日帰りルートが限られるため登頂する機会を得るのが難しい山ですが、登頂すればこれ以上高い山がないという清々しさを得られるのは最高峰ならではの感覚です。
今回は、蛭ヶ岳登山の魅力をご紹介していきます。
神奈川県最高峰の蛭ヶ岳とは
標高1,673m、丹沢の深部に位置する存在感ある山が、蛭ヶ岳です。
神奈川県の最高峰とされる山で、丹沢の中でも有名な塔ノ岳をはじめ、幾つかの山頂でその堂々たる山容を見ることができます。
関東のハイカーで丹沢を登ったことのある人なら、蛭ヶ岳の名を一度は聞いたことがあるかと思います。
でも登ったことはない、という方が恐らく多い山です
その理由は、全てのルートが経験者向きであることです。
ルートによって異なりますが、所要時間6時間以上、登山口へのアクセスが限られる、丹沢特有の急勾配などの特徴から、初めて目指す場合はしっかりした登山計画が必須です。
このように道程は険しいですが、これ以上高い山が近くにない場所から見る景色は、眼前に見えるものだけでなく、自分がそこに立った充実感も相まって、特別な世界が広がります。
蛭ヶ岳は、名実ともに神奈川のてっぺんに相応しい山なのです。
今回の登山ルート
表丹沢の登山口から目指す健脚ルート
今回は塔ノ岳、鍋割山、三ノ塔の登山口として有名な大倉から蛭ヶ岳を目指すルートをご紹介します。
ルートは序盤の大倉尾根、通称「バカ尾根」と呼ばれる急勾配の道程で塔ノ岳に至り、塔ノ岳〜丹沢山までの中盤・丹沢山〜蛭ヶ岳の終盤といった構成です。
本来は1泊がおすすめですが、登山経験がある健脚者なら日帰りも可能です。
所要時間は往復10時間以上を見積もり、長丁場になるため十分な行動食と水分、悪天候時の対策を備えて臨みましょう。
アクセス
大倉までは小田急線渋沢駅から路線バスでアクセスできますが、日が落ちるまでに下山することを考えるとマイカーやタクシーでのアクセスがおすすめです。
登山口である大倉バス停付近に24時間営業の有料駐車場があるので、そちらに駐車すると良いです。
トイレ
トイレは各山頂とルート上に点在しており、都度利用すれば困ることはありません。トイレットペーパーが切れている場合もあるので、不安な方は用意しておくと良いでしょう。
補給・水場
塔ノ岳をユーシン方面に下ったところに水場があります。水場まで往復20分程度かかるので、余程のことがなければ利用することはないかと思います。
また、尊仏山荘・みやま山荘・蛭ヶ岳山荘で水分等の購入が可能です。
蛭ヶ岳までのルート詳細
【序盤】大倉尾根で塔ノ岳へ
大倉をスタートして塔ノ岳を目指します。
大半が樹林帯の急勾配を通る大倉尾根は、ペースを上げようとすると体力を一気に消耗します。それに伴い発汗してウェアが濡れたりもするので、一定のペースで必要以上に発汗しないで登るのが良いです。
序盤のハイライトはなんといっても塔ノ岳からの眺望。山・海・街の3要素を一度に見られるパノラマは、何度訪れても飽きることがありません。
【中盤】丹沢主脈を通って丹沢山へ
塔ノ岳を過ぎて丹沢山を目指します。
この区間は「主脈」と呼ばれる塔ノ岳・丹沢山・蛭ヶ岳・焼山を結ぶ稜線の一部で、先程の大倉尾根とは一変し、気持ちの良い稜線歩きが楽しめます。
丹沢山まではアップダウンが連続し、大倉尾根で消耗した疲労がジリジリと効いてペースが落ちそうになります。
そんなときは途中には休憩できるところがあるので、適宜休むのが良いです。
休憩地である竜ヶ馬場(りゅうがばんば)にはベンチが設置され、ここで行動食や水分を補給しておきましょう。
竜ヶ馬場を過ぎ、再び主脈を歩き、30分ほどで丹沢山に到着します。
眺望はあまりありませんが広々とした山頂で、丹沢の奥地に迫っていることを実感する静寂がなんとも心地よい空間です。
【終盤】長い道程を経て蛭ヶ岳へ
丹沢山を過ぎ、目的地である蛭ヶ岳へ向かいます。
通る人も少なく、丹沢の山深さを体験できる区間で、ここまでの疲れを忘れるような登山道が続きます。
また歩くほど蛭ヶ岳の山体が迫ってくるので、気持ちが高揚してきます。
とはいえ、急なアップダウンが連続して疲労が増すばかりでなく、蛭ヶ岳は迫っているのになかなか辿り着かないなど、一筋縄ではいかない区間です。
最後のポイントである鬼ヶ岩まで来れば、蛭ヶ岳はもうすぐです。
鬼ヶ岩を下り登り返せば、目的地の蛭ヶ岳に到着です。
蛭ヶ岳からの眺望
蛭ヶ岳からは表丹沢の塔ノ岳、西丹沢の檜洞丸方面をはじめ、丹沢の山々を望むことができます。
下山中の怪我に注意
蛭ヶ岳での時間を満喫したら、大倉まで下山します。
余裕のある行程とは異なり、日が落ちるまでに下山することの焦り、長丁場による疲労で怪我のリスクが高まります。
焦らず予定のペースを把握しながら行動し、トレッキングポールなどで脚の負担を軽減しながら下山しましょう。
神奈川県最高峰に登って忘れられない登山を
いかがでしたか。神奈川県最高峰の道は長く苦労もありますが、その苦労が報われる達成感が味わえます。
今回は日帰りでのご紹介でしたが、体力に不安のある方は各山小屋で1泊すれば、余裕のある行程で蛭ヶ岳を目指せます。
最高峰の景色を、ぜひその目に焼き付けてください。