国の重要有形民俗文化財に指定!年3回だけ登れる練馬区・江古田の富士山【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.113】
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    2025.01.18

    国の重要有形民俗文化財に指定!年3回だけ登れる練馬区・江古田の富士山【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.113】

    国の重要有形民俗文化財に指定!年3回だけ登れる練馬区・江古田の富士山【プロハイカー斉藤正史のTOKYO山頂ガイド File.113】
    東京23区内、特に山手線の内側はビル街や飲食店街、住宅街ばかり。そう思っている人が多いかもしれません。でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。

    FILE.113は、練馬区の江古田富士です。

    第113座目「江古田富士

    今回の登山口は、小竹向原駅です

    小竹向原駅登山口。

    今回の登山口=最寄り駅は、小竹向原駅。これまでに何度か乗り換えで利用したことはありますが、駅に降りて地上に上がったのは初めてでした。

    小竹向原駅は西武線と東京メトロの2路線が乗り入れをしています。そして、練馬の地名「小竹」と板橋区の地名「向原」を合わせた駅名になっています。駅の東側は板橋区だったりするのです。そんなハブ駅として利用される小竹向原駅ですが、なんと西武鉄道全92駅の中で、池袋駅、高田馬場駅、西武新宿駅に次ぐ第4位の乗降客数を誇る、都心の大きな駅に負けない駅だったりするそうです。

    そんな小竹向原駅の2出入口からスタートです。と、登山口を出るとすぐに住宅街が広がっていました。地図上でも、特に目立つ何かはなさそうです。書くことを見つけるのに困りそうだなと思いつつ、住宅街を進んでいきます。

    すると、マンションの敷地の一角に、何やらお地蔵さまが並んでいます。柵の中に入れそうだったので歩を進めると、2つの供養塔と不動明王、お地蔵さまの組み合わせでした。その昔、小竹地区は農村で、あの練馬大根が作られていたそうです。時代と共に宅地造成され、お地蔵さまや供養塔が移転され、1カ所にまとめられたのかもしれません。時々、都内の道端などで複数のお地蔵さんが並んでいる一角を見かけたりしますが、造成工事などで行き場を失った石碑やお地蔵さまを一か所にまとめて置くことはよくあるそうです。

    住宅街の一角にあった、お地蔵さまと供養碑。

    そこから、坂道を登り、さらに住宅街を進んでいきます。この連載で都内をだいぶ歩いてきましたが、今回初めて子供食堂を見つけました。テレビでよく紹介されていますが、実際に都内を歩いて見るとその数の少なさを実感します。小竹向原の子供食堂は、「小竹さくらんぼひろば」というところが運営しているようです。

    さらに住宅街を進んでいきます。近くで働く人たちが休む公園、区立図書館、小さな神社がなどがあります。通りがかったアパートでは、映画の撮影が行われていました。が、この記事で紹介するほどのものは見当たりません。もう、目的地の江古田富士に期待するしかないかと半ば諦めつつ、そこからさらに大通りではなく住宅街へ進んでいきました。

    そうして歩いていた住宅街の路地に隣り合うようにあったのが、「アカヒ」と「水琴窟(すいきんくつ)」です。まず「?」となりましたが、練馬区立水琴緑地に水琴窟があり、その隣のお宅が金曜の夜だけオープンするバーが「アカヒ」なのです。と書いても「?」となる人が多いと思いますので、以下に説明します(でも、事前に謝りますが、すべてがスッキリ解明するわけではありません)。

    アカヒは本当に普通の民家で、その玄関のすぐ脇に小さな看板がありました。早速Googleに聞いてみたのですが、江古田駅前に同じ名前のバーがあるようで、こちらの民家のアカヒに関する情報は見当たりません。営業しているのでしょうか?もし、知っている方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひご連絡下さい。

    さて、一方その隣の練馬区立水琴緑地にある水琴窟。僕は全く知りませんでした。水琴窟は、日本庭園の装飾の一つだそうです。手水鉢の下方向の地中に作り、空洞の中に水滴を落下させます。その際に発せられる水の音を反響させる仕掛けのようです。試しに水をたらしてチャレンジしてみましたが、近くで工事があり、その雑音に押し消されて残念ながら反響音は聞くことが出来ませんでした。

    水琴窟の案内板。

    練馬区立水琴緑地を越え、江古田斎場を抜けると、浅間通りに出ます。この連載ではおなじみですが、浅間神社=富士塚があるスポット。浅間通りという名の通りから、江古田富士が近いことが察せされました。ということで、まもなく目的地に到着しました。

    今回の目的地のミニチュア富士に到着

    江古田浅間神社

    創立は931年(承平元年)とされています。その昔、小竹町と江古田町が神社の所有をめぐって争いが起きたそうです。すると、夏にもかかわらず雪が降る天変地異が起きました。これに驚いた住民は争いを収め、共有して祀ることにしたそうです。

    江古田浅間神社。

    江古田富士

    江古田の富士塚は、富士講の小竹丸祓講によって1839(天保10)年に築造されたそうです。一説には1804~1818年(文化年間)の築造ともいわれており、高さ約8m、直径約30mと大きな富士塚です。閏東大震災の時に損壊しましたが、その後復旧され、塚全体が富士の熔岩で覆われています。現在は立ち入り禁止になっていて、登山できるのは、1月1日~3日、7月1日の山開き、9月第二土曜・日曜の年6日間だけのようです。また、江古田富士は国の重要有形民俗文化財(昭和54年指定)・練馬区登録重要有形民俗文化財にもなっています。

    入口が閉ざされ、奥の富士塚は見えませんでした。残念。

    山開きの時は登れます——という案内板。

    僕は住宅街を歩くとなると、つい「書くことがない」「特筆すべきことが見つからない」とグチりがちです。でも、歩いているからこそ、道端のお地蔵さまやGoogleで検索してもヒットしないお店などを見つけることもができます。住宅街だからと心を閉ざさず、目的地の山まで急がず、のんびり歩かなければ…とあらためて実感する山行となりました。

    今度は、山開きのタイミングで江古田富士を再訪したいと思います。

    次回は練馬区の中里の富士塚です

     ※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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