サッパリついでに、今回はいつものペケペケ号から気分一新。地元の方に勧められ、激安フェリーにペケペケ号を積んで移動した3泊4日の旅の話です。
治安が悪化するブラジル国境付近では、安全なフェリー旅を選択
ペルーのプカルパという町を出発してから、ペケペケ号でのんびり1か月ほどかけて到着したブラジル国境の町タバチンガ。ここでは釣り舟などが、月ごとにお金を払って舟を預かってもらうイカダ小屋(現地の通称はバルサ)にお世話になりました。
さあペケペケ号を改修するぞ!
イカダ小屋の屋根の下にハンモックを張って迎えた朝、この日は大仕事が待っていました。
アマゾン川の上流地域で、地元の方の勧めで取り付けたペケペケ号の屋根。これは日除けに大活躍。しかし、川を下るにつれて川幅が広がると強まるのが風。余計な風の抵抗を受ける屋根が邪魔になってきました。
「屋根を取り外したいけれど、古い木舟だし、無理やり釘を抜かないほうが良いでしょうか?」
前回(vol.20)の記事で紹介した、現地に暮らす日本人サブローさんにそう相談すると、ノコギリを貸してくれました。
地元の治安情報は現地の人に聞く
アマゾン川を下るにあたり、屋根以外にもうひとつサブローさんからアドバイスをいただきました。それは、アマゾン川がネグロ川と合流するマナウスという町までは、フェリーに乗ってしまうこと。普通、地元の人は、長距離移動は自分の舟ではなくフェリーに乗って移動するのだそう。というのも、タバチンガはペルー、ブラジル、コロンビアの三国の国境が交わるフロンティアと呼ばれる地域で、薬物の密輸船を狙った盗賊が出たり、川の治安があまり良くない地域だから。
「昔は平和で良かったんだ。でも今じゃ町もすっかり大きくなって、悪い人たちが川のどこに潜んでいるかわからない。カヌーに乗って釣りをするのも怖い」と語るサブローさん。平和だった昔というのは、40~50年以上前のこと。アマゾン川の釣りに関するバイブル的な旅行記、開高健の「オーパ!」と重なる年代です。
私のペケペケ号は、もともと現地に馴染む木舟に乗ることで旅の安全性を高めようと選びました。でも、ここではむしろ馴染みすぎて襲われる可能性すらあるそうです。今回は無理にリスクを取らず、フェリーに乗ってみることにしました。
フェリー乗船前には薬物検査がある
これがタバチンガとマナウス間を結ぶフェリー旅でお世話になるバンゼイロ号。運賃は、3泊4日で寝る場所と3食が付いて1万円弱と激安。ペケペケ号を貨物として載せられるか交渉したところ、最初は2万5千円といわれましたが、最終的に半額までの値引きで話がまとまりました。
乗客たちはフェリーに乗る前に荷物を並べて、警察による荷物検査を受けます。これは薬物の密輸を警戒しての措置だそうです。
貨物扱いのペケペケ号も、載せる前に検査が必要ということで、船着き場に係留している警察船に行って検査を受けることに。
威圧感のある警察船は、やましいことなど、なにもなくても近くにいるだけでドキドキ。ほかの船舶の邪魔にならないところにペケペケ号をとめたら、警察に声をかけて待ちます。書類の確認はなし。薄い木の板を渡しただけのペケペケ号の床板を軽く持ち上げて、底に怪しいものを隠していないか、簡単に目視するだけで検査は完了しました。
ペケペケ号をフェリーに運ぶ屈強な男たち
乗船手続きが完了したところで、いよいよペケペケ号の積み込みです。船長さんは「載せられる。問題はない」と自信満々でしたが、クレーンでも使って引き上げるのかな?
木舟の引き揚げはクレーンではなく、まさかの人力でした。黄色い長そでを着ているのが船長さん。自ら体を動かして仕事をする男なのです。
水から引き揚げられたペケペケ号は、そのままフェリーの近くまでズルズル引っ張られていきました。
最後はブラジル男の筋肉で持ちあげて、バンゼイロ号への積み込み完了。一体何を食べたらこんなにパワフルになるんだろう。「ジョアナ、男使い荒いね」と友達に指摘されたのは後日談です。
ペケペケ号はフェリー旅の間、乗組員のベンチとして使われたり、乗組員の物干し台としても活躍。愛しのペケペケ号に、お、男のパンツがいっぱい…(汗)。
寝る場所はハンモック
乗客たちの寝床はハンモック。自分のハンモックを持参して、好きなところに張るだけ。場所は早い者勝ちで、充電できるコンセントの近くが人気です。
暗くなると、緑や青などカラフルな色の照明が灯ります。白いと虫がたくさん寄ってきてしまうから、カラフルな明かりを使っているのかも。
激安旅の食べ放題、食事は大丈夫か?
寝る以外にほとんどやることがない船旅。一番の楽しみは、食事です。なんと食べ放題。これで3泊4日全部込々で1万円弱って、やっぱり激安でしょう!
昼と夜は、お米とスパゲティと豆が出て、メインは必ずお肉。私のお気に入りのサイドメニューは、ポテトサラダ。野菜類が貴重な船旅で、ポテトサラダはうれしい!
付け合わせの煮豆は、ベジタリアン仕様ではなく、お肉が入っていることも。そうなると、メインと合わせてお肉のおかずが2種類ある豪華仕様です。美味い、炭水化物が進む味!
朝食だけはやや軽めですが、コーヒーもミニケーキもお砂糖たっぷりで甘い。食べたら眠くなっちゃうから、ハンモックで二度寝がルーティーンになりました。
乗組員たちのお仕事を見学
ギラギラ眩しい港の灯りが、マナウス到着の合図。3泊4日のフェリー旅は快適すぎて、長すぎるどころか、もっと乗っていたいくらい。聞けば、バンゼイロ号は乗客を降ろしてからマナウスに数日停泊したのちに、タバチンガに引き返すとのこと。積み荷を降ろすためだそう。
到着したのが夜遅くだから、私も翌朝までもう1泊したいなあ。町で買ったお酒を持って行って頼んだら、もう1泊どころか2泊できることになりました。
乗組員の仕事は乗客がいなくなってからが本番で、せっせと積み荷を降ろしていきます。
食事は乗客がいないため、やや品数が減ったけれど、その代わりに毎食の量が増えます。肉体労働者の活力源です。
上水道があまり発達していないアマゾン川流域地域では、ボトルの飲料水が使われます。空のボトルは業者へ返して、また水を入れ直すのです。業者の回収を待つ空のボトルのピラミッドは、乗組員が人力で並べたもの。フェリーの貨物エリアからバケツリレー式に上の階に放り投げて、最後は足で蹴って積み上げ役にパス。さすがサッカー大国、きれいな足さばきでした。
バケツリレーが途絶えたら、天井にぶら下がって懸垂したり、腕立てをする乗組員を発見。重労働なのに、みんな楽しそうに働きます。底なしのスタミナを持つブラジル人乗組員のパワーに触れる、激安フェリーの旅。あなたも、是非。