アマゾン川の始まりは、湖みたいに広かった
なんだか湖みたいに見えるこの場所こそ、アマゾン旅のはじまりの地点。
ここまで下ってきたウカヤリ川は、上の写真左の方向にあります。ここに右の方から合流するのがマラニョン川で、二つの川が合体すると名前がアマゾン川に変化します。
二つの川が合体して川幅と水量が増えたことに伴い、漂流物がぐんと増えました。浮草同士がくっついて小さな島を形成しながら流れていることもしばしば。
そういった浮草の島の下には流木が隠れていたりするから、船外機の取り扱いには要注意。気を付けていても、草の根っこがスクリューに絡まってしまったりするので、たまに止めて取り除きます。
私にとって、世界中どの川に行っても変わらない楽しみの一つは、野鳥を探しながら川を下ること。
浮草の島で、羽を休めているサギを見つけました。以前カヤックで下ったミシシッピ川やドナウ川でも、同様の景色がありました。自然の営みはどこも同じようなものなのだと思うと、初めて旅する場所でも前に来たことがあるみたいな気持ちになって、ホッとするのです。
川の風を感じながら昼寝をすることも、世界共通の川下りの楽しみ。今回は二人旅だから、交代で船外機を操縦すれば、仕事のない一人はゴロゴロすることができます。救命胴衣を枕代わりに横になると、舟の揺れがまるでゆりかごのみたい。気持ち良いなあ。
イカダの上にテントを張ってみた
アマゾン川は地元の人たちにとっては大切な観光資源でもあります。船着き場代わりのようなイカダが浮かんでいるのを見つけましたが、これはアマゾン川のボートツアーや宿泊用のロッジを営んでいる近くの村の持ち物。管理人のおじさんに声をかけて、イカダの上にテントを張らせてもらえることになりました。
ちなみに、地面からたくさん突き出ている木の棒は、係留するときにロープを結ぶためのもの。
隣の船と比べるとペケペケ号が小さく見えますが、私たちがこの旅を始めたプカルパではペケペケ号のようなやや細身の木舟がスタンダードでした。ところがアマゾン川に入って川が大きくなると、安定性の高い横幅のある木舟が目立つようになったのです。
川に浮かんだイカダの上にテントを張ると、風を遮ってくれるものがありません。テントが飛ばされないようにペグを打ちたいところですが、イカダには打てないので、床板の隙間にヒモを通して、テントと結びつけます。大きいイカダなので、揺れは案外気になりません。テントから出て2歩で川に飛び込める絶好のロケーションです。
え?こんな茶色い川で泳ぎたくないって?
いえいえ、泥水でも水浴びすればスッキリするんです。石鹸が使えない代わりに、全身からアマゾンが香るようになります。
アマゾン川の二つ星ホテルを訪ねてみた
私たちがテントを張らせてもらったイカダを管理している宿泊施設について、グーグルマップで検索すると、二つ星ホテルという表記を見つけました。本当にこんなところに星付きホテルがあるの?っていうか、ホテルを格付けする星ってどういう基準で与えられるの?よくわからないまま、訪ねてみることにしました。
二つ星ホテルへ続く道は、長い一本の遊歩道。私たちが訪れた7月頃は、アマゾン川の乾季の始まり。地面がひび割れているように見えますが、まだ乾燥しきっていない泥で、踏むと足が埋まってしまうこともあります。
乾季と雨期で水位の増減があるアマゾン川だから、宿泊施設は船着き場からやや離れた安全な場所に建てているそうです。
これが二つ星ホテルの評価を受けた、Libertad Jungle Lodge(リベルタッド・ジャングル・ロッジ)。 ホテルの星や格付けにはいろいろな基準があります。この施設の星はグーグルマップに登録された宿泊施設が、審査に応じてグーグルから与えられる星でした。アマゾン川流域で星付きの評価を得ている宿泊施設はほんのひと握りです。
ここでは英語が話せる現地ガイドさんが案内するジャングルウォーク、モンキーツアー、夕日のクルーズなどなど、様々なアクティビティが用意されています。入り口にたくさん長靴が干してあるのを見るに、ツアーで泥の中を歩いた人たちがいるようです。
私もこの旅を始めたころはきちんと靴を履いていたけれど、「どうせ何を履いたって全身汗だくの泥だらけになるんだから」と、裸足で歩くようになってしまいました。
建物はすべて高床式。雨季で川の水位が高くなると、建物のすぐ下までボートで乗り付けることができるそうです。寝室がある小さな藁屋根の離れが空中廊下で繋がっている風景は、映画さながらの異国情緒があります。
アマゾン川には、ラグジュアリーよりも非日常を体験したい観光客が世界各国から集まります。だから日中はみんなツアーに出払っていて人がいません。建物の中は、壁も床も木のむき出しの簡素なつくり。
なんだか私の母方の実家、東南アジア・フィリピンの家を思い出します。もちろん貧乏だから、こんなに広くて立派な家ではないけれど、窓ガラスがなくて家の中と外の境目が曖昧なのが、おおらかな気持ちにさせてくれます。建物って、インドアの生活とアウトドアの生活を分けるものであると同時に、繋げてくれる存在でもあるのかもしれません。
近づくマキシーちゃんとの別れ。そして、食べまくった屋台飯
【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.1】から一緒に長旅を共にしてきたマキシーちゃんは、次の町イキトスで飛行機に乗って、ベルギーの家族に会いに帰国します。
だからこの日は、二人で一緒にペケペケ号で夜を過ごす、最後の日。タンスイヤクという町に移動して、夜市でご飯を買ってきました。最後に、食べたいものを食べたいだけ食べるのです。
フライドポテト、茹でバナナ、スバゲティ、目玉焼きが乗ったチャーハン、スープ。
これだけ買っても合計500円以下。安くて美味いは、親友と食べるともっと美味い。
私たちの舟旅のお供は、ラム酒。直瓶で回し飲みをすると、気分は小さな海賊団。お酒も回って、ガールズトークに花が咲きます。アマゾン川に突入したのは、私たち二人の旅の終わりであり、それぞれの旅の始まりでもあるのです。私はこのあと、新しい旅の相棒を探して旅を継続します。
一方、マキシーちゃんはかれこれ6年間生活してきたペルーに一旦別れを告げて、生まれ育ったベルギーへ帰ります。仲の良い友人たちが、結婚と妊娠ラッシュに入ったからです。みんながお母さんになる前に、最後に一度、全員で独身のような女子会を謳歌するそうです。
「もー、みんな結婚しちゃって。私だけ取り残されちゃったのよ」とマキシーちゃん。
「日本は少子化問題があって、私も産んでないからちょっと責任感じちゃうんだよね」と私。
先に進むには、まず相手が必要だよね。子供を持つってどんな感じだろう?アマゾン川下りなんて派手な旅をしているようで、私たち二人の悩みは一般的です。
次回紹介するのは、アマゾン川の玄関都市・イキトス。ここの空港からマキシーちゃんはベルギー行きの飛行機に乗るのですが、その前に、二人で最後の街ブラに出かけます。イキトスには「魔女市場」があるらしいのです。果たして一体、なにが売られているのか?お楽しみに。