軽キャンピングカーで、地球半周中の放浪夫婦です。
稚内からサハリン島へ渡り、シベリアの大地を西へ。モンゴルで道草し、中央アジアからイランを経てコーカサス地方へ入りました。ゴールは、南アフリカの喜望峰。ガイドブックにない隠れたパワースポットで力を蓄え、マイ秘境を探しています。
男ならピアスをするな、妻に金を渡すな!
イランを北上し、アルメニアへ。カスピ海と黒海に挟まれた小さな国です。国境事務所に祀られているのは、なぜか、ロシアの元大統領プーチン。社会主義的官僚風情係官の第一声は、
「男のくせにピアスをするな、すぐに外せ!」
す、すみません……。
ビザ代を払うときに、金は妻が持っていると応えたら、
「なぜ、ワイフにお金を渡すんだ!」
家計は夫が管理するものだと、説教されたでござる。
ノアの箱舟が流れ着いたエデンの園
日本人にとってはどこの馬の骨かわからない国アルメニアですが、アダムとイブが戯れていたエデンの園です。ノアの箱舟が流れ着いた聖なるアララト山もアルメニア。残念ながら山はトルコに奪われましたが、イエスの脇腹を刺した槍が残っています。人類がりんごを食べる前からのパワースポットというか、史上初のパワースポットです。そこはかとなく、力が漲ってきました。
成り下がった失楽園
紀元前は、ワインの発祥地としてバベルの塔にワインを輸出していた大国、アルメニア。戦争に負け、今は貧乏な失楽園。若者はロシアに出稼ぎに出かけ、そのまま戻って来ません。爺さんと婆さんのサンクチュアリは、 生きながらにして廃墟です。
彩りのない崩れかけた町並みは、どこまでも行っても地味。営業中のレストランですら看板ひとつなく、下の写真のありさま。
来るものを拒むかのような隠れ家風で、ウェルカム感ゼロ。メニューすらありません。
寂びた錆びが美しい放置自動車
華のないアルメニアですが、路傍に清貧の美を発見。
至るところに捨て置かれた車です。錆び寂びの荒廃美は、アルメニアの名物。酸化することに意義あり。
華やかなりし、洗濯もの
ネオンサインすらない野暮ったい町に、色とりどりにたなびく洗濯もの。団地から団地に伸ばした、ギネス級に長い物干し。華やかです。若人は見かけませんが、毎日がこどもの日。
洞窟住居
地元民が、強盗はいないけれど犬が怖いという田舎町、ゴリス。片目の野良犬が、頼みもしないのに洞窟住居群を案内してくれました。21世紀の今でもまだ、普通に洞窟暮らしをしているギャートルズです。
岩に食い込んだ家。入り口は道路に面したグランドフロアなので、2階建の洞窟です。
洞窟内は20畳くらい。お父さんが1年かけて掘った手彫りです。天井の照明から、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、パソコンとなんでもあり。縁もゆかりもない名も知らぬご家庭で、お菓子とお茶をご馳走になりました。
シルクロードは雪の峠越え
その昔、アルメニアの商人がラクダで越えたシルクロードの峠。49馬力の軽自動車でお邪魔します。
シルクロードの看板以外は、ガードレールや標識の類はありません。すれ違う車も追い越す車も滅多になく、吹雪になったら遭難すること間違いなし。細い轍が命綱です。
雪山を望む、湖畔のアウトドア
雪の峠を越えた日は、湖畔でキャンピング。1,900メートルの高地に浮かぶセヴァン湖。対岸に横たわる雪山が圧巻。観光客はゼロ。
夕方、マス漁に繰り出す漁師を見送りました。琵琶湖の2倍もある湖は、ソ連時代の無茶な灌漑がたたり、水量が7割も減っています。
アルメニアビザの滞在期間は、たったの21日間。どういうわけか、車はさらに短い15日間です。格好のキャンピング地がたくさんありそうですが、2週間足らずでは遊びきれず。
※2017年9月から、ノービザで180日間滞在できます。
【アルメニア・ドライブ情報】
アライバルビザ:3,000ドラム(750円/滞在期間は21日間
車の税関代/滞在期間:25,000ドラム(5,000円)/15日間
車両保険:12,000ドラム(2,730円)
アウトドアなロケーション:セヴァン湖
SIMカード:ひと月間使い放題(15,000ドラム/1,776円)
道路状況:舗装
最新国境情報:Web site「The Silk Road Travel Guide」https://caravanistan.com/border-crossings/
警察官:賄賂請求なし
次回は、長期旅行者に天国と呼ばれるジョージア(旧名グルジア)。プチ移住を決意しました。家を探します。
石澤義裕・祐子
住みやすい国をリサーチしようという話から2005年から世界一周をスタート。アメリカ、カナダなどをスクーターで旅行し、オーストラリアをキャンピングカーで回ったのをきっかけに2015年の夏から軽キャンピングカーで旅を始めた。