夜間や早朝、しかも山間部のイベントとなると近隣ホテルに宿泊するのが一般的ですが、最近では宿泊料金の高騰や予約の取りにくさが全国的に話題となっています。しかし、車中泊ならぐっと選択肢が広がります。
暑さに悩まされず朝まで眠れることから、秋は車中泊に最適な季節。岩手山麓にキャンピングカーで出かけてみました。
車中泊で出かける岩手県
紅葉見物にもぴったりの「RVパーク岩手山」
宿泊地としたのは、盛岡市内からクルマで50分ほどの「RVパーク岩手山」。岩手高原ペンション村内にあり、人気観光地「小岩井農場」からもすぐです。
続々と新規施設がオープンし、全国で470件を超えたRVパークですが、必ずしも目的地の近くにあるとは限りません。ルート上にない、交通不便、移動時間が無駄になる、などの理由で利用できないこともしばしば。だからこそ、目的地至近という幸運に恵まれたなら、私は積極的にRVパークを利用しています。
敷地内には電源ありサイト、電源なしサイト、ミニドッグランなどがあり、車外にテーブル&チェアを展開することも可能。車中泊では地面の傾きが気になりますが、駐車スペースはしっかり舗装済みでした。
屋外に水道設備があるほか、トイレは建物内のものを24時間利用可能です。
到着時にチェックイン手続きを済ませれば、チェックアウトは翌日10時までのあいだでフリー。自らも車中泊で全国を旅するというオーナーと、看板犬のクロちゃんが迎えてくれます。
すぐそこに山の気配が感じられる自然豊かな立地で、周辺にコンビニエンスストアや飲食店はありません。食料品を買いたい場合は、国道46号近くまで山を下りる必要があります。クルマで20分ほどかかるので、あらかじめ調達しておくのがおすすめです。
その代わり、1300年ものあいだ愛される名湯・網張温泉がすぐそこ。「休暇村 岩手網張温泉」ではバラエティに富んだ「網張五湯」を誇り、昼の時間に外来入浴が可能です。ホテル館内の大浴場のほか、野趣あふれる混浴野天風呂などが敷地内に点在。
このうち日帰り専用施設「温泉館」は平日17時、土日祝18時まで利用可能(大人600円/小学生310円)です。思わず「熱っ!」と声が出るお湯で、身体が芯から温まりました。
山の夜は静寂そのもの。ひんやりとした夜気が風呂上がりの熱気を冷ましてくれました。10月のこの日、シュラフにくるまればちょうど適温で、朝の短時間だけFFヒーターを稼働しました。
施設詳細
- 名称:RVパーク岩手山
- 住所:岩手県岩手郡雫石町長山岩手山22-394
- 料金:1泊1台2,500円(トレーラー、バスコンの場合は別途)
- 台数:電源あり5台ほか
- 備考:電源利用、ゴミ処理、シャワー利用などオプションあり
早朝出発で「雫石スキー場」へ
翌朝は夜明けとともに行動開始。早朝や夜間の出発では、フリーチェックアウト・システムはとても助かります。施設周辺でもすでに標高が高く、見事な朝焼けを見ることができました。
山道をクルマで20分ほど走ると雫石スキー場に到着。隣接する雫石プリンスホテルでロープウェーのチケット(大人往復2,200円/小学生往復1,500円)を購入しました。
現在時刻は早朝6時20分。なぜこんなに早く来たかというと、11月10日(日)までの期間「早朝出発 雫石紅葉ロープウェー」という特別運行があるためです。
営業開始が6時30分、下りの最終便が9時00分という朝限定の運行です。高倉山に沿ってゴンドラが上がっていくと、徐々に視界が開けます。
眼下に広がるのは姿を現したばかりの太陽と、雫石町を覆う雲海!
晴雨も雲海も人間にはコントロールできませんから、いつでも絶景とは限りません。この日は本当に幸運でした。180度のパノラマが展開し、かすみがかった稜線も美しい。
力強い朝日に照らされ、みるみるうちに雲海が晴れていくのがわかります。ゴンドラから見て左から右へ、風に吹かれるように雲が寄せられていきます。
同乗するスタッフの方がビューポイントを教えてくれます。周囲には木々が茂っているため、視界を邪魔されず景色を一望できるのは限られた時間。山頂駅舎でゴンドラを降りると、もう下界は見えないそうです。
景色を堪能できるようウィンターシーズンよりも低速で運行し、乗車時間はおよそ7分間。山頂駅舎に到着しました。
冬にはスキーヤーでにぎわう駅舎の周辺は、今は公園のようになっていました。ベンチやブランコが点在し、のんびり散策が可能です。デイタイムには愛犬と同乗できる「雫石紅葉ロープウェー&オータムウォーク」を運行し、ドッグランで遊べます。
また、日没後に運行する「雫石銀河ロープウェー」では星空観測ができます。貸出リクライニングチェアで「チェアリング」ができるほか、視界の悪い曇天時には大型スクリーンで星空投影も。
朝の時間帯は特段のイベントはなく、無人の高原が広がります。ふかふかの芝生は夜露に濡れており、土も草も木々も瑞々しい。清廉な空気を吸いながら歩くと、心身が洗われるようです。
残念ながら紅葉のピークはまだでした。この木々がすべて赤く染まったら、きっと息をのむほど美しいでしょう。
車中泊による紅葉見物の3つのメリット
東北地方は11月初旬までが紅葉シーズン。車中泊で紅葉観光に出かけることには、いくつものメリットがあります。私の考える大きなポイントは3つ。
柔軟に予定を立てられる
紅葉や桜など、見頃が毎年変動するような自然現象では、ホテル予約は一種の「賭け」になります。人気の宿泊施設は早々に満室となることもあるでしょう。
しかし今回利用したようなRVパークは、直前でも予約可能なことが多いです。これまでの経験では、京都・札幌・函館など人気観光都市の一部RVパークを除いて、満車で利用できないということはほとんどありません。(温泉施設に併設の「湯YOUパーク」では、宿泊客優先のためお断りされることがあります)
くるま旅クラブ公式サイトで「当日空き予約可」のマークがある場合は当日予約ができるほか、施設によってはインターネット予約&クレジットカード決済で24時間無人チェックインに対応することも。
ぎりぎりまで紅葉予報や天気予報を見ながら予約ができるので、柔軟な旅程を組むことができます。今週末は雨が降りそうだからやめておくか……といった様子見も可能です。
「ピークをずらした移動・活動」が可能
クルマで前泊することによって、多くの人が動く時間を避け、早朝や深夜に行動できるのも魅力です。
たとえばRVパークなら、所定の時間にチェックインをする必要はありますが、その後の入退場は自由であることが多いです。貸与品(電源ボックスの鍵etc.)は返却ポストに返すなど、早朝チェックアウトの仕組みが整っている施設もよく見かけます。
すでに目的地の近くまで来て車中泊をしていることが多いでしょうから、翌日は渋滞や駐車場待ちが発生する前から、いち早く行動できます。
過去にホテル泊をしていたときは、定刻よりも早くチェックアウトすることが「もったいなく」感じられたり、朝食時間にしばられたりしていました。車中泊を始めてから時間を効率的に使えるようになり、結果的に旅の満足度もアップしています。
毎回の旅費がリーズナブル
料金高騰が話題となる昨今のホテル事情。都内ではカプセルホテルでさえ1泊1万円近い上、予約が取りにくく驚かされます。
RVパークの利用料はだいたい1泊2,000円から5,000円ほど。クルマ1台ごとの料金のため人数が増えても変わらず、また休前日や連休でも同価格であることがほとんどです。
キャンピングカー購入という高額な初期費用があるため、「元がとれた」とまでは到底言えませんが、週末旅行のたび数万円の節約になっています。毎回の旅行が家計の負担とならないのは助かります。
直前でも計画できる、予約獲得に神経をすり減らさなくていい、宿泊費用が低額、といった特徴はフットワークを軽くしてくれます。秋の行楽シーズン、車中泊スポットを見つけてクルマでお出かけしませんか?