
16年ぶりに「土星の環が消失」ってどういうこと?
環をもつ土星は惑星の中でも大人気。実は、木星や天王星、海王星にも環はあるのですが、土星の環の美しさは圧倒的です。それに小さな望遠鏡でも、見ることができるのは土星だけです。
その環が2025年3月24日に消えます。
土星は約30年で太陽の周りを一周(公転)しています。その公転軌道に対し、土星の自転軸は約26.7度傾いています。(ちなみに地球は23.4度傾いています)。そのため地球から見ると、土星の環の傾きが年々変化して見えるのです。そしておよそ15年に一度、土星の環が、地球に対して水平になります。前回は2009年でした。

2025年、土星は図の一番上の状態になり環がほとんど見えない。(画像:国立天文台)
土星の環は、内側から外側へいくつもの環が重なっています。環の幅は明るい部分だけでも約7万キロメートルあります。地球が5つも並びます。一方、環の厚みはというと、これがとても薄いのです。なんと数十メートルしかないといわれています。
こんな薄い環を真横から見ても、まず見えません。土星の環の消失とはそういう意味です。
環が消失する3月24日に土星はどこにある?
さて、天文情報で「土星の消失」といわれているのは、3月24日です。この日、地球から見て環が水平になるのです。
ただし、この時期、土星はどこにあるのかというと、太陽の向こう側にいます。つまり地球から見ようと思ったら昼間です。環はおろか、土星ごと見えない位置にあります。
でも、がっかりしないでください。2025年にはまだ環のない土星を見るチャンスが残されています。5月7日と11月25日です。
2009年から約16年間、地球からは土星の環の北側が見えていました。2025年3月24日を境に、今度は環の南側が見えるようになります。しかし、環の反転後もしばらく太陽光は環の北側を照らしています。そのため、環は暗く見えにくい状態が続きます。太陽の光が当たる角度は少しずつ変わり、5月7日には環を真横から照らすようになります。この場合も環の表面には光が当たらないため、環の消失と呼べる状態になります。5月になると土星は明け方の低空に見えているので、その気になれば観察できます。
5月7日以降は、太陽光が環の南側に当たるようになるので、薄いながらも環が見えるようになります。

5月7日、未明の東の空に昇る土星。ほぼ環の消失。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

5月7日未明の東南の空。東京では土星は3時頃に昇ってくる。すぐ後に金星が昇る。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)
その後、環の傾きは一方的に大きくなるわけではなく、土星の周り方と、地球の周り方、双方の動きが複雑にからんで、一時的に傾きが小さくなる時期もあります。
11月25日には環の傾きがほぼ水平に近いところまで戻るため、一般的な望遠鏡で観測する分には「環が消えた」と言っていい状態です。この時期の土星は、秋の夜空にしっかり昇っています。

11月25日の土星。限りなく薄ーい環が見えるかも?(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

11月25日の土星と秋の星座。土星はうお座とみずがめ座の間にある。南に、みなみうお座の1等星フォーマルハウトがあるが、そのほかに明るい星がないので土星はよく目立つはず。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)
このように環が消失するのは、限られた時期のことに過ぎませんが、注目していただきたいのは消失の後です。また、少しずつ環が見えるようになって来ます。小さな望遠鏡でもその微妙な変化はわかると思います。
次に土星の環が消失するのは2038年になります。2025年の土星の環の消失と、その後の細〜い環をお見逃しなく。
構成/佐藤恵菜
