カナダからアラスカにかけて流れる全長3200kmの大河ユーコン川。そこに広がる圧倒的な大自然には、クマをはじめとする野生動物が生息し、グレイリングやパイクなどの魚たちがルアーを追います。そんな荒野は多くの人の心を引きつけ、毎年夏には世界各国からパドラーが訪れます。
ユーコン川のカヌー旅の拠点となるのが、カナダ・ユーコン準州の州都であるホワイトホース。
僕はこの夏までに3回、このホワイトホースに滞在し、カヌーツーリングの準備や下調べを行いました。この街のオススメのお店や、ツーリングをより楽しくするギアを紹介します。
Yukon Brewing
住所:102 Copper Road Whitehorse
開店時間: 月~土 10am ‒ 8pm
日 11am ‒ 6pm
一日の長いカヌーツーリングの終わりには、美味しいビールで体を癒したいもの。
ホワイトホースには、地元で愛されるビール会社「ユーコン・ブリューイング」があります。
本社併設のブリュワリーには、常に20種ほどのビールがあり、そのうち半分は季節ものです。この夏は、地元に自生するファイヤーウィード(ヤナギラン)のシロップを使ったものや、ハスカップ風味がユニークでした。
缶入りのビールもたくさんありますが、ビールの保存容器グローワー(Growler)を購入すれば、タップにしか入っていない限定のビールを持ち帰ることができます。
アメリカ・ポートランドでもそうでしたが、クラフトビールが盛んな地域では、お客さんが自分のグローワーでお気に入りのビールを持ち帰り、家やキャンプで楽しむスタイルが定着しています。
筆者も金属製のグロワーを購入。24時間は冷たく、また翌日もビールは温まっていない程度の温度をキープしていました。
限定のビールをツーリングに持っていけば、特別な経験ができますよ。
Hougen’s Sportslodge
住所:208 Main St, Whitehorse
開店時間:月~土 9:30am – 6:00pm
日曜定休
Hougen’s Sportslodgeはハンティングショップ。普通のアウトドアショップとはラインナップが少し違うので面白いです。
ナイフの品揃えは随一。コールドスチールやモーラなどのメジャーなブランドから、カナダ製のナイフまで色々あります。
しっかりしたナイフは、ユーコン川の荒野では欠かせない道具です。魚を捌いたり、野菜を切ったり、時には焚き火用に薪を割ったりもできる汎用性が高いものをおすすめします。
斧も便利です。しかし、ツーリング中は病院からも遠く離れていますので、使用はリスク管理の観点から議論が分かれるところです。
店頭にあった商品で特にお勧めするのが、ユーコンの地元パドラーに愛されるエクストラタフ(Xtratuf)の長靴。とりわけアラスカの人たちは、好んでエクストラタフを着用しています。日本ではほとんど流通していません。
靴底は頑丈ですが、側面がとてもしなやかなゴムでできていて、暑い時には折り返して短くすることが可能。そんな履き方を想定して、サケやタコなど、内側のプリントが可愛いものもあります。
店頭にあったモデルはいずれも155カナダドル(約13000円)でした。
銃や迷彩柄がずらりと並ぶ店内は、少し緊張するかもしれませんが、スタッフはみんな気さくで親切です。僕が来店した日には、初めてのライフルを買いに来た少女と父親の姿があって、文化の違いだなあと感じました。
Changing gear
住所:91810 Alaska Hwy, Whitehorse
開店時間:月~金 10:00 am – 5:30pm
土 9:00am – 5:00pm
日、祝 定休
こちらはアウトドア用品に特化したセカンドハンドショップ。
郊外にあるのでアクセスはよくありませんが、目利きなら思わぬ掘り出し物も見つかるかもしれません。
例えば僕が見つけたのは、クリッパーの折りたたみタンデムカヤック。ラダーが欠陥しているとのことですが、驚きの425カナダドル(約36000円)。ウェブサイトで新品の値段を見ると、目玉が飛び出ますよ!
パックボートの17フィートカヌーは2395カナダドル(約20万2000円)でした。パックボートは米ニューハンプシャーの折りたたみカヌーメーカーですが、収納時のコンパクトさは世界最小クラスです。
このほか、テント、バックパック、防水バッグ、自転車などアウトドア関連のものなら何でも並んでいます。ちなみに、販売する際には、店がギアを買ってくれるのではなく、店に置かせてもらう形になります。
ユーコンには、50年以上前の折りたたみカヌーを愛用する老人など、古い道具をカッコよく使いこなす人たちがたくさんいます。中古の道具からは使っていた人の歴史も感じることができるので、見て想像するだけでも面白いですよ。
Klondike Rib and Salmon
住所:2116 2nd Avenue Whitehorse
日~金 ランチ 11am- 3:30pm
ディナー 4:00pm-21pm
土 ディナー 4:00pm-21pm
ツーリング前のしばしのお肉とのお別れ、ツーリング後のタンパク質の不足状態には、このお店でフルラック(大きな塊)のリブを食べることをお勧めします。
日本でリブというと大抵、あばら肉のローストが小さく切られて出てきます。ですが、北米では違います!
あばら骨と肉の塊が切り分けられずにどーんとビッグサイズです!写真の量で32カナダドル(約2700円)。
僕は大きなお肉の塊を征服していく感覚が大好きなので、海外では必ずリブを食べるのですが、特にこのお店は、うまい、でかい、リーズナブルと3拍子揃っているのでとてもお勧めです。
ツーリングを終えた後、まだ体が疲れている状態で食べると、タンパク質が体に吸収されて行くのを感じます。その快感を感じたいから、また長いツーリングに行きたくなるのかもしれません。
多くの人にユーコン川のカヌーツーリングを!
ホワイトホースはこぢんまりとした街ですが、アウトドア文化に根付いた品添えのよいお店が揃っています。有効に活用すれば、ツーリングがより効率的で、思い出深いものになるはずです。
ユーコン川のツーリングは難しそうに感じるかもしれませんが、きちんとした準備をすれば、アウトドアのエキスパートでなくとも挑戦できます。最も短いコースなら8日間。移動を入れて2週間弱の休みを確保できれば可能です。ここが一番難しいかもしれませんが。
ユーコン川のツーリングにはその美しい自然だけでなく、困難を自分で乗り越えていく感覚など、そこでしか味わえない感動が必ずあります。より多くの日本人がこの川を訪れてほしいと期待しています。
【プロフィール】
新居拓也(にい・たくや)
カヌーイスト・野田知佑さんが校長の「川の学校 吉野川川ガキ養成講座」の1期生。18歳からス
タッフとなり計8年間、ディレクターなどを務める。
地方紙の記者を経て、現在は曽祖父が開業した徳島の山小屋「剣山頂上ヒュッテ」で働く。環境
教育事業の講師やキャンプイベントの企画も行なっている。
ブログ:http://korutak.com