『僕には鳥の言葉がわかる』を発刊したばかりの動物言語学者・鈴木俊貴さんのアドバイスで、まずは都内の公園で、声の主をどんどん探してみた!
鳥の声が聞こえたら、声を辿って双眼鏡で探してみよう
教えてくれた人
動物言語学者・鈴木俊貴さん
1983年東京都練馬区生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授。シジュウカラの言語を解明した研究者として、目下、世界が注目する気鋭の動物言語学者。
BE-PAL.NET編集・町田
“ヂヂヂヂヂ”
「ほらほら、いま聞こえたでしょ。シジュウカラが集まれっていってる」
「え!? 鳥のいってること、わかるんですか?」
「カラスいたでしょ。ヤブに入れって仲間に教えてるんですよ」
会って早々、奇妙奇天烈なことを言い出したのは、動物言語学者の鈴木俊貴さん。
「もちろん、わかりますよ。僕のように種の違う鳥同士も言葉を理解しあってる。“ヒーヒーヒー”って鳴いたのはエナガ、チャッチャッチャってウグイスも鳴いてるな。ホーホケキョって鳴くのは春夏だけですから」
ここは都心のど真ん中にある公園。市街地とは思えないほど、さまざまな鳥のさえずりが聞こえてくる。とはいえ、これを聴き分けるのは、容易なことではないのでは……。
「子供のころから生き物が好きで、この公園にもしょっちゅうきていたんです。なかでもシジュウカラの鳴き声はバリエーションがあって面白くて。だって厳しい自然界にいて無駄に鳴く必要ないでしょ?そう思ったら何でだろうって気になりだして。あ、あっちにも何かいる」
スタコラサッサと移動していく鈴木少年!?
「鳥の声を聴き分けるコツってありますかー?」
編集・町田が、置いていかれまいと追いすがる。
「鳥の声が聞こえたらとにかく双眼鏡で探してみる。それを繰り返せば、いつの間にか聴き分けられるようになりますよ。あ、あそこにいるのがオオバン」
今度は水辺へ進み出す。
「首振ってるでしょ。何でだろう?って疑問に思うのが面白い。図鑑や本を調べる前に、自分の目で見て考えてみる。身近な自然でもじっくり観察してみると学者もまだ気づいていないような発見だってあるんです」
何度も通った公園のなかを、まるではじめて来たかのように、楽しそうに行ったり来たりする鈴木少年。好奇心に勝るものなしとは、まさにこのこと。
「あ、今鳴いたのもシジュウカラですよね?」
「………。良かった、声が聞こえるようになってる!」
「!! ホントですね。なんか今日一日で人生が豊かになったような気がする」
「でしょ、でしょ、でしょ!」
目を輝かす鈴木少年。
「あ、ヨシガモ! 可愛くないですか? 僕好きなんです。最後に会えて良かった♪」
鳥の声を聴いたら、まず位置を視認し、そのまま頭を動かさず双眼鏡を顔に持ってきて見る。鳴き声と姿を結びつけることが大切。
まずは、冬の楽しみ"混群"探し
混群とは
複数種からなる群れのことで、秋から冬にかけて見られます。群れる理由はおもに身を守るため。数種のメンバーがいることで捕食者を警戒でき、警戒声でみんなに知らせます。
シジュウカラ
ほぼ全国に生息。白いほっぺたに黒いネクタイのような模様が特徴。木の穴や人工的な狭い穴に巣を作る。
メジロ
名前どおり目の周りが白い。黄緑色の鮮やかな体もよく目立つ。花の蜜が好きなので、椿を観察してみるのも手。
コゲラ
日本最小のキツツキ。握力のある足と尾を使い、木の幹を上り下りできるツリークライマー。斑点模様が特徴。
エナガ
混群の先頭でやってくることが多い。人気のシマエナガは親戚。顔に黒っぽい眉がある。体重8gほど。
いろんな声を聴き分けよう
鳥は木の上だけにいるとは限らない。水辺のヨシやオギに止まり越冬昆虫を探していることも。
同じ公園でも、雑木林や水辺など、フィールドに変化があるほど、いろんな鳥に出会える。
キセキレイ
胸からお腹まで黄色く、尾羽をフリフリ歩く姿が可愛い。水辺を好み、渓流や水田のあたりに多く、小さな流れにも来る。
ヒヨドリ
全体が灰色に見える地味な鳥。全長は27㎝前後で見つけやすい。"ヒーヨヒーヨ"と名乗るともいわれる!?
シジュウカラのバリエーション
鈴木さん
同じ鳥でも鳴き方にバリエーションがあります。シジュウカラは"ヂヂヂヂ"が集まれ、"ピーツピ"が警戒。ヘビがいると"ジャージャー"タカなら"ヒーヒーヒー"と鳴いて知らせます。
公園ならでは!間近に見られる水鳥
アオサギ
全長93㎝と日本で繁殖する最大のサギ。背が高く脚も長い。樹上に巣を作る。青みがかった灰色の羽毛からきた名前。
カワウ
全身ほぼ黒色で、水に濡れた翼を大きく広げて乾かす姿は、迫力満点。魚を水中で捕らえ、水面まで運んで飲む。
オオバン
黒いカラダに白いオデコとモダンな配色。頭をフリフリ泳ぐ姿が面白い。水上生活が多いが陸を歩くことも。
ヨシガモ
オスは四角く角張った光沢のある緑の頭部が特徴。灰色の鱗模様のカラダも識別が容易。メスは黒褐色。
東京・練馬区にある約22.6haほどの公園。2つの池があり、起伏もあるので、都会の公園とは思えない。
生物の相互理解を深める動物言語学
鈴木さんはシジュウカラが20以上の単語を組み合わせて文を作っていることを、世界ではじめて解明した研究者。最近は、人間や類人猿において発達したコミュニケーション手段だと考えられていたジェスチャーを、シジュウカラが翼の動きを使って行なっていることを発見。
写真は巣箱の前で行なっていた、"お先にどうぞ"のジェスチャー。今後、ジェスチャーの進化を紐解くカギに! 自身で文章・イラストも手がけた鳥愛あふれる初の科学エッセイが発売。
『僕には鳥の言葉がわかる』
¥1,870
小学館刊
1月23日発売
※構成/大石裕美 撮影/高橋郁子
(BE-PAL 2025年2月号より)