「氷柱」は読み方によって意味が変わる
氷柱と聞いて、どのように読むべきか悩む人もいるかもしれません。正しい読み方ができるように、意味を詳しく見ていきましょう。
「つらら」と読む場合
氷柱の読み方の一つは、『つらら』です。漢字それぞれの読みをつなげるのではなく、2文字以上の熟字に決まった読み方を当てた『熟字訓』に該当します。
氷柱(つらら)とは、天井・軒下などから水が滴り、垂れ下がった状態で凍ったものです。寒い地域へ行くと、家の軒下などに氷柱ができている様子を見かけることがあるでしょう。
名前の由来は諸説ありますが、古くは表面に光沢がありツルツルしているものを『つらつら』と表現していたとされており、その様子から『つらら』と呼ぶようになったといわれています。
「ひょうちゅう」「こおりばしら」と読む場合
氷柱は、音読みで『ひょうちゅう』、訓読みで『こおりばしら』とも読みます。これらの読み方をする場合は、暑い時期に涼むのを目的として、室内などに置く氷の柱を意味します。
昔はクーラーなどの空調設備の代わりに、角柱形に切り出した氷を設置して涼みました。電気や冷蔵庫のない時代の氷は高級品であり、身分の高い人・権力のある人の楽しみ方だったとされています。
また、四角い型に花などの飾りを入れ、水を入れて凍らせて作る飾りを『氷柱花(ひょうちゅうか)』といいます。氷点下になる場所であれば簡単に作れるので、冬のキャンプでのレクリエーションにもおすすめです。
家庭用の製氷皿や製菓に使用するシリコン型、牛乳パックなどを使っても作れます。ぜひ、オリジナルの氷柱花づくりに挑戦してみてはいかがでしょうか。
氷柱(つらら)ができる仕組み
寒冷地へ行けば氷柱(つらら)を見られると思われがちですが、どこにでもできるわけではなく、できやすい場所とそうでない場所があります。ここでは、氷柱ができる仕組みを見ていきましょう。
軒下などに水が垂れて凍る
氷柱(つらら)は、屋根・岩場などに雪が積もる環境で形成されます。まず土台となる部分が凍り、下方向に向かってだんだんと棒状に凍っていきます。
土台となる部分ができても、そこから滴る水分がなければ柱のようになりません。日中の気温上昇や室内の暖房の熱などにより、雪が溶けて滴った水分が夜間に凍ると、氷柱になります。
通常は真下に伸びていきますが、強い風や屋根に積もった雪に押されて、斜めに伸びていく場合もあります。また、屋根や庇(ひさし)などから雪・氷柱が落下し、事故が起こるケースも少なくありません。
気温が低すぎるとできない
氷柱は、ある程度の寒暖差がある状況で、溶けたり凍ったりを繰り返すことで完成します。気温が上がらないと水が滴らないので、常に氷点下の場所では氷柱は見られません。
水は、約0℃になると凍り始めます。氷柱が形成されるためには、氷と水が混在する絶妙な温度が必要です。
つまり、太陽や室内の暖房などの熱と、冷たい外気の両方が組み合わさって、初めて氷柱が完成するのです。環境次第では、数mにも及ぶ長い氷柱ができることもあるでしょう。
全国にあるおすすめの氷柱スポット3選
氷柱が見られるスポットは全国にあり、見頃になると多くの見物客が訪れます。見事な氷柱を見られることで有名な場所を、3カ所紹介します。
万世大路二ツ小屋隧道(福島県)
万世大路(ばんせいたいろ)は、福島県と山形県の県境にある、栗子峠を越えるために作られた道のことです。明治期に完成後、何度も改修されてきた歴史を持ち、1966年の『栗子ハイウェイ』の完成に伴い廃道となりました。
二ツ小屋隧道(ふたつごやずいどう)は、万世大路内にある廃トンネルです。このトンネルに雪解け水がしみ出してできた氷柱は、『氷の神殿』と称されています。
壁が崩落した部分から、盛大にもれ出るようにできた氷柱が見ものです。現在は公的な管理者がいないため、見に行く際はガイドが付いてくれる観光ツアーを利用するのがおすすめです。
秩父三大氷柱(埼玉県)
埼玉県には、秩父三大氷柱と呼ばれる場所があります。埼玉県秩父郡の『三十槌の氷柱(みそつちのつらら)』、秩父郡小鹿野町の『尾ノ内氷柱』、秩父郡横瀬町の『あしがくぼの氷柱』の三つです。
三十槌の氷柱は、岩肌にしみ出た湧き水が凍ったもので、岩肌一面に広がるオブジェのような氷柱が見られます。
尾ノ内氷柱は、尾ノ内沢から水を引いて、人工的に作った氷柱です。見頃を迎える1月中旬〜2月中旬ごろには、ライトアップも行われます。
あしがくぼの氷柱は、芦ヶ久保駅から徒歩約10分の場所にあり、気軽に訪れやすくなっています。約30×200mにわたって広がる、壮大な氷景が見どころです。
河原谷の大つらら(福岡県)
福岡県糟屋郡宇美町と筑紫野市の境界にある、三郡山の河原谷(ごうらだに)渓谷を登った場所にある氷柱です。標高約724mに位置し、『難所ヶ滝』とも呼ばれています。
岩肌を伝って流れた水が氷柱となった様子は、まるで滝が凍り付いたかのようです。例年、1月末〜2月初旬ごろに見られます。
現地を訪れるには、約90分ほどの登山をしなければなりません。道のりは険しく、本格的な防寒着やアイゼンなどの登山装備が必要なので、山に慣れた上級者向けの場所だといえます。
出典:河原谷の大つらら(通称:冬の難所ヶ滝) – 宇美町ホームページ
まとめ
氷柱には、『つらら』『ひょうちゅう』『こおりばしら』などの読み方があります。水が凍ったものという点では同じですが、その在り方によって呼び方が変わる点に注意しましょう。
氷柱(つらら)は、単に寒いだけでなく、水が滴る場所でできます。氷柱ができる過程や条件を知れば、より興味深く見物できるでしょう。
壮大な氷柱を見られるスポットは、日本各地にあります。訪れやすい場所へ行き、思い出に残る時間を過ごしましょう。