こんにちは、子連れライター渡部郁子です。年長さんになった息子を連れて、山やフェスや温泉を巡っています。最近は荷物を運んだり、作業を手伝ったりと、アウトドアでは何らかの役割を見つけて、「僕だってできるもん」とアピールしたがる息子。今回は、親子で川を掘りに、秘湯旅へ行ってきました。
長野県の際奥地、目指すは切明温泉
秋山郷と名付けられた長野県の秘境には、豊かな自然に囲まれた温泉地が連なっています。冬は豪雪に閉ざされる地域。その昔、戦に敗れた平家の落人が住み着いたとされ、今では限界集落と言われながらも、四季折々の豊かな自然を感じられる秘境として、夏は観光客の多い地域でもあります。中でも最奥に位置する切明温泉は、中津川の河原から湧出する天然温泉で知られています。
秘境の温泉宿へ
温泉が湧出する河原の近くに、2軒の温泉宿があります。ひとつは村営の宿「湯元雄川閣」。もうひとつは「切明リバーサイドハウス」。どちらも河原の温泉を引いた源泉かけ流しの湯と、地域の食材を生かした山の恵み満載の料理が人気の温泉宿です。宿を拠点に、川遊びや登山、温泉を満喫する滞在が可能です。今回は「雄川閣」に宿泊。
宿泊者はスコップ貸し出し無料
スコップを持参するかどうか迷ったのですが、宿泊者は宿のスコップをお借りできるとのこと、ありがたくお借りすることにしました。水着に着替えて、スコップを持って、宿のすぐそばを流れる中津川の河原へと続く道を降りて進んでいきました。
湯けむりが上がる川面
河原に到着すると、湯けむりが目の前を流れていきます。川に足を浸すと、ぬるま湯のような温かさです。川の中をザブザブと進んでいくと、水と温泉が層になっているところもあり、熱くて冷たい川の中を「あつっ、つめたっ」と言いながら、ちょうどよさそうな場所を探します。
誰かが掘ったぬるめの露天風呂に、少しお湯を足してマイ温泉を作ることにしました。川の底からコポコポと湧いてくる水とお湯の流れを見渡して、どこからお湯を引き、どこを埋めて温度を調整するか、考えます。
いよいよスコップの出番
方針を決めたら、あとは掘るのみ。6歳の息子は、自分の背丈ほどもあるスコップを持ち上げて、楽しそうに砂利を掘り始めました。ぬるい水の流れのほうから、おたまじゃくしが数匹流れ込んできたのを見て、「危ないよ、ゆだっちゃうよ」と言いながら、スコップで水路を作り、急遽、おたまじゃくし救出作戦。大自然の中で遊ぶ楽しさを大いに満喫していました。
マイ温泉の完成
浅めの浴槽が完成し、ゆっくり腰を落としてお湯に浸かると、森の木々の緑がまぶしく目の前に広がりました。全員救出したつもりが、一匹残っていたおたまじゃくしが息子の足をつついています。くすぐったそうな顔をして、「逃がしてあげるからこっちにおいで」と追いかける息子の手をするりと抜け出して、温かい湯の中をすいすい泳ぐおたまじゃくし。おたまじゃくしも、冷たい川の水より、温かい温泉のほうが気持ちいいのでしょうか。
地域の食材を生かした夕食
温泉を掘って、一通りの川遊びも済ませたら、宿に戻って夕食です。秋山郷を含む栄村は、お米のおいしい地域。おいしいごはんと味噌汁と、地の食材と新鮮な野菜が並び、何よりも勝るぜいたくなごちそうでした。
露天風呂と内湯もかけ流し
宿には、家族で貸切利用ができる混浴の露天風呂と、ぬるめの温度で入りやすい内湯があります。河原の温泉と同じ泉質で、保温効果のある塩化物泉と、肌の蘇生効果を高める硫酸塩泉の特徴を持つ美肌の湯です。
何度も来たくなる温泉
次の日も、スコップを持って河原に温泉を掘りに行きました。6歳の息子は大喜びで、スコップを振り回していました。360度自然に囲まれた川の露天風呂に浸かりながら、「まだ来たい」と心から思った温泉でした。
切明温泉 湯元雄川閣
長野県下水内郡栄村切明
http://www.miy.janis.or.jp/~yusenkak/
渡部郁子(わたなべいくこ)
フリーアナウンサー/ライターJFNラジオ「JOYFUL LIFE」(http://www.jfn.jp/RadioShows/joyful)パーソナリティほか、アウトドア、温泉、音楽をテーマに様々なメディアで情報を発信中。生後3か月でフジロックに連れて行った息子と一緒に、子どもと楽しむアウトドアスタイルを実践中。https://watanabeikuko.jimdo.com/