【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.15】ペルーの密林に隠された猿の楽園=モンキー・アイランドへ
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    2024.12.14

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.15】ペルーの密林に隠された猿の楽園=モンキー・アイランドへ

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.15】ペルーの密林に隠された猿の楽園=モンキー・アイランドへ
    人間が近くへ行っても、警戒心ゼロでゴロンと横になっていた子ザル。まるで野生の本能がないようですが、実はこの場所はアマゾンの森の中。様々な事情から野生で暮らせなくなってしまったサルを保護する施設、通称モンキー・アイランドがあると聞き、アマゾン川下りの旅の途中に寄り道してみました。

    ボートに乗ってモンキー・アイランドへ

    モンキー・アイランドに向かうボート

    アマゾン川に囲まれたモンキー・アイランドに行く唯一の交通手段がボートです。

    モンキー・アイランドはその名の通り、アマゾン川に浮かぶ中州にあります。道路が繋がっていないため、基本的に船でしか行くことができません。場所はペルー・アマゾン川の玄関都市イキトスから船舶でおよそ20km下ったところ。

    モンキーアイランドの看板が

    ボート乗り場の看板が上陸の目印です。

    入園料は、外国人の大人は1人50ソル(約2,000円)。これとは別に必要なのがボート代金。スピードボートなら往復55ソル(約2,200円)、ゆっくり進む小型船なら往復20ソル(約800円)。後者はエンジン音がペケペケ鳴ることから、現地ではペケペケと呼ばれています。今回の旅で私が操縦している「ペケペケ号」と同じタイプです。

    アマゾンの森

    たくさんの植物が密接に茂っているアマゾンの森は、意外と暗いのです。

    ボート乗り場から施設の入り口までは、少し歩きます。のんびり進んで15分くらい。うっそうとした森の中には、危険がないように細いトレイルが整備されています。

    パパイヤの木

    パパイヤの木を見つけました。アマゾンの森は食べ物も豊か。

    自然豊かなアマゾンの森なら、人間がお世話をしなくても、サルは自分たちで生活できるのでは?と思いきや、そうもいかないサルたちがたくさんいるのです。

    野生で暮らせない事情とは?

    モンキー・アイランドの子ザルたち

    モンキー・アイランドの子ザルたち。

    この施設で暮らしているのは、例えば、ペットとして飼育されていたのに捨てられてしまったサル。子ザルのころに親から引き離されて人間に飼われてしまったから、森での暮らし方を知りません。劣悪な環境で飼育され、運動も制限されるなど、森で自立できる健康状態にないサルもいます。一方、子ザルと引き離された母ザルは一体どうなるのか?実は、アマゾンの先住民族では、サルを食料として狩猟する習慣があるのだそう。母ザルはお肉。子ザルは売って現金収入。そうやって引き離されるサルの親子がいるのです。

    伝統的な狩猟に限らず、国外への売買を含む商業目的の違法な乱獲や、森林破壊による生息地域が奪われるなど、個体数の減少が問題になっている昨今。そこで、モンキー・アイランドのようにサルの保護活動に取り組んでいる団体があるのです。

    サルの保護活動に尽力している職員さん

    サルの保護活動に尽力している職員さん曰く、オリに入れるのは一時的な処置だそう。

    園内には様々な種類のサルがいて、病気や、ほかのサルをいじめるなど社交性に問題がない多くのサルたちが、オリの外で島内を自由に動き回っています。

    モンキー・アイランドのサルたち

    ティティー・モンキー

    ティティ―・モンキー

    小柄でふさふさした毛並みがリスみたいなティティー・モンキー。

    スタッフに引率されて、島内のサルについて説明を受けました。写真では仏頂面をしていますが、オスとメスは一度パートナーになったらほとんどずっと一緒に過ごす愛情深いサルなのだそう。野生では4~6頭程度の家族で暮らし、お父さんは子ザルを背負ったりお世話したり育メンの鏡。その間、お母さんは授乳に必要なエネルギーを温存できるのだそう。

    ハウラー・モンキー

    すっかりリラックスモードのサル

    すっかりリラックスモードのサルだけど、怒るとすごく強いらしい。

    名前の通り、雄たけびを上げることで有名なサルで、なんと800m先まで聞こえるのだとか。だけどスタッフがいる周りではすっかりリラックスモードで、雄たけびをあげる様子はゼロ。

    ウーリー・モンキー

    子ザル

    このサルは、なんでも噛んでみたいお年頃みたい。

    私のカメラのひもが気に入ったのか、離れてくれません。大人になると大きく育って、最大で10kg近くにもなるのだとか。だから、食べることを目的とした狩猟でよく狩られてしまうそう。先ほどのティティー・モンキーとは違って、30匹ほどの群れになって木の上の高い場所で暮らしています。

    サキ・モンキー

    木の上にいるサキ・モンキー

    木の上で人間を観察していたのが、サキ・モンキー。

    今回の訪問で私が一番印象的だったサキ・モンキー。アゴが強くて、ほかのサルが食べないような木の実も器用に食べてしまうのだとか。

    彼らが食べる木の実のなかには、毒素があるものが含まれているため、食べる目的で狩猟されることはほとんどありません。このサルに限らず、とっても苦い木の実を食べたあとのサルのお肉は、本当に苦い味がするといいます。苦いかどうかは、食べてみないと分からないけれど、そういうサルの肉をスープにしてしまうと、スープ全体が苦くなってしまって食べられないほど苦いのだとか。しかしサキ・モンキーの場合は、食べられないサルだからといって狩猟のターゲットにならないわけではないそうです。ふさふさの尻尾がホコリ取りの掃除グッズとして便利なためです。

    ナマケモノ

    ナマケモノ

    モンキー・アイランドに住み着いている野生のナマケモノ。それにしてもこんなに毛むくじゃらで、暑くないのかな?

    島の周りにはフェンスなどがないから、保護している動物とは別に、野生の動物たちもいます。その代表格が、ナマケモノ。葉っぱの影にしがみついて、昼間のほとんどは顔を隠して寝ています。

    モンキー・アイランドが目指していること

    幹が壁みたいな巨木

    幹が壁みたいな巨木。大迫力の自然の中に、サルの楽園モンキー・アイランドがあるのです。

    サルたちがのびのびと暮らしているモンキー・アイランドの周囲は、大迫力の自然に囲まれています。ゆくゆくは、こういった自然のなかにサルたちをかえすのが、モンキー・アイランドの役割です。

    その取り組みは、大きく3ステップに分けることができます。

    1. レスキュー。問題を抱えたサルを保護すること。
    2. リハビリ。島の中で適切な環境を整え、野生に戻るための力を蓄えさせます。
    3. リリース。サルたちを見学しに毎日観光客が訪れますが、モンキー・アイランドのサルたちは動物園のように展示を目的として飼育されてはおらず、最後は森に帰るのが目標です。
    サルを取り巻く問題に関する案内板

    モンキー・アイランドでは、サルを取り巻く問題に関する説明を受けることもできます。

    知っていますか?違法に捕獲されたサルは、捕獲時のケガやその後の劣悪な環境が原因で、転売される前に90%が死んでしまうそうです。ペルーでは190種類を超える野生動物が毎日違法に売買されていて、このなかには、サルだけで少なくとも19種類が含まれているといわれています。

    世界中で年間4万頭のサルが売買されるなか、ペルーでは、サルと人間両方に悪影響を及ぼす人獣共通の寄生虫や病原菌が17種類も確認されているそうです。アマゾンの森から捕獲され違法に売買されるサルたち。しかし、アマゾンの森にはほとんど道路がありません。ではサルたちは一体どうやって遠くまで運ばれるのか?可能性のひとつは、アマゾン川です。

    私たちが想像もしないようなものが流れている川。それがアマゾン川なのです。

    私が書きました!
    建築学生
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する元剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)で、第七回斎藤茂太賞を受賞。中日新聞の教育コラム「EYES」に連載。ニュージーランドとアメリカでの生活を経て、現在はハンガリーで廃材から建てた家に住みながら建築大学に通っている。

     

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