タヒチ島でカヌーの世界チャンピオンと秘密の場所を探索【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
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    2024.10.28

    タヒチ島でカヌーの世界チャンピオンと秘密の場所を探索【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

    タヒチ島でカヌーの世界チャンピオンと秘密の場所を探索【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
    「タヒチ島」にはフランス領ポリネシアの首都も唯一の国際空港もこの島にあります。はい、中心地なんです。それなのに…かわいそうな場所なんです。

    前回まで訪れていたモーレア島やボラボラ島や、その他珠玉の島々への「中継点」扱いで、日本人観光客からは「最後に1泊して市内観光とおみやげを買う場所」としてしか利用されないことが多いのです。

    だ~け~ど。このタヒチ島にも宝石…というか原石は隠されていました。

    「優雅な水上バンガロー」じゃないタヒチを探す旅。最終回はそんな「タヒチ島の秘密の場所」を探検する旅です!

    どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。

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    【タヒチ旅vol.7】タヒチ島にもすごいところがあるんです!

    ってなわけで私も「最後の1日」を過ごすためにタヒチ島に戻ってきました。そして向かうのはひょうたん型のタヒチ島の「小さいほう」です。

    タヒチ島の地図。首都で国際空港もあるパペーテは「大きいほう」の左上に位置します。 (c) タヒチ観光局

    「大きいほう」はタヒチを代表する航空会社「エア タヒチ ヌイ」の名前にもなっている「タヒチ・ヌイ」、「小さいほう」は「タヒチ・イティ」と呼ばれています。タヒチ語で「ヌイ」は「大」、「イティ」は「小」という意味なので、「大タヒチ」と「小タヒチ」ですね。

    ちなみに「タヒチ」の発音も本来は「タヒーティ」みたいな感じで「ヒー」のところにアクセントが来ます。…7回シリーズの最終回に伝える話じゃないですね。笑

    さて「小さいほう」の「タヒチ・イティ」に向かう旅。今回の送迎は現地の旅行会社に勤める日本人ドライバー兼ガイドさんが担当してくれました。

    で、その方に伺ったのが冒頭のタヒチ島観光の現状。「アウトドアアクティビティーみたいなものはないんですか?」と訊いても「う~ん。タヒチ島ではほとんど売ったことがないですね~」とのこと。

    というか彼自身も「小さいほう」の「タヒチ・イティ」へ行くのは何年かぶりだそう。首都パペーテから約60キロメートル、わずか1時間の距離なのに、地元の人にもあまり訪れない場所のようです。

    世界一気さくなチャンピオンとカヌーをしてみた

    その「タヒチ・イティ」に私が向かった理由。それはそこで競技カヌーの世界チャンピオンであるヒナテアさんと会うためです。

    世界チャンピオンと思えないほど気さくな人です。

    カヌーっていうとオリンピック競技にもなっている「急流下り」のほうを思い浮かべるかもしれません。でもヒナテアさんのは本体の横に「浮き」がついているアウトリガーカヌーのほう。

    競技用のものはこんな感じで。

    伝統的な釣り舟はこんな感じ。

    ポリネシア人たちが北はハワイから東はチリのイースター島、南はニュージーランドから、西はオーストラリアのトレス海峡諸島まで太平洋のあちこちに広がることができたのは、カヌーという安定した舟を作り出したからこそです。

    大海原を渡ったのはこうした双胴船タイプのカヌーとのこと。

    そして今でもアウトリガーカヌーはフランス領ポリネシアの国民的スポーツ。タヒチ滞在を締めくくるアウトドアアクティビティーとしてこれ以上適したものはないでしょう。

    このアウトリガーカヌーの国際協会名を「International Va’a Federation」といいます。

    ヒナテアは前の週にハワイ島のヒロで開催された世界選手権から帰って来たばかりとのこと。個人では7回(500mスプリントで5回、20キロメートルの長距離で2回)、6人乗りで行われる団体戦では23回チャンピオンになっているレジェンドです。14歳のとき最初のチャンピオンになって、今は36歳です。

    獲得したばかりのメダルも見せてもらいました。

    また毎年1回行われる「テアイト(Te Aito)」と呼ばれるタヒチでの国際レースでも11回の優勝を誇っています。

    で、現在は自宅のすぐそばにある海沿いの別宅をベースにして、希望者にカヌーを教えているのです。

    そのベースで。

    レッスンはヒナテアが後ろに乗って指導してくれます。

    カヤックの経験は何度かあるのですが、リゾートのラグーンみたいなところでのみ。波をかきわけて大海原に進んでいくのは、まるでかつてのポリネシア人になったようで痛快です。

    しかも今回の相棒は世界チャンピオン! 推進力が全然違って「うわっ、カヌーってこんなに速いの?」と驚かされました。

    で、気づいたら岸から200メートルくらい離れていて、訊くと水深は4メートル。泳げない人間ではないのですが、ちょっとビビりますね。

    でも岸に戻ってくるときに大きめの波に乗るとちょうどボディーボードのようにス~~~~~ッと滑っていき、爽快です!

    というわけでご機嫌の私です。

    さてヒナテアが「希望者にカヌーを教えている」とサラッと書きましたが…引退後ならまだしも現役の世界チャンピオンです。そんな彼女が直々に、かつ世界中を連戦する大会の合間に、ド素人にカヌーを教えてくれるなんてありがたいやら申し訳ないやと恐縮至極。

    ところがです。カヌーの世界大会はF1グランプリとかサーフィンのように年に何大会もあって、世界中を転戦するわけではなく、1年に1回きりの開催だそうです。それでこの優勝回数なのだから正真正銘のレジェンドです。

    さらにヒナテアによると世界大会で優勝しても賞金は出ないとのこと。「もらえるのはメダルだけ」だそうです。当然遠征費はかかるので持ち出しです。

    オーストラリアとか他の豊かな国では遠征費を提供してくれるスポンサーを見つけている選手もいるそうですが、タヒチをはじめとする南太平洋の小国ではなかなか難しいとのこと。だからカヌーの世界で活躍するのは比較的ゆとりのある家庭に育った人が多いといいます。

    パリオリンピックでも「競技格差」みたいなものが話題になりましたよね。メダルを獲得したときの協会からの報奨金が競技によって異なるとか。飛行機もビジネスクラスが基本な競技もあれば、メダルを取ってもエコノミーのところもあるとか。

    けどオリンピックでは少なくとも遠征費用は負担されているでしょう。でもアウトリガーカヌーは自腹。「需要と供給」というか「人気」によって左右されるのは仕方がないとはいえ、大変です。

    ヒナテアの別宅に置かれた貝のオブジェ。

    カヌースクールの夢

    てなわけでヒナテアの家も農園を持っていて比較的裕福とのことですが、自分でも様々な仕事をしています。毎日の仕事としているのが警察官。そして民泊施設の経営も。

    そんな彼女の今の夢はこの近くに「カヌースクール」を設立すること。2年前から構想を練っていて、2ヵ月以内にオープンすると言っていたのでおそらく2024年10月中にはできているはずです。

    目的の一つはポリネシアの伝統スポーツであるカヌーの競技人口をもっともっと増やすこと。そこで主に10~16歳の地元の子どもたちに教えるとのことです。このレッスンは基本的には2人雇う予定のインストラクターに任せるようです。

    もう一つの目的は旅行者の体験レッスン。こちらは時間が許せば自分も顔を出すつもりとのことです。

    同じエリア内にはレストランやカフェもできて、ウォーキングも楽しめるとのこと。

    それから「タヒチ・イティ」ではハイキングやダイビングやシュノーケリングも楽しめるそう。「今は旅行者が本当に少ないですけど、数泊してもやりきれないほどのアクティビティーがあるんです」。この素晴らしい場所をもっと知らせるのがヒナテアの夢でもあります。

    スクールを開く予定の「プヌイビーチ(Plague de Punui)」。

    海沿いのウォーキングコース

    昼食の後ヒナテアとともに訪れたのは「テアフポオ(Teahupo’ o)」。日本語では「チョープー」や「チョーポー」と発音・表記されることもありますが、現地の発音は「テアフポオ」が近いです。

    2024年パリオリンピックのサーフィン競技がヨーロッパではなく、タヒチで行われたことをご存じの方もいらっしゃると思いますが、その会場になったのがじつはここなんです。

    さて「テアフポオ・ウェイブ」というモニュメントがある駐車スペースから、サーフィン会場まで片道約700メートルの遊歩道が続いています。

    これが「テアフポオ・ウェイブ」。

    言っておきますが世界チャンピオンを専属カメラマン扱いしたわけではありません。ヒナテアのほうから「ユキ。写真撮るからそこでポーズを決めて」とリクエストしてきたです。

    …ホントに気さくな世界チャンピオンです。

    遊歩道のスタートはこんな橋です。

    オリンピックの会場になったとは思えないほど庶民的なゲストハウスが集まります。

    なんか椅子があると撮りたくなる私です。

    遊歩道の終点がサーフィン会場になった場所です。

    タヒチらしい海。でもこの日の波は少ないですね。

    沖合にある審判員が競技者を見る場所。

    帰りは同じ道を戻るのですが…。

    この景色を見てなぜか「あっ、タヒチに来た」と思った私。

    旅の最後の最後になって不思議な話なのですが、ずっと紹介してきた「優雅な水上バンガローじゃない」を象徴する風景にタヒチを感じたのかもしれません。旅は本当に不思議なものです。だからおもしろいのです。

    【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら

    タヒチ観光局
    https://www.tahititourisme.jp/

    今回の「TAHITI DISCOVERY」ツアーに関する日本語での手配問い合わせ先(ただしツアーそのものは日本語非対応):タヒチ・ヌイ・トラベル
    https://tahitinuitravel.com/(サイトは英語またはフランス語のみ)
    日本語対応メールアドレス:japan@tahitinuitravel.pf

    私が書きました!
    オーストラリア在住ライター
    (海外書き人クラブ)
    柳沢有紀夫
    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係

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