北区にある標高25.4mの飛鳥山を登頂。で、城跡は…?【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.108】
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    2024.12.31

    北区にある標高25.4mの飛鳥山を登頂。で、城跡は…?【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.108】

    北区にある標高25.4mの飛鳥山を登頂。で、城跡は…?【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.108】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.108は、北区の飛鳥山です。

    第108座目「飛鳥山(その2)

    今回の登山口も、JR上中里駅です

    JR上中里駅登山口。

    超メジャーな北区の飛鳥山は一度の登頂では終われない!【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.107】 | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

    今回も、前回同様、登山口=最寄り駅のJR上中里駅を出発し、線路沿いの「飛鳥の小径(あすかのこみち)」を歩いていくことにしました。とはいえ、前回とは全く同じルートではありませんから、ぜひ最後までお付き合いください。ということで、歩いていきます。

    ちょうど通勤時間帯だったため、「飛鳥の小径」を結構な人が歩いていました。

    飛鳥の小径から国立印刷局東京工場入り口の手前を曲がると、滝野川公園の入り口があります。今回はここの坂道を登っていきます。

    この狭い道を進んだ先に滝野川公園があります。

    滝野川公園。

    滝野川公園は、水と緑が多く、公園内には、テニスコートや遊具エリア、北区体育館、東京都北区防災センター(地震の科学館)があり、子どもから高齢者まで、多くの人々に利用されている公園です。

    この公園の最大の特徴は「防災公園」として機能する事です。北区防災センターが隣接し、災害備蓄倉庫、応急給水槽(1500トン)、深井戸、散水塔(放水銃)などの防災設備が整っています。周辺には消防署、警察署、病院、体育館があり、滝野川公園を含めた、この一帯が総合的な防災拠点になっています。ちなみに、東京都北区防災センター(地震の科学館)の入館は無料で、地震や煙の体験ができるそうですよ。

    滝野川公園の園路。夏場は水路になるそうです。

    新一万円札ゆかりの(?)の山行ルート

    滝野川公園の道路側の入り口は紅葉で綺麗でした。公園を抜け、本郷通りを王子方面へ歩いていきます。王子方向に進むと直ぐに、財務省印刷局附属東京病院の前の植え込みに何やら碑が建てられていました。とりあえず何かなと思って写真を撮ったのですが、後日ゆっくり読んでみると——

    明治19年10月 農商務省蚕病試験場  麹町内山下町より移設
    明治29年 3月 農商務省蚕病業講習所 改称
    大正 3年 3月 東京高等蚕糸学校 文部省移管
    昭和15年 4月 現東京都小金井市 移転
    昭和19年 4月 東京繊維専門学校 改称
    昭和24年 5月 東京農工大学 昇格

    と記載してありました。大正時代に 全国各地に「蚕糸学校」が作られたそうです。 東京蚕糸学校は、 太平洋戦争後に東京農林専門学校と合併して 東京農工大となったとか。

    垣根の合間にひっそりある東京蚕糸学校発祥の地の碑。

    さらに本郷通りを進むと、前回触れた国立印刷局 東京工場の正面入り口の前を通ります。

    2024年7月に北区にゆかりの偉人、渋沢栄一を肖像とする新一万円札が発行されました。北区は、これに伴って渋沢栄一ゆかりの地を巡る道路の名称を一般公募して「渋沢通り」に決定。渋沢栄一の命日となる11月11日(月曜日)にセレモニーを開催したそうです。渋沢栄一の名が付いた道路愛称は全国で初となるとか。偶然ですが、今回の山行ルートは、その渋沢通りを通っています。

    できたてホヤホヤの渋沢通りの案内板。

    その渋沢通り沿いに、渋沢栄一翁ゆかりの七社神社があります。明治12(1879)年、渋沢栄一は西ヶ原村内に飛鳥山邸別荘を、そして明治34(1901)年にはこの飛鳥山邸を本邸として、七社神社の氏子となりました。1920年(大正9年)には、渋沢栄一を筆頭とする寄付により七社神社の社務所が建てられました。現在も渋沢栄一が筆をふるった掛け軸をなどの奉納品が神社に納められているそうです。

    七社神社。

    いざ飛鳥山山頂へ 

    七社神社を越えると飛鳥山公園内、旧渋沢庭園へと続いていきます。すっかり飛鳥山山頂を目指すというよりは、渋沢栄一の足跡をめぐりしているようにも思えてきます。旧渋沢庭園の目の前には、渋沢資料館、そして北区飛鳥山博物館、紙の博物館と続いていきます。

    飛鳥公園の中には、D51を始め、都電6080が展示されています。都電6080は荒川線を走った車両で、飛鳥山公園脇を通っていたそうです。そして、展示されていたD51の引退した場所は、なんと酒田機関区です。

    山形にゆかりのある方はピンときたかもしれません。山形県の海側北部に酒田市があります。JRがまだ国鉄だった時代に、酒田機関区がありました。僕の父は国鉄時代に保線区で働いていました。ふと、父が国鉄に入ったころ、D51の蒸気機関車に乗ったことがあると言っていたことを思い出しました。もしかしたら、父が乗ったかもしれないD51は、隣の酒田機関区にあったこのD51だった可能性もあるのではないかと思いました。まさか、父が乗った(かもしれない)D51に、飛鳥山で出会うとは。父が亡くなって28年、「かもしれない」ではなく、面影に出会ったことにしようと思うのでした。

    筆者の父親ともゆかりの深い、有名な蒸気機関車のD51。

    父ゆかりの機関車との邂逅の後、園内の遊具のあるエリアを抜けると、飛鳥山にまつわる色々な碑がありました。情報量が多すぎて1つ1つ紹介できませんが、もしかしたら今回の一番の目的である城跡に繋がる情報があるかもしれないので1つ1つ確認しながら進んでいきます。

    公園を王子側まで行くと、飛鳥山の山頂がありました。標高25.4mと記されていました。Googleマップによると、この周辺に飛鳥山の城跡があるようでしたが、いくら探しても城跡を記したものを発見することが出来ませんでした。残念ながら、飛鳥山公園の歴史の碑にも、城があったということは記されていませんでした。

    結果、明確な城跡は存在せず、現在の飛鳥山には古墳と山の2つの山頂があることが分かりました。

    飛鳥山の立派な山頂碑。

    今回は、偶然にも渋沢栄一の足取りを追っていたり、思いがけず父の思い出に出会ったりと、盛りだくさんな山行でした。何だか肝心の飛鳥山登頂がついでのようになってしまいましたが、とても良い山です。取ってつけたような感じに受け取られるかもしれませんが、飛鳥山にはぜひまた登りたいと思います。

    次回は北区の堂山横穴墓です。

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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