チェーンスパイクとは
凍結・積雪時等に使用する登山靴に装着する短い爪が付いたものを、チェーンスパイクと呼びます。チェーンアイゼンとも呼び、本格的な雪山装備という位置づけの道具であるアイゼンと共に、冬の登山で重要な役割を果たしてくれます。
チェーンスパイクは、凍結・積雪の路面を歩くという点でアイゼンと用途は変わりませんが、降雪や凍結初期の段階から使うため、アイゼンよりも出番が多いことでも知られています。また汎用性が高く、軽量コンパクトなことからお守り的に持ち運べるなど、登山者を心身ともに支えてくれるのです。
冬の低山ハイキングから雪山登山に欠かせないマストアイテムが、チェーンスパイクなのです。
チェーンスパイクの魅力
着脱がスピーディ
チェーンスパイクはバンドがゴムのように伸びるエラストマーという素材で作られており、ソックスを履く要領で登山靴に装着することができます。装着手順が非常にシンプルかつ着脱も容易なため、凍結区間を抜けて一度外し、再び凍結区間に入って装着する、といったことも可能です。爪の消費を最小限に抑えるという点でもメリットは大きいです。
凍結・積雪・泥斜面でグリップ
チェーンスパイクの出番は、フラットな路面における凍結、または軽アイゼン(アイゼンよりも爪の数が少なく、比較的雪が少ない場所で用いられる道具)を使うほどではない緩やかな斜面や積雪時の歩行です。チェーンスパイクのグリップ力は高く、登山靴のみで歩行した場合と比べて安心感は絶大です。
チェーンスパイクは他の場面でも活躍します。たとえば緩い地面で登山靴では滑りやすいところや、凍結のない斜面などです。主に登山道を外れたルートを行くバリエーションルートや沢登りなどではこうした場面が多く、私は沢登りするときに必ず携行しています。
コンパクトでお守りとしても
冬の登山では、その時その時の詳細な路面状況が入手しにくく、路面が凍っていて歩けなかったということが頻繁に起こり得ます。逆に、凍結していると思ったら溶けてドロドロになっていた、ということも珍しくありません。チェーンスパイクは冬の登山道具の中ではコンパクトに収納しやすく重量の負担も少ないため、お守り代わりに持っていくことができます。
実際に、現地に行ってみたら凍結していたり、突然の降雪で不安になったことが何度かあり、チェーンスパイクに助けられました。
幅広い靴に対応
アイゼンはモデルそれぞれに登山靴との相性があるため、装着できるかは必ず事前確認が必須です。その点、チェーンスパイクは靴のサイズによって対応しない場合があるものの、登山で着用する登山靴であればブランド問わず使用できます。
アイゼンを変えれば登山靴を変える必要もありますが、チェーンスパイクに合わせて登山靴も変えなければならない、というコストがかからないのは嬉しいポイントです。
チェーンスパイクのここに注意
使用中に外れることがある
装着しているのを忘れそうになるほど一体感のあるチェーンスパイク。その一体感の一方で、外れてしまったことに気づかないと場合もあります。固定力はさほど高くはないため、積極的に動いていると外れてしまうことがあるのです。
対策としては、脱落防止用のバンドが付いているモデルを選んだり、定期的に状態を確認し、ズレていないかなどを確認したりするのが良いでしょう。私は沢登り中に外れて片方を紛失し、残された片方でなんとか登りきったことがあります。
急傾斜では使用できない
チェーンスパイクが有効な状況は、前述のとおり凍結したフラットな路面や傾斜が緩いところです。急な傾斜や凍結した岩場など、本格的な雪山となると、アイゼンをはじめとしたそれなりの装備が必要となります。しかし、アイゼンを必要とする山に行くときにはチェーンスパイクが不要か、といえばそうでもありません。
アイゼンは重く、登りはじめから装着すると脚の負担が大きくなるため、必要になるまでは装着しないで歩くのがおすすめです。ただ、登山靴だけでは不安という状況で、チェーンスパイクは有効です。登山序盤の樹林帯はチェーンスパイク、後半の急傾斜はアイゼン、と使い分けるのです。
チェーンスパイクで安全な冬山登山を
いかがでしたか。チェーンスパイクは冬山のみならず、1年を通して活躍できる登山道具です。冬の低山から本格的な雪山の一部区間から沢登まで、チェーンスパイクで安全・安心な登山を楽しんでください。