そこで今回は、ペルーのイキトスという町で体験した、珍味だらけの一日をご紹介します。
ペルーにあるイキトスの町のベレン市場に行ったら珍食材の宝庫だった
大勢の人でごった返しているこの市場は、ペルーのイキトスという町にあるベレン市場。東京の上野アメ横商店街みたいな、楽しいカオスが広がる場所。長い通り沿いに、食べ物や衣類などがエリアごとに分かれて売られていて、ここへ行けばなんでも揃います。
珍味だって、どんとこい。ほんとうに、いろんなものが買えちゃいます。
イモムシだって立派な食材です
冒頭の写真で私が食べているのが、イモムシの串焼きです。
ベレン市場へ行けば調理前のイモムシだって売っています。買って宿に持ち込めば、自分でイモムシ料理に挑戦できちゃうんです。
イモムシは現地ペルーではスリと呼ばれていて、肉や魚が貴重なジャングルの奥地でたんぱく源として食べられているもの。とはいえ、ペルー人でも該当地域出身でない人からしたら、珍味的なポジション。もちろん私も、初体験。気になるイモムシのお味は、良く焼けていて表面がサクサク。中身は水分が飛んでスナック菓子のようにスカスカ。味はほとんど無し。強いていうなら、炭火の香りが焼き鳥風でした。
お肉と言えば、牛、豚、鶏。でもアマゾンで食べるお肉はそれだけじゃありません。こんな風に蹄が付いたままのお肉だって、ベレン市場には並んでいます。
ポンチェはアマゾン流のミルクセーキ!?
屋台で売られていたこの飲み物は、ポンチェ。ミルクセーキに似た、とても甘い味がします。ペルーではアマゾン地域でしかほとんど見られない、珍しい飲み物、というかデザート。そう、飲み物ではなく、どちらかといえば食べ物かもしれません。見た目の通り、細かい泡が立っていますが、泡は上にのっているのではなく、グラスの中身全体が泡なのです。だから、グラスに口を付けて飲むのではなく、スプーンですくって口に運びます。
ちなみに、泡の正体は、メレンゲ。タライみたいに大きな容器に牛乳や卵、バニラエッセンスなどの材料を入れたら、泡だて器でひたすら混ぜて、泡を作ります。これを、黒ビールもしくはマサトと呼ばれる醗酵飲料で割ったら完成です。
冷蔵庫は無し。暑くて人通りのある露店で、お店の人はポンチェをシャカシャカ混ぜながら、大きな声を出してお客を呼ぶ。衛生的かはわかりませんが、私のお腹は大丈夫。大変、美味しゅうございました。
衝撃食材との出会い
ある朝、そんなイキトスのベレン市場に食材を買いに出かけると、衝撃的なものが目に飛び込んできました。大きなカメの甲羅です。しかも中身が空っぽ。え?中身はどこへ?
探し始めてすぐ、亀の肉を売っている屋台が見つかりました。足の質感や、さっきの甲羅の厚い感じからして、もしかして、リクガメ?
「そうだよ、リクガメだよ。リクガメの肉は、ほかの肉にはない美味しさなんだ」と、通りすがりのおじさんが教えてくれました。
リクガメのお肉の値段は40ソルから(約1,600円)。市場の食材のなかでは、かなりの高級路線。それでもお店にはお客さんが絶えずやってきて、飛ぶように売れていきました。お肉は、甲羅から取り外された状態の上半身と下半身に分かれていて、どの半身が欲しいか選んだら、肉屋の主人が食べやすい大きさにブツ切りにして渡してくれます。
食べてみたい。リクガメが食べられるなんて一生に一度かもしれないから、是非食べてみたい。けれど、悲しいかなこの時の私は一人旅。前回まで一緒に旅をしていたマキシーちゃんは帰国してしまったし、リクガメの半身は大きすぎて、一人で食べきれる自信がありません。そんな私に、意外な助け舟が現われました。
なんと、この市場では亀の種類を選べるのです
「モテロは大きいけど、タカリヤなら小さいよ」。モテロはリクガメで、水辺を泳ぐような普通の亀をタカリヤと呼ぶそうです。確かに、普通の亀なら、リクガメより小さいから、一人でも食べきれるかもしれない!
ちなみに普通の亀はお値段半額の20ソルから(約800円)。リクガメと普通の亀は、お肉の色も違います。リクガメは牛肉のような赤みのある色をしている一方、普通の亀は、鶏肉のような白っぽい色をしています。それから、リクガメはいかにも爬虫類のようなウロコに覆われているけれど、普通の亀は黒っぽいウナギのみたいなテカリを感じます。インパクトのあるビジュアルだけど、だんだん美味しそうに見えてきて、つい買ってしまいました。ちなみに内臓や卵などは別売りです。
別の市場へ足を伸ばしてみると、カメの卵で作ったゆで卵専門の屋台を見つけました。亀が産卵する時期にしか食べられないから、地元の人にとっても季節性の珍味です。気になる味は、ニワトリのゆで卵とはまったくの別物。卵の殻の部分は、ふにゃふにゃしています。これを少し破ると、なかから透明のやや脂っぽい汁が出てきます。この汁が美味しいのだと、地元の人はこぼさないようにチューチュー吸ってしまいます。すると、なかに残るのがゆで黄身のような部分。これは、ピータンみたいな独特の香りがしました。
亀を食べるアマゾン川流域の文化と問題
ところで、カメって食べてもいいの?という疑問が残りますが、これはとても難しい問題です。市場に流通する亀の肉や卵は、なんでも食べるアマゾン流域の食文化の一部ではありますが、その裏で密猟に関する問題を抱えています。亀の生態系を守ろうと非営利団体が活動している一方、カメの卵は高値で取引される食材のため、「私たちの昔からの食い扶持を奪うな」と反発している地元の人たちがいます。過去には、非営利団体の現地職員が銃で撃たれて殺されたり、海外スタッフが拉致監禁されたりといった事件もありました。
食べていい生き物、食べちゃいけない生き物、生き物を殺して食べることの善悪に関する悟りはまだわかりません。ただ私は、旅先で珍味に出会えば、食さずにはいられないのです。
この日のディナーは○○系亀ラーメンを自作しました!
さて、市場で亀を買ってきたところで、今夜のご飯は亀ラーメンに決めました。商店でインスタントの袋めんを買い、屋台の八百屋で中華炒めセットをゲット。モヤシやネギなど数種類の野菜が一袋にまとまっていて、野菜マシマシラーメンにピッタリ。私が目指すのは、こってりで有名な○○系の亀ラーメンです。さっそく、「亀 ラーメン」とネットでレシピ検索をしてみますが、該当なし。我が道を進むしかありません。
とりあえず、臭み消し?ヌメリ取り?だったら塩もみ?頭に浮かぶのはハテナマークばかりですが、ボウルにお肉を移したら、たくさんの塩で揉んで洗ってみました。
ちょっと塩を入れたお湯で、念入りにグツグツ茹でたら、最後に野菜と麺を加えて、あっという間に亀ラーメンの完成です。
まずはスープを一口。
う、美味い!!塩ラーメンです。亀の出汁が出ています。動物性の旨味と香りが出ているけれど、しつこい脂っこさはゼロ。まるで高級な塩ラーメンです。
続いて、お肉をパクリ。うーん、プルプルです。コラーゲンがマシマシのプルップルのお肉。コンビニの蒸し鶏にもまけない柔らかい肉質。珍味なのに、加熱前の見た目も、調理したあとの味も、つい鶏肉に例えてしまう私。そういえば、ワニもカエルも、味は鶏肉ってだという話はよく聞きます。もう、人類の舌は鶏肉に支配されているのかもしれません。
黒い色をしている皮の部分は、噛んでみると意外と厚みがあって、噛み応えのあるキノコみたいな食感。うん、美味しい!最後にライムを絞ったら、もっと美味しい。暑い地域の料理は、ライムをたらすと美味しいんです。少しどんぶりから目を離したすきに猫がやって来て、足を一本くわえて行ってしまいました。動物は美味しいものを知っているんですね。
次回は、一緒にアマゾン川下りの旅をしてくれる相棒を探すお話です。意外な男性が名乗りをあげてくれたのですが、かなり個性的な方でした。そう、アマゾン川に集まる人は、なぜかキャラが濃い人ばかりなのです。お楽しみに。