ワシントンDCが起点のアメリカ連邦政府認定トレイルとは?【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.2】
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    2025.02.15

    ワシントンDCが起点のアメリカ連邦政府認定トレイルとは?【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.2】

    ワシントンDCが起点のアメリカ連邦政府認定トレイルとは?【プロハイカー斉藤のナショナルシーニックトレイル踏破レポ vol.2】
    トレイルの本場であるアメリカには、連邦政府によって認定されたトレイル(ルート)がいくつかあります。そのうち「シーニックトレイル」と呼ばれるものが全11ルートあり、総距離は約17,800マイル(約28,646km)におよびます。

    日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんは、そんなシーニックトレイル全11ルートの踏破に挑戦中です。2024年9月から10月にかけては、アメリカ東部の「ポトマックヘリテージトレイル」と「ニューイングランドトレイル」に挑みました。斉藤さんによるアメリカのトレイルの最新レポート第2回をお届けします。

    ポトマックヘリテージトレイル編 その2]

    で、ポトマックヘリテージ・トレイルって?

    今回歩くポトマックヘリテージトレイルは、ワシントンDC、メリーランド州、ペンシルバニア州という3つの州(エリア)を通るトレイル。3つのトレイルがミックスされてつくられている道のりです。

    そして、南の起点となっているのがワシントンDC。アメリカの首都として、あまりにも有名なところです。ただ、今回訪れるまで、どんなエリアなのかよく分かっていませんでした。正確には、「District of Columbia」(コロンビア特別区) の頭文字を略してDCと呼んでいるそうです。ワシントンDCは、アメリカ合衆国の首都で連邦直轄地です。どの州にも属していません。はい、勉強になりました。

    海軍初の提督デイビッド・G・ファラガットの像がある、ワシントンDCのファラガット広場。

    やや複雑なポトマックヘリテージトレイル

    実際に歩く前に、ポトマックヘリテージトレイルについて調べてみました。すると、他のトレイルと違って何やらよく分かりません。トレイルが細切れになっていたり、建設中と表示があったり、自転車用の表示があったりしたのです。

    Googleで検索してみると、ナショナルパークサービスのページの中に「POTOMAC HERITAG」というパンフレットのPDFファイルがアップされているのを発見しました。そのPDFファイルを開くと、中面に「POTOMAC HERITAGE NETWORK」と記されています。

    その地図には複数のルートが掲載されています。地図を見ていて、「exising haritage trai」(既存のヘリテージトレイル)という線があることに気づきました。その線をたどると、自転車ルートとポトマック川沿いに1本つながった道がありました。

    この道は、ポトマック川河口からペンシルバニア州ジョンズタウンまで5つのルートとつながっていました。このうち、河口からワシントンDCまで伸びる2のルートには自転車ルートと記されています。

    つまり、ポトマックヘリテージトレイルとして歩くルートは、ワシントンDCを南の起点としてペンシルバニア州ジョンズタウンまでの道なのでした。

    こうして自分で説明していても混乱します。なぜ、こんなに複雑なのだろうと調べてみると、わざわざ「ポトマックヘリテージ」「ポトマックヘリテージネットワーク」と書かれていることに理由があるようです。

    2015年に発行されたポトマックヘリテージのパンフレット。

    ポトマックヘリテージ「ネットワーク」とは?

    ポトマックヘリテージトレイルを分かりづらくしている理由は、ポトマックヘリテージネットワークの「ネットワーク」にあります。

    そもそもポトマックヘリテージトレイルは、ポトマック川周辺、ペンシルベニア州とメリーランド州西部のオハイオ川上流域、バージニア州のラッパハノック川流域の一部の自然や歴史、そして文化文化を巡ることを目的につくられたトレイルです。トレイルは国立公園局によって管理されています。

    ややこしいことに、ポトマックヘリテージトレイルには、川の両側に並行する多数のサイドトレイルや代替ルートがあります。そして、これらのルートはそれぞれ独立しています。つまり、「ポトマックヘリテージネットワーク」として、トレイルの多様性を表現しているのです。

    ポトマックヘリテージトレイルが、アメリカ連邦政府にシーニックトレイルとして認定されたのは1983年。シーニックトレイルの初期である1960年代に指定されたアパラチアントレイルなどと比べ、わりと新しいトレイルです。そんなこともあり、ポトマックヘリテージトレイルのルートは、多くの人々が利用できるようにと世の中の状況などに合わせて柔軟なルート構成なっているのかもしれません。さすが、トレイルの本場アメリカ、といったところでしょうか。

    GAPルート沿線にある自転車のモニュメント。

    じゃあ、どこをどう歩く?

    当初は、パンフレットに記されているように、ワシントンDCからペンシルバニア州ジョンズまで歩くのが一般的かなと思っていました。が、念のため、歩いたハイカーの情報を探すことにしました。ルートをつなげて歩いた記録を探したのですが、見つけられたのはわずかに1人のハイカーのブログだけ。ただ、そのハイカーは自転車専用ルートも歩いたようでした。あまり参考にならないというか、よく分からん!

    GAPルート沿線にある自転車のモニュメント。

    その後、ポトマックヘリテージトレイルの管理団体にメールをしたのですが、ハイカーがスルーハイクで歩いた情報がほとんどない様子でした。
    ※スルーハイク=トレイルのルートを通しで歩くこと。

    僕がメールした質問内容は、シーニックトレイルとしてどこから始めたらいいか、どこが自転車ルートと徒歩ルートのスタートか…といったハイカーとして初歩的なもの。それに対し、管理団体から「トレイルをどう歩くかという情報などは分からない」と返答がありました。それどころか、「歩き終えたら、どう歩いたか教えてほしい」とまでメールに記されていました。

    ポトマックヘリテージトレイルの管理団体からの最終的な回答としては、トレイルのルートはバラバラに点在していて、今歩けるルートをいくつか紹介をしていただいた感じでした。何だか頼りない返答。ひょっとして、英語が得意ではない僕の翻訳能力に問題があるのかもしれませんが…。

    LHHTルートの朝焼け。

    結局どう歩けばいいのか?!

    とりあえず、ポトマック川の両岸に点在する短い細切れのトレイルを移動しながら歩くのは現実的ではありません。僕がこだわるスルーハイクという視点からもちょっと違うと感じました。

    さらに、ネットで情報を集めたのですが、結局、先に紹介した国立公園局発行のポトマックヘリテージと記された2015年のパンフレットが最新版のようです。まずは、ここの地図面で記されたルートであればつながって歩けると考えました。海辺から伸びる2つのルートは自転車専用ルートと書かれていますが、スルーハイクするならこのルートしかないという結論に至りました。

    整理すると、ワシントンDCを起点に、①C&OCANAL TOWPATH(C&O運河トレイル)②GREAT ALLGHENY PASSAGE(GAPルート)③LAUREL HIGHLAND HIKING TRAIL(LHHTトレイル)の3つをつないだ合計約500kmの道のりを歩くのが、今回のトレイルです。

    スタートは、日本からもアクセスしやすいC&O運河トレイルのスタート地点。つまり、ワシントンDCのロック川とポトマック川の合流地点にある自転車ルートのスタート地点、マイル0ポストに決めました。今回はこのスタート地点を探るだけでずいぶん時間が掛ってしまいました。何やら、かなりややこしい道のりになりそうです。

    チェサピーク アンド オハイオ運河国立歴史公園。

    最大の敵は…円安

    スタート地点が決まり、ようやくざっくりと滞在日数も計算できます。1日に25km歩いたとして約20日。1週間に1度休むとしてプラス4日。今回は懐かしいアパラチアントレイルのハーフポイント、ハーパーズフェリーを通るので2~3日は休んで歩きたいと考えると、ポトマックヘリテージ・トレイルは、27日ほど。

    さらに、そこから移動して2023年の歩き残しであるニューイングランドトレイルの残り半分を歩くのに7日。おおよそ44日ですが、移動日や買い出しの日など含めると約50日の滞在になりそうです。

    さて、困ったことに今年も昨年と同様に円安が進んでいました。2023年は1ドル143円でしたが、2024年4月の段階で1ドル150円を超えていました。2023年は食費も大変でしたが、一番苦労したのは宿代。昨年は3週間ほどの滞在でしたが、驚くほどの金額になりました。今回は、その倍以上の日数の滞在になります。さて、どう節約して歩こうか…。

    こうして、僕の2024年のアメリカへのトレイル旅が始まったのです。

    ポトマックヘリテージトレイル公式サイト

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載中。

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