?…景色が全く変わらない。
「もしかして、あの山…めちゃくちゃ遠いんじゃないか??」
さっきまでの気合いはどこへやら…朝からバイクで11時間走行。そこからの2時間の登山で身体は限界ギリギリ。集中力も途切れてしまい、体調も悪くなってきた。
さっきまで感じなかった吐き気や腹痛。「あぁ…もうダメだ…」とその場で座り込む。少し前を歩いてたドクターがすぐに私の異変に気付き、顔色を見に来てくれた。
「oh!大丈夫!大丈夫!」
『もうムリ…』
「はい!これ食べて!」
と今にも袋が破裂しそうなハイチュウを渡してきた。只今、標高4700m。富士山より1000mほど高い場所にいるので呼吸もしづらい。ハイチュウも私と同じく体調が悪そうだった。
一口パクリ。あぁ…美味しい。いつもだったら一瞬で食べてしまうハイチュウをじっくり堪能する。
「あれ??ハイチュウって、もしかして仙豆だったの??」
と悟空もびっくりの新事実。さっきまでボロボロだった身体に力がみなぎってきた!
ハイチュウのおかげで体調も少し良くなってきたが、ドクターに「これ以上登っても下山する体力がないからここで帰りなさい。」と促される。
仕方なく頂上までの登山は諦め、一人トボトボと下山することにした。とても悔しい結果になってしまった。
(この経験が「いつかヒマラヤ山脈をしっかりと登山したい」という夢に繋がるのだが、それはまた別の機会に話すとして…。)
それから4時間後。
山登りを続けていたドクターたちが帰ってきた。どうやら「標高5200mまで登り、ゴミ拾いまでして帰ってきた」らしい。
……タフすぎるだろ!!!!!
そして、ドクターは「明日時間あったらまた登ろうね!おやすみ!」と部屋に戻っていった。
『おーい!!地球のみんな!!オラにドクターと同じくらいの元気を分けてくれ!!』
次回!ゴール間近にトラブル発生!?果たして、ゴール出来るのか…。
みんな読んでくれよな!