あ、大丈夫です。汚れた現代文明を転覆させようとか、ユートピアを作ろうとか、そういう話ではありません。僕らはただ、歴史の教科書の1ページ目から、人類の文明が進んでいくところに立ち会いたいのです。
週末縄文人 - YouTube
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週末縄文人としてのルールはただひとつ
たとえば人類が初めて火を熾したとき、その人はどんな気持ちだったのでしょう。どれだけの喜びや驚きだったのか。火によってどんなことができるようになり、どんな風に暮らしが豊かになったのか。そんなことを味わってみたいのです。
そうして一歩一歩、旧石器時代から縄文時代、弥生時代へと文明を進めていき、現代を目指していく。ちょっと途方もないですが、そんな遊びをしています。
この遊びには、ひとつだけルールがあります。それは、現代の道具は一切使わず、自然のものだけを使うこと。火を熾すときはマッチやライターではなく、木の枝を使って摩擦で起こす(きりもみ式火熾し)。もちろん、その木の枝を切るためにナイフを使ってはいけません。河原へ行き、よく切れそうな鋭い石を探すところから始めなければならないのです。
こんな具合なので、何をするにしても、現代からしてみると途方もない時間と労力がかかります。それはもう、とても週末だけでは足りないレベルです。なので疑り深い友人からは、「ちょっとだけライター使ったり、ナイフ使ったりしてるんじゃないの?」と聞かれることもあります。コスパやタイパを追求するのが現代文明ですから、疑うのも仕方ありません。それにきりもみ式で起こした火も、ライターで熾した火も、見た目や温度は同じです。でも、それじゃあダメなんです。人類で初めて火がついた瞬間の本当の感動を味わうには、ひとつのズルもあってはなりません。
火を熾す道具を手に入れるとこからはじめた。その結果…
僕らがゼロから火を熾せるようになるのに、週末に山に通い続けて3ヶ月もかかりました。詳しくはいずれ書きますが、その時間と、手が豆だらけになった痛みや苦労があったからこそ、初めての火を見たとき、心から美しいと感じたのです。実際は人類が誕生してから火を熾すまでに数百万年かかっているので、それと比べれば3ヶ月なんてまばたき以下の短さです。それでも、闇夜を照らす火の明るさや暖かさ、その安心感に、太古の火には神様がいた理由がわかったような気がしました。
結果ではなく、そこに辿り着くまでのプロセスを味わうこと。そこにかかる時間や苦労を身をもって知ることでしか、当時を生きた人たちの自然への眼差しや、生きる上での喜びをうかがい知ることはできない。そう思っています。
ぼくたちが、なぜ週末縄文人をはじめたか
生きる上での喜び。それは、この活動を始めるそもそものきっかけでもあります。少し自分語りになってしまいますが、僕が社会人になって4年が経った頃。仕事にも少しずつ慣れ、同僚や友人にも恵まれて楽しい日々を過ごしていたのですが、同時にどこか満たされなさも感じていました。その正体に気づいたのは、ちょうどその頃に流行り始めたコロナ禍がきっかけでした。
「不要不急」という言葉を毎日のように耳にする中で、自分自身の暮らしや仕事の中に、生きていく必要性に直結するようなことがどれだけあるのだろうか。その少なさこそ、生きる手応えのなさに繋がっているのではないだろうかと思ったのです。もっと生きている実感がほしい。そんなときに、同期の縄から「現代文明が崩壊しても生きていける力を身につけたい」と聞き、似たような興味感心で大盛り上がり。ふたりで週末縄文人を始めることになりました。
さて、第一回はそろそろ終わりなのですが、ここで最後に問題です。2020年の夏にこの活動を始めてからもう4年以上になるのですが、はたして今、僕らは何時代にいるでしょうか?
……正解は、縄文時代です。そう、文明はほとんど進んでおりません。
正直、この活動を始めるまで僕らは縄文時代をなめていました。そんな原始的な文明、1年くらいでちょちょっとクリアして、早く弥生時代で鉄器を作ろうぜ的なことを言って盛り上がっていました。とんだ馬鹿野郎どもです。
縄文人が利用していた「自然」は僕らの想像以上に手強く、思い通りにはなりませんでした。木は石で切ると驚くほど堅いし、石の加工には気が遠くなるほど時間がかかるし、土器の焼成にはとんでもなく複雑な秘密があったのです。これらをうまく生かして、あれだけ装飾的な土器を作ったり、巨大な竪穴住居に暮らしていた縄文人は半端じゃなくすごい人たちなのです。
みなさんにもぜひ彼らの暮らしの奥深さを知っていただきたい。そんなわけで、僕らの週末縄文ライフを、これから定期的にお届けできたらと思います。なにとぞ、よろしくお願いいたします。
※構成、文/週末縄文人・文(もん) 撮影/編集部