
オーストラリア中央部の中核都市アリススプリングス(といっても人口約2万6000人)から、オーストラリアの世界遺産と言われ、「グレートバリアリーフ」とともに思い浮かべる方が多いであろう巨大な一枚岩「ウルル(旧称エアーズロック)」の間に位置します。
で、一般的には「ウルルまで直接車で行っても5時間かかるから途中寄ってく?」といった扱い。まあ、相手が世界遺産ですから分が悪いのは当然です。で~も。この「キングスキャニオン」、まさに王様級に楽しかった~。
どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
【ウルル旅1】無茶苦茶変化に富んだ超絶愉快なトレッキング!
キングスキャニオンはアリススプリングスの西に位置し、車で約4時間半の距離(このあたりは鉄道などはないのでツアーに参加するか自分でレンタカーを運転するしかありません)。ウルルにいく最短距離のルートとは別の道を行きます。
ちなみにここからウルルへも3時間半。つまりアリススプリングスから直接ウルルに行くよりも3時間の寄り道になります。
ここにはいくつかのトレッキングコースがあるのですが、いちばんメジャーなのは「キングスキャニオン リムウォーク」。距離はわすが6キロメートルで、所要時間が3~4時間。難易度が5段階中上から2番目の4になっているので、それなりにアップダウンがあります。

スタート地点です。建造物は「ハリモグラ」を模しているのとこと。崖の上から見たら確かにそんな感じでした。
では本日の相棒を紹介しましょうかね。ガイドのタクさんです!

スタート地点のルートマップを説明するタク。

標識もルートによって色分けされています。
歩き始めてすぐに表れるのが、こんな長い登りです。

約500段あるとのこと。

…けどこの階段で500段ってどう数えたのか疑問ではありますが。笑
ちなみにタクの説明ではこのコースのスタート地点の海抜は約500メートルで、標高約650メートルまで上がるとのこと。でもこのスタート地点ののぼりがいちばん急で、上に着いたあとは多少の登り下りはあっても比較的フラットだそうです。
そして一方通行。急坂を下ると転倒の危険が高くなるのと、双方向にして混雑するのを避けるためだそうです。
そんなこんなで最初の長いながい階段状の部分を登り終えると…。

「火口」のように見えますが「キャニオン」つまり「渓谷」なので、砂岩を水と風が削ってできた地形です。
いわゆる「お鉢巡り」のような感じで、渓谷を見ながら歩きます。絶景かつスリリング! 最初は「すっげえ」を口から連発していたのですが…。
このルートの名前は「リムウォーク」です。「リム(rim)」というのは「丸いものの淵」くらいの意味で、火口のまわりの「お鉢巡り」もよく「リムウォーク」と呼ばれます。それでてっきりこのルートも崖の淵を延々と歩きつづけるのかなあ、それだと退屈かなあと、まあ欲張りに思ったりもしました。
単調な「お鉢巡り」と思いきや…
ところがこのコース、本当に変化に富んでいるのです。

特に雨のあとだったので水たまりなんかもできていました。
写真の前方、Vの字になっているところは、ドァラグクイーンたちが主人公のオーストラリアの名作映画「プリシラ」の名シーンの撮影場所だとか。ただ日本人にとってはこの「キングスキャニオン」、ドラマ「世界の中心で愛を叫ぶ」の撮影場所とお伝えしたほうが、親近感がわくかもしれません。

突然「UFOの着陸基地か!」と思えるような真っ平らな空間が現れたりします。
ここでタクが最近欠けたばかりのような小さな岩をひっくり返します。

「他は赤い岩なのにここだけ白いでしょ?」とタク。
このあたりの砂岩はもともと赤ではなく白っぽいのだそう。ところが表面は空気(酸素)に触れ続けるので酸化して色が変わったそうです。鉄分は酸化して赤に、マグネシウムは茶色になるのだとか。
なるほど…と感心しながらもふと気になったことが。タク、スポーツタイプとはいえサンダル履きじゃん! いや、それ以上の注目ポイントが!

指にご注目!
はい、一本一本の指に「THINK TWICE」、「もう一度考えてみろ」の文字。子どものころから失敗を繰り返し、父親からもっとも言われたフレーズは「ほら、言わんこっちゃない」だった私はとても他人とは思えません。笑
そんなタクですが、植物とそれをアボリジナルピープル(アボリジニという呼称は差別的とのことで使われなくなっています)がどう利用したかなども詳しく説明してくれます。

「この草はつぶしてヴィックスみたいに咳止めなんかに使うんですよ~」とのこと。
その説明が「ん?」と引っかかりました。こういうときオーストラリア人のガイドは「ストレプシルスみたいに」と表現します。オーストラリアでよく使われているのど飴の代表的なブランドです。
で、なんでヴィックスと表現したのか聞いたところ、じつは彼、南アフリカ生まれで、そのあとアメリカに住んでいて、オーストラリアに来たのは数年前とのことでした。
そんな「人に歴史あり」的なおしゃべりができるのもガイドと歩くトレッキングの愉快なところです。

これは「ブッシュトマト(Bush Tomato)」です。
つまり野生のトマト。9種類あってそのうち3種類食用になるのですが、これは毒があるとのこと。
植物の説明の中で特におもしろいと思ったのがこの小さな草。

タクによると「リズレクションプラント」(復活生物)の一種だそうです。
茶色になって枯れてしまっているように見えるけど、じつは生きていることもあるそう。そして雨が降るとこのように緑色になるのです。植物強し!
さらに変化に富んだコースを進んでいきます。

「他の惑星」感満載の風景。画面右奥が渓谷。

渓谷の一番狭い部分にかかった橋。

そこからの絶景です。
「エデンの園」はまさかの…
しばらく進むと「ガーデンオブエデン」、つまり「エデンの園」まで600メートルという標識が見えてきました。

気になる地名です。…いや、別にきれいなお姉さんがスッポンポンでいるとか期待したわけではなく。

「エデンの園」に到着しました。しかしそこは…。

「エデン」じゃなくて「スチューデント」の園状態。笑
林間学校的なものなんでしょうね、きっと。とはいえちょっと待っていると学生たちは去っていき、静寂が訪れます。

ずっといたいような場所。だから「エデンの園」なのかな?
このあたりは準砂漠気候。こんなふうに池になっているところもあります。そして水がある場所は植生が豊かだし、動物たちもやってくるとのこと。
さきほど橋で渓谷の反対側に渡ったのでこれからは帰り道ですが、まだまだ見どころ満載です。

タクが「渓谷を間近に見られる最後の場所」と教えてくれたところ。

まるで工具のサンダーで磨いたような絶壁です!
この断面を「クリーンフェイス」と呼びます。これは水や風で風化したのではなく、砂岩がスパッと崩壊したあと。

右側の壁面はなんと垂直以上の角度です。
上の写真の中央やや左寄りの白い部分は、2016年の最新の崩壊でできたもの。なぜそこだけ白く見えるかは前に書いた通りです。
名残惜しいですけど先に進みます。

立派なソテツを発見。タクによるとなんと「1000歳くらい」とのこと。
ソテツを見る度にアリススプリングスのガイド氏を想い出します。
進行方向左に渓谷が見えてきました。「位置関係、おかしくない?」と思ったら、キングスキャニオンとは別の渓谷とのこと。

ここでは「こだま」が楽しめます。はい、「頭は5歳」くんは当然率先して叫びましたよ。
鳥もいました。「スピニフェクスピジョン」という種類だそう。和名は「ショウキバト」です。

「保護色」に絶対の自信を持つのか、1メートルほどの至近距離だというのに警戒心はゼロレベルです。
てなわけで無事、4時間のトレッキングを終えました。

むちゃくちゃ気のいいお兄ちゃんでした! あとじつは四国の「お遍路」経験者。…先を越されました。
さて最初のほうでお伝えした通り、キングスキャニオンはアリススプリングスからもウルルからも車で約3時間半(休憩時間を考慮せず)。3~4時間のトレッキングをするとなると、ここで宿泊するのが無理のないスケジュールです。
で、宿泊したのが「ディスカバリーリゾーツ キングスキャニオン」。キャンプサイトから窓際にバスタブ付きの豪華な部屋までありますが…。

はい、最も豪華な部屋です。

窓際にバスタブ!
日本だと「露天風呂付客室」とかよく見かけますが、オーストラリアだとかなり珍しいです。というかそもそも高級ホテルでもバスタブがないことも多いです。
あとここでは早朝、夕方、夜に「ライトタワーズ」という光と音のインスタレーション(総合芸術)も楽しめます。

人の背よりも高いライトのまわりを歩きます。
とはいえこの日はかなりの雨で、早々に退散しました。涙
とにかく! 「ちょっと寄り道」と思っていたキングスキャニオンが王様級の楽しさ。となると「ラスボス」であるウルル(旧称エアーズロック)はどうなるのか。期待が膨らみます
【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら!
ノーザンテリトリー政府観光局
https://northernterritory.com/jp/ja
Discovery Resorts Kings Canyon
https://www.discoveryholidayparks.com.au/resorts/kings-canyon
