このところ新しいもの好きのサイクリストの間で話題を集めているものといえばeバイク(eBIKE、e-BIKEとも)。これを簡単に説明するとスポーツサイクルタイプの電動アシスト自転車のこと。すでにヨーロッパではポピュラーな存在となっており、日本でも本格的な展開が始まっている。なかでもマウンテンバイク、すなわちMTBタイプのeバイク(eMTB)は、アウトドア好きにとっても注目せざるを得ない特別な存在だろう。
MTBの走行でもっとも気持ちがいい瞬間といえば、何といっても山の木立のなかを右に左に縫うように下るとき。しかし、当然のことながらその快感を得るためにはその前に坂道を登らなければならない。しかもそこが未舗装路だとしたら……登坂はさらにキツくなる。そのツラさを解決するeバイクは、自転車で山遊びする人間にとっては待望の救世主ともいえる。
取材班はヤマハYPJ-XC、そして未舗装路も走れるツーリングモデルのYPJ-ERをバイクパッキング仕様に仕立てて冒険ライドに出かけてきた。未舗装の山道もなんのその。すべての道が下り坂のように車体が軽く、グイグイ走る。アシスト反応が鋭いのでアップダウンの続く林道でもじつにリズミカルに進む。
ぬかるみも余裕でゴー! 推進力が驚くほど◎
eバイクは負荷のかかるシチュエーションほどアシスト力が強くなる特性があるため、急な登り坂に差しかかると失速するどころか、一瞬グイッと加速するようにすら感じる。また、ぬかるんだ道でも、ペダルさえ漕いでいればタイヤがとられてバランスを崩すこともなく、イージーに走破できてしまうのも目からウロコ。初めのうちは漕ぎ出しの強い推進力に少し戸惑うかもしれないが、それもすぐに慣れる。慣れるほどにアシストを感じ、難所をあえて走りたくなるほど気持ちいい。
近年のeバイクは大容量のバッテリーを搭載しているので、いわゆるママチャリタイプの電動アシスト自転車と比べて走行距離が圧倒的に長い。YPJ-XCならばスタンダードモードでも100㎞以上の距離が走れるというタフさ。こんなeバイクが1台あれば、休日のアウトドアアクティビティーはもちろん、日々の通勤や街乗りにも便利と、場所と用途を問わず活用できる。
電動力でダートもコントロールしやすい
普通の自転車ではバランスを保つのが難しいほどの悪路もアシストのおかげで楽々走破!
未舗装路での安心感はピカイチ!
舗装路と比べて脚力を消耗する砂利道もモーターアシストの力で難なく走れてしまう。遊べるフィールドが一気に広がるのだ。
ガレ場でもなんのその! 悪路での走行が楽しく感じる
一般的な電動アシスト自転車よりはるかに軽量なのでコントロールがしやすく、サスペンションフォークが衝撃を低減してくれる。
ヤマハ/YPJ-XC ¥350,000
小型軽量かつパワフルなeMTB用のドライブユニット「PW-X」をアルミフレームに搭載。しっかり地面をとらえるロックショックス社のサスペンションフォークや油圧式ディスクブレーキも標準装備し、トレイルライドを存分に楽しめる。タイヤはMAXXIS製27.5×2.25サイズ。高いグリップ力は未舗装路でも安心できる。
120㎜のトラベル量をもつフロントサスペンションはダウンヒル走行にも対応できる。
ハイパワーをハイレスポンスで発揮することが可能なeバイク専用のドライブユニット。
ヤマハ/YPJ-ER ¥320,000
近年流行の「グラベルバイク」系スタイルを採用。ロングライドに適したドロップハンドルや安定した制動力を発揮する油圧式ディスクブレーキ、700×35Cサイズの太めのタイヤなどを装備し、舗装路から砂利道まで幅広いシチュエーションをこなす万能バイク。エコモードで152㎞走行できるパワフルバッテリー、全20段変速、油圧式ブレーキと、つくりに隙はない。
太めのタイヤによって日々の通勤からロングツーリング、少々の未舗走路まで幅広く対応。
ハンドルを握ったままアシストの切り替えが可能。バッテリーを電源にするライトも装備。
キャンプ道具が入る! 大容量バッグのススメ
自転車に付ける専用バッグがあれば、積載量が増えキャンプにも行けるので、行動範囲がぐんと広がる。近年は大手メーカーから手に入れやすい価格帯の製品も相次いで登場しており、ぐっと身近な存在になった。
トピーク/バックローダー(10ℓ)¥7,700
バックローダー メーカーサイト TOPEAK
キャリアを用いずシートポストに直接装着できるバッグ。雨や泥などから荷物を保護する防水構造となっている。6ℓ・10ℓ・15ℓの3サイズ展開。
トピーク/フロントローダー(8ℓ)¥7,700
フロントローダー メーカーサイト TOPEAK
着脱が簡単なベルト固定式の防水ハンドルバーバッグ。付属のストラップを使えば外側にタープやレインスーツなどの荷物を追加で固定できる。
自転車ライター 佐藤旅宇
タイヤ付きの乗り物なら何でも守備範囲の雑食ライター。
スポーツサイクルとの付き合いは15年近くになるが、いまだ坂道嫌いを克服できず……。
男児2人の育児に忙しい39歳。
◎構成/佐藤旅宇 撮影/三浦孝明