「クロストレック ストロングハイブリッド」という名前で、現行モデルより排気量アップの2.5リットル水平対向エンジンに、トヨタ方式の2モーター式ハイブリッドシステムを搭載しています。スバルの売りである「水平対向エンジン」「左右対称レイアウト」「AWD(4WD)」は踏襲しつつ、ダウンサイジング潮流の「逆張り」で大幅にパワーアップした新クロストレック。その魅力と気になった点をリポートします。
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外観はいまのモデルとほぼ同じ、だがしかし!
スバルのクロストレックに追加される「クロストレック ストロングハイブリッド」(以下ストロングハイブリッド)のプロトタイプに試乗しました。
プロトタイプといっても、ナンバープレートが装着されていないぐらいしか市販版と違うところが見当たらないほど完成された状態でした。18インチホイールやエンブレムなどが専用の装備だそうです。
場所は、富士山麓の「イエティ・スノーパーク」。以前の「日本ランドスキー場」ですね。夏のスキー場ですから他にお客さんはいませんが、フェンスに幕を張って外から見えないようにしていました。そんなことをしなくとも、新型ストロングハイブリッドは現行型のクロストレックと外観は変わりませんから、見分けが付く人はいないでしょう。
「日本初スキーの地」は、新潟ではなく富士山麓?
レストラン棟に入ってすぐに興味深い展示がありました。題して「日本初スキーの地」。日本初スキーの地は、ヨーロッパの軍人であるレルヒ少佐が明治時代に日本陸軍を指導した新潟ではありませんでしたっけ?
中学校で習って以来ずっとそう憶えてきたので意外でした。エビデンスもいくつも挙げられていたので、そうなのかもしれません。
大排気量エンジン+強力なモーターで走りはどうなった?
缶酎ハイのようにストロングハイブリッドと呼んでいるのは、トヨタが自ら開発してプリウスを始めとした様々なクルマに採用している「THS」システムのことを指しています。
現行型の「クロストレック e-BOXER」が2.0リッター水平対向エンジンに最大トルク65Nmのモーターを組み合わせたマイルドハイブリッド方式を採用しているのに対して、クロストレック ストロングハイブリッドは2.5リッターエンジンに最大トルク270Nmのモーターを組み合わせています。
クロストレックに2.5リッターもの排気量の4気筒エンジンを組み合わせているのは、すでにアメリカで発売され、日本でも2025年の登場が予想されている「フォレスター」に搭載されているからでしょう。
共用することによって効率化を図ることが目的なのでしょうが、2.5リッターもの大排気量エンジンに強力なモーターまで組み合わされるわけですから、クロストレックのボディには過剰なように、乗る前には思われました。
加速が強力すぎる!オーバースペックか?
案の定、舗装された駐車場で加速してみると強力な加速を示します。でも、フェンスが迫ってくるので、すぐにブレーキです。
これが高速道路であったなら、そのまま中高速域での加速の伸びなどドライバビリティを試せたのですが、狭く、短い距離を多くのクルマとともにせわしなく走ったので、最後のところまではわかりませんでした。
本来はリアルワールドでの長距離走行を得意とするはずのスバルの長所を感じられなかったかもしれないので残念でした。
現行型e-BOXERはかなりバランスが良い
演出なのかもしれませんが、駐車場ではエンジン音が大きめに聞こえました。演出ではなかったとしても、大きめのエンジン音は抑えるべきでしょう。意味がありません。大きな音をスポーティだとか、高性能の象徴のように扱うのは幼稚なことです。
その点で、マイルドハイブリッド方式の現行型e-BOXERのバランスの良さが再確認できました。ストロングハイブリッドほどのパワーはありませんが、かえってスバルが常套句にしている「意のままにクルマを操る」感じが顕になっていました。
クロストレック全体の美点のひとつは、「XV」時代から適正なボディサイズと形状を守り続けていることです。やや装飾過剰なところもありますが、車高を上げたり、前後長を伸ばしたりしていないのはスバルの良心でしょう。
気になった点
不満点も短い試乗中にありました。
EV走行モードが選べない
ひとつは、電気だけで走るEVモードに切り替えられなかったことです。開発スタッフに確認すると、「充電量が不足しているから」とのことでした。これがリアルライフでも頻発するようでしたら、もしかすると実生活ではストロングハイブリッドのメリットを享受しにくく、使いにくいのかもしれません。いずれにしても、ナンバー付きのものをある程度の時間と距離を乗ってみないとわかりません。
充電優先モードが選べない
もうひとつは、充電を最大限に行なう走行モードが設けられていない点です。例えば、深夜や翌早朝に出発することが予定されているキャンプサイトに向かう途中で充電量が少ない場合に、事前に走行中に十分な量の充電を行なえるようプログラミングされたモードのことです。これがあると、自然の静寂の中でエンジンノイズを響き渡らせることなく、電気の力だけで無音で立ち去ることができるのです。
ストロングハイブリッド方式なのですから、充電やEVモードに関して柔軟性があって然るべきでしょう。
最新運転支援機能「アイサイトX」はぜひ装着すべし
試すことはできませんでしたが、試さなくても優秀性がわかっている「アイサイトX」は依然として高水準な運転支援機能です。渋滞時ハンズオフやレーンチェンジアシストが可能なので、遠くのフィールドに出掛けるための長距離走行でドライバーの負担を確実に軽減してくれます。オプションですが、その効果は十分以上にあるので強く装着を勧めます。
繰り返しになりますが、限られた場所と時間による試乗だったので、その良さも限定的にしか伝えられなかったことをご容赦ください。いつか長距離を走った時には、その報告は必ずいたしますので。