メルセデスベンツ「Gクラス」EVの価格は?4モーターの走りや内装もチェックした!
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    2024.12.31

    メルセデスベンツ「Gクラス」EVの価格は?4モーターの走りや内装もチェックした!

    メルセデスベンツ「Gクラス」EVの価格は?4モーターの走りや内装もチェックした!
    1979年の登場以来、NATOをはじめ世界各国の軍用車として採用されてきたメルセデス・ベンツの「Gクラス」。「G」はドイツ語でオフロード車を意味する「ゲレンデヴァーゲン」の頭文字です。世界中で人気が高まっていて中古車価格も高騰しているGクラスに、電気自動車(EV)仕様が登場しました。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(BE-PAL選出)の金子浩久が「G 580 with EQ Technology Edition 1」に一日試乗。乗ってみてわかったスゴイところ、気になるところをリポートします。

     

    お値段も超高級な四輪駆動車の最先端「Gクラス」

    メルセデス・ベンツG580

     メルセデス・ベンツの大人気SUV「Gクラス」では初となるEV(電気自動車)、「G580」に乗りました。

     日本導入記念特別仕様車の「G580 with EQ Technology Edition1」です。カーボントリムなど特別な装備が盛り込まれ、車両価格は2635万円。

    メルセデス・ベンツG580

     NATOの軍用車に出自を持つハードでタフなクロスカントリービークルなのですが、今では休日の都心では数えきれないくらいにすれ違う大人気の高級車となっています。その傾向は日本に限ったことではなく、欧米の大都市でも変わりません。

     ただ、欧米では軍用ユースに近い内容を持ったGクラスの「プロフェッショナル」ラインも購入することができるのです。以前に友人がドイツから個人輸入したディーゼル版に乗せてもらったことがあります。

     何が違うのかといえば、快適性や豪華さなどよりも、構造がシンプルで酷使に耐えられることが、すべてに優先されていました。パワートレインも違えば、車内の装備や仕上げも違っていました。

     例えば、各種操作部分は旧式の大きなダイヤル調整タイプでしたし、床は水で洗って流すことができるようになっていました。ボンネットには上に登った場合の滑り止めが貼られ、とても頑丈なルーフラックが組み付けられてありました。“道具感”ではなく、道具そのものです。

     その一方で、乗用タイプのGクラスは長年の間に改良に改良が重ねられ、他のメルセデス・ベンツ各車と同様に洗練とラグジュアリーを極めた高級車になっています。

     そして、ついにEV化されたGクラスがG580というわけです。

    見晴らしがよく、上り坂を音もなく駆け上がっていく

    メルセデス・ベンツG580

     外見は他のGクラスと同じですが、G580ではテールゲイトに背負ったスペアタイアケースの形が違います。それ風ですが、良く見るとタイヤが収まるような丸型ではなく、角が丸められた四角で、開けるとタイヤではなく充電ケーブルや収納用ネットなどが備わっています。

    メルセデス・ベンツG580

    テールゲートのタイヤボックスを開けると…?

    メルセデス・ベンツG580

    普通充電用の充電ケーブルが収納されている。

     G580はモーターを4基搭載し、それぞれが4輪を駆動し制御できることが大きな特徴となっています。いま日本で買える世界のEVの中で、モーターを4基装備しているクルマはこのクルマだけではないでしょうか?

     モーターとエンジンの両方を載せているハイブリッドのスーパーカーなどでも、僕が運転したことのあるものはモーターは3基まででした。

     4月の北京で、BYDの最上級ブランド「仰望」の「U8」という大型SUVに乗ったことがあり、このクルマもモーターを4基搭載していましたが、エンジンと組み合わせたPHEV(プラグインハイブリッド)でした。

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     G580が4基もモーターを搭載している理由として考えられるのは、悪路走破能力のためです。前後1基ずつのモーターで4輪を駆動し制御するよりも、4基のモーターで4輪をそれぞれ個別に駆動し制御したほうが、より緻密かつ直接的に駆動力を路面に伝えながら走ることができるからです。

    メルセデス・ベンツG580

     4基のモーターを合計した最高出力はシステム全体で587馬力、最大トルクは1164Nm。Gクラスの中で最強です。

     専用フレームの中に収められている駆動用バッテリー容量は116.0kWh。走行可能距離は530km。車重は3120kgと超重量級。

    メルセデス・ベンツG580

     高い運転席に座って走り出すと、静かで滑らかに加速していきます。いつも街ですれ違いざまに迫力ある排気音に気圧されているAMG版のGクラスなどとは全く違っています。塊そのものといったゴツくて大きなボディが音もなく走っていくのですから、側から見たらびっくりでしょう。

     周囲のクルマなどよりも少し高い位置に座っているので、その分、視界が広がります。都心のような、つねに混雑しているところでは遠くまで見渡せることに特権的な喜びを見出す人々もいるでしょう。とても良くわかります。現代では、開けた視界は、速さや豪華さなどと同等の価値を持つようになったのです。

     首都高速のランプで強めに右足を踏み込んでみたら、圧倒的な加速に驚かされました。音もなく、そして3トンを超える質量を感じさせることなく、上り坂をワープするように軽々と駆け上がっていきました。

    メルセデス・ベンツG580

    後席を折りたたんで荷室を広く使うことができる。後席の座面を前方に跳ね上げてから、背もたれを前に倒す2段階収納式。

    メルセデス・ベンツG580

    荷室容量は620~1990リットル。

    エアサスペンション搭載で乗り心地も極上

    メルセデス・ベンツG580

     静かで滑らかな加速とあわせてG580の車内を平和なものにしているのは、エアサスペンションによる快適な乗り心地です。速度を問わず、荒れた舗装や段差などからのショックや鋭い突き上げなどをすべて吸収して消失させてしまい、乗員にはほとんど何も伝わってきません。

    メルセデス・ベンツG580

     加減速による姿勢変化の少なさも快適性を増しています。エアサスペンションはEVに限らずメルセデス・ベンツの他モデルやBMW、アウディ、ランドローバーなどの大型SUVで用いられていますが、最近のものはどれも性能が良く、オーソドックスなメカニカルサスペンションからは隔絶した快適性を実現しています。その分のコストは上昇しますが、確実に商品性が向上しますので各社競うようにして装備しています。

    メルセデス・ベンツG580

     一見するとゴツくてマッチョで道具感あふれるこれまでのGクラスの世界観を保ちながら、実は洗練された乗り心地や静かで滑らかな圧倒的な加速などが運転して伝わってくる。見た目の印象とは正反対の感触です。Gクラスのラインナップの中で、G580だけが格別の乗車感覚を発揮しています。

    少々気になった点も

    メルセデス・ベンツG580

     しかし、高い着座位置は良いことばかりではありません。優秀なエアサスペンションを以てしても、高い着座姿勢ゆえの前後左右へのヒョコヒョコとした細かな揺れは完全には防ぎ切れないのです。低中速域ほど目立つこともあったので、気になる人には気になってくるでしょう。

    メルセデス・ベンツG580

     このファーストエディションなどだけなのかもしれませんが、インテリアが装飾過多に見えるのも気になっていました。ボディカラーにコーディネイトしたのであろうブルーのステッチがシートから始まり、あらゆるところに縫い込まれています。カーボンのパネルも目立っていました。本物のカーボンを使っていたとしても多過ぎるし、単なるカーボン柄だったら煩わしい。

    メルセデス・ベンツG580

     レンジローバーのようにミニマルでありながら高級感をあわせ持つことをメルセデス・ベンツ流に施すことは十分に可能だと思うのですが、いかがでしょうか?

    180度回転できる「Gターン」機能の注意点

    メルセデス・ベンツG580

     4基のモーターを個別に制御して、その場で回転できる「Gターン」も試してみました。クルマの出入りが認められている舗装されていない場所で、他のクルマや人間がいないのを確認してから試してみました。

    メルセデス・ベンツG580

     センターディスプレイパネルに表示される指示通りに、ローレンジモードを選択し、左右のパドルシフトレバーのどちらかを引いて回転方向を選びます。準備が整ってアクセルペダルを踏み込むと、左側前後輪が前進方向に回転、右側前後輪が後退方向に回転し、かなりの勢いでその場で回転します。

     あまりの加速具合に驚かされて半周で右足を戻してしまいました。反対側のパドルを引いて同じ操作を繰り返すと、今度は逆方向に回転して戻ります。

     ジンワ~リと回転していくのではなく、半周するのにわずか数秒、音で伝えるなら「ザアーッ!」という感じの一瞬です。

     BYDの仰望U8にも「タンクターン」といって4輪への出力を個別に制御してその場で360度回る機能があるのですが、アスファルト路面でゆっくりと回っていた仰望U8と、今回試乗したG580は、ターンの勢いがまったく違っていました。

     では、この機能をどこでどう使ったら良いのか?

     フィールドや雪原での回転半径ゼロのUターンが可能ですが、平坦で未舗装地でなければなりません。周囲に人やクルマなどがいる場合も、Gターンを行うのははばかられるでしょう。使い途と場所を良く考えなければなりません。今までのクルマには存在していなかった動きと感覚なので、事前にどこかで練習しておく必要もあるでしょう。

     3トン以上の重量と強い駆動力、4輪を個別に制御できることによって、僕らが何度かGターンを行った場所には、深い轍(わだち)を作ってしまっていました。

     轍の土を両手で埋めて元に戻しながら、改めてGターンは特別な機能であることを実感した次第です。

    金子浩久の結論:圧倒的な動力性能や快適性などを備えた「特別な一台」

    メルセデス・ベンツG580

     G580は、Gターンだけでなく、圧倒的な動力性能や快適性などを備えた「特別な一台」です。これまでのGクラスから乗り換えが進むのか、あるいは新旧あわせて新たな需要を掘り起こすことになるのでしょうか?

     

    金子 浩久さん

    自動車ライター

    日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(BE-PAL選出)。1961年東京都生まれ。趣味は、シーカヤックとバックカントリースキー。1台のクルマを長く乗り続けている人を訪ねるインタビュールポ「10年10万kmストーリー」がライフワーク。webと雑誌連載のほか、『レクサスのジレンマ』『ユーラシア横断1万5000キロ』ほか著書多数。構成を担当した涌井清春『クラシックカー屋一代記』(集英社新書)が好評発売中。

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