【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.16】ペルーの秘境でたどり着いた村を歩く!足が抜けない泥地があれば、美しい砂浜も
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    2024.12.31

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.16】ペルーの秘境でたどり着いた村を歩く!足が抜けない泥地があれば、美しい砂浜も

    【佐藤ジョアナ玲子のアマゾン旅 vol.16】ペルーの秘境でたどり着いた村を歩く!足が抜けない泥地があれば、美しい砂浜も
    泥んこ遊び、最後にしたのはいつですか?子供の頃でしょうか?私は、子供のころは泥遊びが嫌いでした。汚れるのが嫌だったから。それなのに、大人になってから裸足になって、こんなに足を泥だらけにするなんて。カピカピにひび割れた泥を足に付けたまま舟に乗って旅したアマゾン川。今回は、そんな大人の泥遊びの先で出会った、各地の飾らない素朴な景色を紹介します。

    泥遊びの準備、できてる?

    まさかのスーツケース

    濡れたり泥だらけになったりする旅なのに、新しい相棒の荷物はまさかのスーツケース!?

    アウトドアの旅に出るときは、ギアの準備にぬかりなし。

    といいたいところですが、実際にはそうもいかないこともあります。私の小さな木舟「ペケペケ号」で行くアマゾン川下りの旅に同行してくれることになったTさんは、スーツケースで旅行中のインドア派男性。川旅なのに、防水性ゼロ!

    Tさんは、ギアはないけどヤル気のある男。そして私は、運に身を任せる女。二人の共通点は、いきあたりばったり。事件の臭いがプンプンですが、案の定、とある村で泥だらけになってしまいました。

    泥だらけになる村

    田んぼのような泥地

    通りかかった村の船着き場周辺の風景。まるで田んぼ。

    季節は、アマゾン川の乾季の始まり。ペルー国内をアマゾン川に沿って移動する途中に通りかかった村へ。上陸を試みるも、川底から露出した泥に阻まれてしまいました。踏むと足が抜けなくなってしまうほどの、ぬかるみ地獄で、まるで田んぼのなかを歩いているみたい。でも歩くコツがあって、村の人の足跡を辿ればハマらずに村まで行くことができます。

    靴を放り投げるTさん

    Tさんの作戦は、まず靴を安全なところまで放り投げることでした。

    なるべく靴を汚したくないTさんは、乾いたエリアまで靴を放り投げる作戦に出ました。足跡があるエリアまでは、拾った丸太や板を敷いて対策はバッチリ。と思いきや、舟から飛び移るときに踏み外して泥に突っ込んでしまったTさん。両足揃って膝下までスッポリ…。泥だらけに。

    すっかり意気消沈したTさんはペケペケ号への一時撤退を宣言し、ひとまず私だけ裸足のまま集落を探索することになりました。

    アマゾンの村の洗濯風景

    アマゾンの村の洗濯風景。

    足は泥だらけかもしれないけれど、アマゾンの村の人たちは、きれい好きな一面もあります。ズラッと干された洗濯物は、お母さんたちがタライで丁寧に手洗いしたもの。屋根に置かれた小さなソーラーパネルでは、洗濯機を回すほどの電力は作れません。

    木造二階建て

    村で一番高い建物は、木造の二階建て。

    それにしてもこの村、なかなか人とすれ違いません。みんな一体どこへ行ってしまったのか?

    村に一本だけ敷かれた細い道を歩き続けると、突然、人だかりが見えてきました。みんな、とあるスポーツをするために集まっていたのです。

    アマゾンの村の人気スポーツとは?

    原っぱでサッカーをする子供たち

    原っぱでボールを追いかける子供たちと、それを見守る大人の姿がありました。

    人だかりの正体は、子供たちのサッカー大会。ゴールは、太い枝で作った四角い枠。観戦している保護者たちは、パラソルやタープで日陰を作っていますが、子供たちは太陽を浴びて走ります。サッカーをするための広場は、アマゾン各地のどんなに小さな村にもあって、子供はもちろん、夕方以降の涼しい時間には大人も集まって遊んでいます。

    サッカーは南米の国民的スポーツ。秘境アマゾンまで人気が届くんだから、スポーツってアツいよなあ。私が好きなボルダリングも、世界中どこへ行ってもみんな大好きなスポーツになって欲しいなあ。

    小学校の壁画

    小学校の壁画もサッカー。

    小学校の壁に描かれていた絵も、もちろんサッカー。絵では靴を履いていますが、実際の子供たちはみんな裸足でした。足は汚して使ってなんぼ、それがアマゾン流なのです。

    白い砂のビーチに行ってみた

    白い砂、青い空

    白い砂、青い空、これもアマゾン川!

    アマゾン川には、サラサラの砂浜のビーチもあります。

    「ここなら安心して歩けるね!」

    さっそく靴下を脱いで裸足になるTさん。砂が太陽に温められてポカポカ。ちょっと深くまで足を埋めてみると、今度はヒンヤリ。砂の感触も気持ち良い。私たちの目的は、砂浜のすぐ裏手に見える森を歩くこと。気分はジャングルツアー。ところが向かってみると、砂浜と森の間が川で分断されていました。でっかい砂浜は、全部が中州だったのです。

    棒をさしてペケペケ号を砂浜に係留する

    ペケペケ号を砂浜に係留するときには、棒が必須アイテム。

    散歩をする間にペケペケ号が流されないよう、砂浜に棒をぐいぐい差し込んでロープを繋いでおいたのに、まさか森まで歩けず引き返すとは。棒は、登り棒みたいに登って全体重をかけて刺したので、引き抜くのも一苦労。左右に細かくゆすってみたら、その振動で自分の足が砂に埋もれてしまいました。

    アマゾンのセミ

    アマゾンのセミは、白っぽい上品な色をしていました。

    なかなか抜ける気配をみせない棒を前に、疲れてしばし棒立ちになる私たち。なんの動きもみせないペケペケ号に、セミが羽を休めに来てくれました。

    「もう、棒は諦めたらいいんじゃない」とTさん。

    「いやいや、これはお気に入りの丈夫な棒なのよ」と、私は気合で引き抜きました。

    ガソリンを持って渡った一本橋

    係留場所

    泊まる村の決め手は、ガソリンスタンドの有無。

    この日、私たちが泊まったのはパべス村。決め手は、ガソリンスタンドがある比較的大きい村だから。しかも、ほかの舟がたくさん並んでいる隣ならば、踏んでも沈まないみんなの足跡があるので上陸するにも便利なのです。

    ガソリンをポリタンクに給油

    ガソリンは、プラスチックの樽からバケツですくって、漏斗でポリタンクに移す。

    ジャーっと豪快に流し込んでいるのは、船外機に使うガソリン。ガソリンスタンドによっては、漏斗を支える仕事を子供がお手伝いしていることもあって、ワイルドそのものです。

    一本橋で陸とつながるガソリンスタンド

    ガソリンスタンドは、村と一本橋で繋がっています。

    でも、それよりワイルドなのは、ガソリンを詰めた重たいポリタンクを運ぶには、丸太の一本橋を歩かないといけないこと。ガソリンスタンドは大きなイカダの上に建っていて、この一本橋で陸地と繋がっているのです。アマゾンの人の身体能力、恐るべし。

    村の興廃に思いを馳せて

    村のフェリー

    この村を行くフェリーは、かなり年季が入っていました。

    これは村に定期的にやって来るフェリー。錆びてボロボロにみえますが、たくさんの地元の人が利用している現役の船です。船着き場から、鈍くゆっくり方向転換をして、次の目的地へ向けて出港していきました。

    ペルーのイキトスから、ブラジル、ペルー、コロンビア三国の国境が交わる地域を行き来する船が、ほとんど毎日パべス村に寄港しているそう。ちなみに、案内板はホワイトボードに手書きの文字。時刻表記はなし。地元の人は、大体の感覚で船のスケジュールを把握しているのでしょう。

    アマゾンの村の生活には、どことなくアナログ時代の情緒が残っているのです。

    アマゾンの村のトタンの家

    アマゾンの村にあるトタンで作られた家がエモい。

    私が旅先で好きな景色は、町の興廃を感じられる景色。人も町も成長するけれど、廃れる部分もあるでしょう?そういう生々しさを見るのが、好きなんです。

    例えばそれは、錆びたトタンだったり。色あせた看板を張りっぱなしにしたお店だったり。

    村のすぐ裏の森の中にある廃墟

    村のすぐ裏の森で、廃墟を見つけました。

    それから、すっかり植物に浸食されてしまった廃墟も私の大好物。骨組みだけの姿は、まるで裸ん坊。森を歩いていて、きれいな動物の骨を見つけたときみたいな興奮があるのです。

    廃墟から見上げるアマゾンの空

    廃墟から見あげるアマゾンの空。

    壁の一部に、部屋番号の札がかかっているのを見つけました。共有のお手洗いらしき場所があって、離れのようなものがある造りからして、私の予想ではきっと観光用の宿泊施設だったはず。

    いつごろまで営業していたのか、この土地の詳しい事情は分かりません。遠い昔にここを訪れた人たちと同じように、私も一人の観光客として訪れただけだから。

    私が書きました!
    建築学生
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する元剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)で、第七回斎藤茂太賞を受賞。中日新聞の教育コラム「EYES」に連載。ニュージーランドとアメリカでの生活を経て、現在はハンガリーで廃材から建てた家に住みながら建築大学に通っている。

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