CONTENTS
マツダ CX-80は、マツダの新しい大型SUVです。2022年に登場したCX-60を3列シート化した兄貴分的存在です。
パワートレインは
- 3.3リッター直列6気筒ディーゼル(XD)
- 3.3リッター直列6気筒ディーゼルのマイルドハイブリッド版(HYBRID-X)
- ガソリン2.5リッター4気筒プラグインハイブリッド(PHEV)
の3種類。全モデルで4輪駆動(AWD)が選べます。
外観デザインが特徴的で、曲線と曲面が巧みに組み合わされ、単純なように見えて複雑な造形が施されています。ボディカラーも映えて美しく、見飽きることがありません。マツダの追い求めている「鼓動デザイン」が実を結んでいると言えるでしょう。
プレスリリースには、「上質な移動体験、社会課題への対応、すべてを妥協しないマツダのフラッグシップSUV」とありますが、どうでしたでしょうか?
ガソリンPHEVとディーゼルマイルドハイブリッドに試乗
徳島空港から鳴門大橋を渡って神戸に向かい、翌日に同じコースを戻ってきました。往路はガソリンPHEV版に、復路はディーゼルのマイルドハイブリッド版です。
CX-60の時にも感じましたが、乗り込んですぐに馴染める操作系統はCX-80でも変わらず、美点のひとつとなっています。マツダだけでなく、他メーカーのクルマに乗り慣れている人でも戸惑うことなく操作できるでしょう。
ただ、それと表裏一体のこととなりますが、その分、サプライズやときめきや個性などが薄口になっています。クルマの外観には見惚れるものがあるのですが、それとは対照的にインテリアはごく常識的なのです。
それは造形や素材づかいだけのことではなく、多機能な現代車であるCX-80の「ドライバーインターフェイス」、つまり使い勝手を、いかに知恵を絞って良くしようとしているのかが窺えないからです。
具体的には、2024年に登場するクルマにしてはボタンやレバーが多く、煩わしい。エアコンの温度設定と風量設定がレバーになっているわりには使いにくい。ボタンやレバーなどは集約してセンターパネル内に階層にまとめたほうがスッキリするし、使いやすくなるはずです。すでに多くの他車はそうしています。
CX-80はセンターパネルも小さく、画質も良くありません。
さらに、インテリアの造形と色、素材づかいに多くのものを使い過ぎて煩わしく感じました。持てる素材とできることを全部入れ込んだことで満足してしまっています。プレミアムを標榜するならば、もっと減らさないと高級感から遠ざかっていくばかりです。それを意識的に推進しているのが近年のランドローバーです。「リダクショナリズム」(還元主義)というキャッチフレーズを掲げて、インテリアのミニマル化を進めています。装飾を削りに削った先の美が求められています。
長所を生かしきれていないPHEV、パンチに欠けるディーゼル
2列目と3列目シートをたたむと、広大な荷室が出現します。このスペースだけでもCX-80を選ぶ理由になるくらい広大です。
シートは電動式と手動式があるので、使い方に会わせて選ぶと良いでしょう。
ガソリンPHEVは、モーターならではの力強い加速やEVモードでの静粛性の高さなどの長所を活かしきれていないようでした。
また、復路でのディーゼルもディーゼルならではの低中速域でのパンチが弱く、淡白な加速感に終始していました。
ガソリンもディーゼルもそれぞれの特徴が活かされていればプレミアム感に結び付くのでしょうが、凡庸とした印象しか残りませんでした。
乗り心地や運転支援機能はどうか?
乗り心地や操縦性なども、舗装の良い路面ではまったく問題なく快適そのものです。しかし、凹凸が大きかったり、舗装が荒れていたりする路面では揺れやショック、ノイズなどが抑えきれずに車内に伝わってきています。その点でもプレミアムとは言い難かった。
高速道路で使ってみた運転支援のためのレーンキープアシスト機能も働きが弱めでした。もう少し敏感に感知して、効き方も強めたほうが長距離でドライバーの負担を減らしてくれるのではと思いました。
走行モードに「INDIVIDUAL」や「PERSONAL」などのモードが設けられていない点もプレミアム車としては不満でした。CX-80は最大で7人乗る場合があるので、走り方も乗車人員数に合わせて変えていきたいからです。
ボタンやレバーの多さと関連しますが、音声入力で操作できる項目が少ないことも弱点のひとつになっています。これからもますます多機能化していくクルマをいかに安全かつストレスなく操作できるようにするかが開発陣には問われていて、そのために多くのライバル車はセンターパネルに収めて階層化したり、音声入力操作の性能を上げようとしているのに、CX-80からはそうした問題意識があまり感じられませんでした。
金子浩久の結論:価格はプレミアムだが、今後解決すべき課題がある
CX-80はグレードやオプション装備によっては700万円を超えることにもなるので、価格はプレミアムそのものです。その意気込みは大いに感じられたのですが、同時に課題も認められました。今後に期待したいです。