さて、今回の前田家は約9か月滞在し、この連載でも長々とお付き合いいただいたメキシコからついに出国。次なる目的地のエルサルバドルへ向かいました。
メキシコからエルサルバドルへ
チアパスは先住民族やアフリカ系メキシコ人の割合が多く、独自のカルチャーが発展した面白い街でした。人気の観光地以外にも足を伸ばしたい方や、メキシコの様々な側面を肌で感じてみたい方には是非おすすめですよ。
麻薬が国内の重大な問題になっているメキシコでは出国手続きが特に厳しく、私たちの船にも麻薬捜査犬がやってきたりと物々しい雰囲気ではありましたが、無事手続きが終われば、強面オフィサーも陽気なメキシコ人の顔に変わり、笑顔で出国となりました。
緊張の出国手続きを経てスムーズに入国
さて、今回の旅の舞台となるエルサルバドルは、中央アメリカで唯一カリブ海サイドに海を持たない国で、面積は九州の約半分ほどの小さな国です。
「Land of Volcano」と呼ばれるほどの火山国のため、たびたび地震被害に見舞われていますが、一方では火山活動に由来する肥沃な土壌によって、古くから農業が発展してきました。
その中でもスペインの植民地時代に築かれた産業のひとつであるコーヒー豆の生産は、今でも主要な輸出品となっており、近年その品質からも人気が高まっています。
その他、世界で初めてビットコインを法定通貨のひとつとして定めた国としてご存じの方も多いかもしれません。
2023年にはこちらも世界で唯一、ビットコイン投資で市民権獲得につながる長期滞在VISAを発行した、とんでもなく革新的な国でもあります。
また、エルサルバドルは数々のサーフスポットを有し、「サーフィン天国」として国をあげて取り組んでいるほど良質な波で知られています。しかし、波が高いというのはヨットにとっては危険なサイン。その上、寄港できる港も限られるため、エルサルバドルを訪れるヨットはかなり少数派のようです。
そんな中、今回私たちは、首都サンサルバドルからクルマで1時間ほどの距離にあるホテル兼マリーナ『Bahia del sol』から入国しました。こちらにはヨットでやって来て、この地が気に入って住み着いてしまったというアメリカ人のご夫婦が住んでいて、世界各国からエルサルバドルを訪れるセーラーを長年にわたってサポートしてくれています。
おかげで前田家にとってまったくの未知の国にも、安心して入国することができたのでした。世界各地に広がるセーラー同士の輪には、いつも助けられています。
この場所は河口付近に位置し、入り口が非常に狭くなっているため潮のタイミングを見計らって入港する必要があります。この日は幸いにも比較的穏やかな天候で波はそれほど高くなかったのですが、ヨットの沈没事故も起こっている危険な場所のため道先案内ボートをお願いして、波の立たない場所を選んで慎重に進みました。
マリーナではウェルカムドリンクが用意されており、リラックスした雰囲気の中、あっという間に入国手続きが完了してしまいました。厳しかったメキシコとは一転、国によってかなり違いがありますね。
今回はマリーナまでの入り口が一番緊張しましたが、晴れてこの旅の第三か国目に入国することができました。
エルサルバドル版おやき!? 国民食「ププサ」とは
さて、旅の楽しみのひとつと言えば、ローカルフードとの出会いですよね。エルサルバドルではどんな出会いがあるのかワクワクしていましたが、さっそくハマってしまったのが、エルサルバドルの国民食「ププサ」でした。
ププサとは、米粉やとうもろこし粉でできた皮で肉、豆のペースト、チーズを包んで鉄板で薄く焼いた、おやきのような料理。現地では主に朝食か夕食として食べられるそうです。
なかなかヘビーな組み合わせなのですが、付け合わせに出てくるクルティードと呼ばれるキャベツの酢漬けと共にいただくと、相性抜群で飽きない美味しさに大変身!
おにぎりと漬物の関係性に似ていますが、カロリーは比べ物になりませんので要注意(笑)。
具材はシーフードであったり、ベジタリアン仕様だったりと、お店によっていろいろでした。
街中で朝・夕に出現する屋台でププサを頬張れば、たちまち気分だけはエルサルバドリアンの仲間入りです。私たちも滞在先の近くにお気に入りのププセリア(屋台)を見つけ、連日のように通っていました。
こちらの屋台は夜のみの営業だったため、毎日夜になるのが待ち遠しかった、というくらいププサに恋していました。
お近くのメキシコ料理と比べると一見地味なエルサルバドル料理ですが、全体的に優しくシンプルな味付けが多く、日本人好みだと感じました。中でもププサはホットプレートやフライパンでも簡単に作れるので、ご自宅はもちろんキャンプ飯にも一押しです。
さて、いきなりグルメレポートからのスタートとなりましたが、日本ではまだあまり知られていないエルサルバドルの魅力について数回に渡ってご紹介していきたいと思います。
次回は、エルサルバドルの古都スチトトと日本の意外な関係について。どうぞお楽しみに!
(追記)
ププサについては下の英語サイトで手順をわかりやすく解説しています。具材のアレンジなども紹介しているので、ご興味のある方はぜひ!