連載【漕いで、釣って、食べて】カヤックフィッシング奮闘記Vol.48
昨年も何度かヒラメを狙ったが、未だにカヤックで釣り上げたことがない。しかし諦めず今年も挑んでみることに。釣り方はこれまでと同じ「キスの泳がせ釣り」。まずはちょい投げ仕掛けでキスを釣り、それを生きたまま泳がせて大物のヒラメを狙う方法。もちろんカヤックでも出来る。そんなわけで早朝、逗子海岸からポイントへ向かう。
ちなみに3月に怪我をして入院していたので、これが久々の釣行になる。カヤックで海に出て釣りをするのは、やっぱりワクワクする。魚探を見ながらポイントを選び、好きなところで釣りが出来るのことに喜びを感じる。まずは水深13メートルくらいの砂場で、キスを狙う。
が、なかなかキスが釣れない。餌のアオイソメを投げればキスくらいバンバン釣れるだろうと思いきや、この日はアタリがない。キスは絶対いるはずなのに。そのとき、同行してくれている「マリンボックス100」の沼野さんにキスがヒット。あげようとしていると、突然ドラグが鳴り、ラインが出ていく。
明らかにキスの引きではない。針にかかったキスを「何か」が丸飲みしたようだ。竿が大きくしなるが、そこでラインブレイク。キスの仕掛けのままだったので、切れてしまう。恐らく犯人はマゴチかヒラメだろう。残念がる沼野さん。
これはチャンス。ターゲットは、近くにいる。タイミングよく、ちょうどキスが釣れる。急いでもう1本の「泳がせ」の仕掛けに付けて流す(そのため画像なし)。そちらの仕掛けはラインが太いので、大物が来ても切れる心配は、ほぼない。が、待てど暮らせど全然来ない。
時間だけが過ぎていく。数時間、何もない。釣れたキスを泳がせているが、ヒラメはなぜ食べてくれないのだ。今日もまた駄目か……と、諦めかけていたときだった。突然ドラグが「ジーッ!!!!!」と音をたてて、ラインが出始めた。おぉ! 遂に来たかっ!!
慌ててロッドを持つと、強烈な重さが伝わってきた。もしかして根掛かりか?と思うほどだったが、ググググーと生命反応が。リールが巻けないほど重い。ロッドもしなりまくる。これは、なんだ? ヒラメだとしたら、とんでもない大物に違いない!
が、途中でおかしいと気づく。ヒラメがこんなに重たいわけがない。この重量感、過去の経験からすれば……、嫌な予感がする。なかなか巻けないリールと格闘すること、10分ほど。ようやく姿が見えてきた。やはり、君だったか。
キスを食べたのは、エイだった。重たいわけだ(水の抵抗のせいで)。見事に口に針がかかっていたので、外して逃してやる。君を狙っていたわけではないのだよ。ごめんね、エイ。
ひと息ついていると、キスを狙っていた仕掛けに、明らかにキスではない強烈なアタリが。おいおい、今度は何だ? すると浮いてきたのは、ウネウネしたやつだった。
君は、アナゴか? 何で狙ってない奴ばかり来るんだよ。寿司のアナゴは大好きだが、自分でさばいて手間暇かける自信はまったくないので、逃がす。じゃあなー、元気でなー。
その後は何も起こらず、釣り終了。結局、またヒラメの姿は見られなかった。ま、こんな日もある。釣りはこんなものだ。ただ、久々にカヤックで海に出て釣りをするのは、やっぱり楽しいものだった。狙った獲物はまったく釣れなかったが。
連載【漕いで、釣って、食べて】カヤックフィッシング奮闘記
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穴澤 賢(あなざわまさる) 1971年大阪生まれ。2005年7月から愛犬との暮らしを綴ったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイ、コラムなどを執筆するようになる。著書に「またね、富士丸。(集英社文庫)」、「明日もいっしょにおきようね(草思社)」、「また、犬と暮らして(世界文化社)」、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック「Another Side Of Music」(ワーナーミュージック・ジャパン)などがある。 株式会社デロリアンズ代表。 Blog:「Another Days」
取材協力:MARINE BOX100
逗子市新宿2-14-4
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