アマゾンの床下で探し物
自らの不注意で招いてしまったペケペケ号あわや沈没のトラブルが起こったのがとある村。心配した村の人が家に泊めてくれました。洗濯を手伝ってくれたり料理を教えてくれたり、至れり尽くせりで頭が上がりません。ところが、すっかりリラックスモードで甘えてしまった昼下がり、またしても事件が起こりました。
昼寝から目覚めたら、あれれ?机に置いておいたはずの、ワイヤレスイヤホンがどこにも見あたりません。おかしいなあ。お世話になったお家の娘さんがイヤホンに興味を持っていたから、どこかで見つけていたら場所を覚えているかも、と思い尋ねてみるも、知らない様子。
その家は地面から柱で持ち上げられた高床式の造り。床板に隙間が空いているので、なにかの拍子で床下に落ちてしまったのかも。落とした可能性のある場所にビニールひもを垂らして目印をつけ、いざ床下へ行くとゴミでいっぱい。しかも、かなり臭い。
というのも、トイレは床下に落とすスタイルのお家もあるくらいだから、住宅の床下は村で一番汚い場所。子供がふざけてスリッパを落としたりすると、ゲッと嫌な顔をするような場所なのです。
結局、成果がないまま家に戻り、家の人が留守中に大捜索。すると「知らない」と言っていた娘さんのカバンの中からイヤホン出てきました。
「ああ、見つけて拾っておいてくれたんだな」
と思った私。でもこのあと、少しずつほかの持ち物がなくなっていって、私はようやく気が付きました。盗まれているということに。
村で盗まれたもの
村でどこかへいってしまった持ち物の一つが充電に使うポータブル電池。でも、ソーラーパネルは残っているから、これで充電すれば大丈夫。
それからSDカード。これはほとんど中身が空の予備だから、無くても大丈夫。スマホも消えました。型落ちのiPhone 6 でもやっぱり貴重品なんだなと反省。幸い、普段使っているのとは別の予備で持って来ただけのスマホなので、無くても大丈夫。
隠し場所を分散しておいた貴重品類の中で、銀行のカードも1枚紛失しました。ATMやカード決済ができるお店なんてアマゾン川流域にはほとんどないし、通販だって簡単には届かないのに、盗ってどうするんだろう?
これまでも不注意で何度かカードを紛失している私は、またいつものように銀行に電話をしてカードを止めてもらいました。予備のカードだから、今は無くても大丈夫。失ったものを確認して気が付いたことがありました。私は、「いざというときの予備」みたいな荷物が多くて、本当に必要な荷物はほんの少しだけだったんです。
「川には盗賊が現われるから、気を付けろ」とこれまでいろいろな人に言われてきましたが、まさか陸地で被害に遭うとは。盗っ人は、遠くから突然やって来るより近くに潜んでいるものなのかもしれません。盗まれたもので一番困ったのは、現金でした。
金額にすると5,000円程度ですが、ペケペケ号の船外機に必要なガソリンは現金払いのみ。今、ペケペケ号に積んでいるガソリンで、次に現金を引き出せる村まで行かないと、旅が詰む。早く出発して村を出てしまおうとペケペケ号へ戻ると、積みっぱなしにしていたライフジャケットも盗まれていました。隙をみせれば、盗られてあたり前の世界。
これではまるで盗人村…。家の人からは、世話をしたお礼にいくらかお金を置いて行って欲しいと申し出を受けましたが、もう手持ちがありませんでした(汗)。
色々なことがあって思うこと
でも、悪い人ばかりじゃないんです。出発すると聞いて、船外機を運ぶのを手伝ってくれた近所のお兄さんもいました。
私は物を盗まれて文句をいいたい気分だけど、突然、旅人としてやってきた私に優しくしてくれた各地の人たちに、私はこれまでなにか、きちんとお返しをしてきただろうか。
振り返ると、甘えっぱなしで恥ずかしくなるのが正直なところでもあります。
簡単に盗まれてしまうような不用心な管理をしていた私も悪いし、一応旅は続けられる程度の失くしものだから、大丈夫。盗まれたのはショックだけど、美味しいものを食べれば美味しいと感じる程度には、体は元気。だからきっと、私は大丈夫。旅を続けよう。
所持金2,000円。ロレト村でなにが買える?
次にお金を引き出せるペルー、コロンビア、ブラジルの国境が交わる町までは残り200kmほど。
いろいろ持ち物を軽量化してしまった私はジリ貧で、一緒に旅をしてくれているTさんもストイックな節約系の旅人なので、手持ちの残金はなんと約2,000円。残りの旅路を二人で生き抜くために、この所持金を使ってTさんが食料品の買い出しに行ってくれることになりました。
船着き場にあった3階建ての展望台。柱がなんだか見覚えがあるような。あっ、紙巻きたばこにそっくりじゃない?
商店街を歩いたのは昼過ぎ。閉まっているお店が多く、あまり賑わいはありませんでした。
両手いっぱいに買い物袋をぶら下げてペケペケ号に帰ってきたTさん。珍しいお菓子をみつけたというので見てみると、ポン菓子のようなものでした。色は日本のものより派手ですが、味はシンプルに甘いだけ。ほかに買ったものは、クッキーやお菓子など。野菜や果物はゼロですが、腐りにくいのにカロリーも糖分も獲れるし、良いセレクトかも。ありがとう!
ペケペケ号を運転した感想は?
「せっかく自分の舟で川を旅しているんだから、運転も体験しないともったいないよね」と、こまめに運転の交代を申し出てくれるTさん。ペケペケ号の船外機は、リコイル・スターターと呼ばれるヒモを引っ張って始動させますが、舟の上で思い切り引っ張るのにはコツが要ります。
私は足で本体を押さえて、両手でヒモを引っ張りますが、Tさんは片手でヒモを引っ張るスタイルで挑戦。何度かトライして、エンジンスタート!
エンジンをふかして、全身で風を感じながらペケペケ号を走らせてご満悦のTさん。その感想は、「意外と簡単だし、楽しいね」と。
Tさんが運転してくれている間、私はおやつを食べながら景色を楽しむ休憩タイム。沈没の危機や盗難被害を経て、チグハグだった二人旅がようやく軌道に乗ってきました。