捨てられる命
少しずつ風が冷たくなり、やっと秋らしい風が吹くようになってきましたね。今夏も厳しい暑さが続き、涼しい早朝は竿を振るたくさんの釣り人を港で見かけました。
鹿児島県本土西岸に位置する南さつま市では毎年、夏に黒潮が入り水温が上がると大型魚のシイラの群れが沿岸へ近寄ってきます。
シイラは熱帯から温帯域に生息し、成魚は体長2m程、体重40㎏ぐらいまで成長すると言われています。
見た目もユニークで、おでこがあるような頭にスッとした長い体がカッコイイです。私も釣ったことがありますが、引きも力強い魚です。
潜水中に水面を見上げると稀に群れで泳ぐ姿を見かけますが、泳ぐスピードが早く、すぐに通り過ぎていきます。
涼しい早朝はあっという間に過ぎ、釣り人たちは、陽が昇る頃にはいなくなりましたが、ふと、堤防付近に目をやると、港には打ち捨てられたシイラの死骸が転がっているではありませんか。
ごく一部の釣り人の「引きを楽しむだけ」の行為の果てに、このようなことが起こるのは残念でなりません。
さらに、港の浅場にはさばかれたシイラが海底に沈んでいました。
実は私たちもしてしまいがちな、その場で内臓や頭を切り落とし海に捨てる行為も「不法投棄」にあたり、一般廃棄物になります。釣れた魚はきちんと持ち帰り、捌いたあとは新聞紙などで包み、ビニール袋に入れ生ゴミとして廃棄するようにしましょう。
魚は自然のもので、自然に返すという意味合いの方も多くいらっしゃると思います。実際には海底で死んでいる魚は、他の魚が食べて栄養になっています。
しかし、自然死した命が繋がっていく出来事とは大きな違和感を感じずにはいれません。
港で魚を捌くという行為が、次に港を利用する方にとって迷惑にならないかを考え、豊かな海があり、魚がいるから釣りを楽しめているという思いで魚の命に感謝し、釣りを楽しむべきではないのでしょうか。
人生ならぬ魚生
皆さんは釣り上げた魚や魚屋さん、スーパーなどで魚を見て、この魚がどんな経験をして生きてきたのだろうか、と気になったことはありませんか?
どこで生まれ、どんな海を泳ぎ、何を食べ、どんな景色を見てきたのだろうか。
今回のテーマのシイラは鹿児島本土では5月~10月に幼魚を見かけます。
大きさ2~8cm程、きっと、いろんな困難を乗り越え、成長し食物連鎖の上位に登っていく彼らの最後が「捨てられる命」では、あんまりだと思いませんか……。
陸編
港の脇にある溜水では、初夏〜夏にオタマジャクシからカエルへ成長する姿が見られます。港で生活している生き物たちは、きっと人間の行動も見ているかもしれませんね。