私がこの犬の存在を初めて知ったのは、幼い頃に見ていたアニメ『アルプスの少女ハイジ』に登場する、ハイジのおじいさんの飼い犬ヨーゼフがきっかけ。
ヨーゼフはいつもアルムの小屋の前で昼寝をしていて、ハイジに「ヨーゼフったら寝てばっかり!」とぼやかれるのんびりキャラクターとして描かれていました。
しかしセント・バーナードは本当にぐうたら(失礼!)なのでしょうか。そして超大型犬なのに、どういった経緯で山岳救助犬として名を馳せることになったのでしょうか。
セント・バーナードは、ハイジや動物コメディ映画『ベートーベン』で日本でもおなじみですが、日常生活で見かけることがほとんどないため、その故郷や救助犬としての歴史に関してはあまり知られていません。
ということで今回はセント・バーナードに関するクイズ4問!
【第1問】セント・バーナードの名前の由来は?
a)村の名前
b)暮らしていた施設の名前
c)飼っていた家族の名前
d)適当につけた
答えは「 b)暮らしていた施設の名前」でした。スイス南西部ヴァレー(ヴァリス)州の山岳地帯にある、標高2470メートルのグラン・サン・ベルナール峠には、11世紀から建っている同名の修道院があり、ここがセント・バーナードの故郷。そのためフランス語の修道院名を英語風にして「セント・バーナード」と名付けられたのです。
【第2問】修道院で犬たちを飼うことになった本来の目的は?
a)ペット
b)救助犬
c)番犬
d)野犬だったのを保護犬として引き取った
正解は「 c)番犬」。昔はスイスからイタリアまで峠を越えていく巡礼者が多くいて、修道院はそんな旅人たちの宿泊及び休息所になっていました。しかし峠で山賊に襲われる事件がたびたび起こったため、地域の人たちから譲り受けた犬たちを用心棒として飼うことに。
また、険しく危ない峠を歩いて越えていく時に、雪崩や吹雪で遭難する人も後を絶ちませんでした。しかし番犬として飼われていた犬たちが、雪の中で遭難した人を救助する能力を発揮、そこから山岳救助犬として活躍するようになりました。
この頃は様々な犬種の犬が飼われていたそうで、セント・バーナードはこれらの犬たちの交配から誕生したと言われています。
【第3問】スイスで最も有名な伝説犬、セント・バーナードの「バリー号」は現役時代、何人の人命救助をしたでしょうか?
a)5人
b)10人
c)20人
d)30人以上
正解は「d)30人以上」。バリー号(1800年~1814年)は、スイスでは誰もが知る伝説的セント・バーナード。救助犬として活動していた期間、40人もの遭難者の命を救いました。
現役を引退した後は峠を降り、ベルン州で晩年を過ごしました。現在はベルンの自然史博物館で、剥製のバリーに会うことができます。
バリーは、今のセント・バーナードと比べ顔や体つきが若干違って見えます。現在のセント・バーナードは体重が50~80キロほどあるそうですが、バリーが活躍していた時代のセント・バーナードたちは、40~45キロほどと今より小柄だったのだとか。
【第4問】セント・バーナードたちが首に付けている小さな樽の中身は何?
a)ラム酒
b)ウィスキー
c)ブランデー
d)何もなし
この答えはなんと「 d)何もなし」!セント・バーナードといえばお酒が入った樽を首から下げているのが“お約束”。しかし人命救助の際、食料を詰めた小袋を運んだ犬はいたものの、首にお酒の樽をつけて活動したセントバーナードに関する史実はないのだそう。フィクションだったのですね。
セント・バーナードの首に樽がつくようになったのは19世紀末から。マーケティング目的からだったようです。
さて時は流れ、ヘリコプターなど最新の救助技術を使用する時代になると、救助犬の必要性は減っていきました。修道院も修道士の減少・高齢化、加えて資金面の問題で犬たちを世話し続けることが困難となってしまいました。
現在セント・バーナードたちは専門の保護・繁殖施設で暮らしています。ここにはミュージアムもあり、セント・バーナードと地域の歴史的歩みや活躍ぶり、そして生活などが数々の展示品と写真、ミニシアターによって紹介されています。
また、有料ですがセント・バーナードとお散歩ができたりもするそうですよ!
1998年~2009年までアイルランドで暮らした後、2009年からスイス在住。スイス始め欧州の国々のさまざまな興味深い情報を雑誌やウェブサイト、ラジオ等のメディアにて発信中。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員